そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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簡単にできるなら苦労しないよ!

 オッス!ボクハル!

 

 前回、僕の“個性”が“圧縮”だと知らされたんだ。

 今は、“個性”伸ばしと併用して“圧縮”を使いこなす訓練をしているんだけど……

 

 

 

 

 

「ひぃろぉがぁれぇ……!!」

 

「ふざけてるのか?」

 

「大真面目です!」

 

 今、オーラをより遠くへ広げる訓練をしている。

 圧縮より先に、効果範囲を広げることにしたのだ。

 

 僕の“個性”で生成されるオーラは、僕を中心とした半径2.5mまでしか放出できない……というより、それ以上の距離まで放出すると、霧散してしまう。

 

「……なかなか上手くいかないんですよね」

 

 バリアのオンオフは、しっかり意識してできるようになったけど、オーラの放出は今まで感覚で行ってたから、いざ意識して出そうとしても上手くいかない。

 

 あれから数時間、ひたすら体力を消費して2.5mの壁を越えられないか試しているけど、何の成果も得られなかった。

 


 

 今日の訓練は、特に何もなく終わった。

 

 少し休憩を挟んだ後、またオーラを広げてみたけど、ダメだった。

 

「さァ昨日言ったよね、“世話を焼くのは今日だけ”って!!」

 

「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」

 

 夕食の時間になるけど、料理はない。

 代わりに、たくさんの野菜や肉や米と調理器具が用意されていた。

 

 なるほどね……今日からは自分たちで作らないといけないんだ……皆は大丈夫かな?

 

 今日の訓練では、皆と比べてそこまで疲弊してないから、キビキビ動けるけど……

 

「「「「「イエッサ……」」」」」

 

「アハハハハ!全員全身ブチブチ!!だからって雑なネコマンマ作っちゃダメね!」

 

 ……ちょっとダメそうだ。

 

「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……」

 

「さすが雄英、無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう皆!!」

 

 ……あ、なんか大丈夫そうだ。

 

 こうして飯田くん主導のもと、夕食のカレー作りが始まった。

 

「……なぁハル、お前手際良すぎねぇか?」

 

「……そんなことないよ」

 

「ハルはお姉さんたちに、色々こき使われてたもんね」

 

「……切奈、トラウマを抉らないでよ」

 

 どうも、料理出来る系男子のハルくんです。

 いやぁ……まぁ……うん……できるよ料理、あんまり思い出したくない記憶もあるけど……。

 

 まぁいいや、今は皆のためにカレー作りに専念しよう!

 

「……なんか悩んでる?」

 

「分かっちゃう?」

 

「わかるよ……」

 

「“個性”訓練でちょっと悩んでてさ」

 

 カレーを作りながら、切奈に相談する。

 

「じゃあさ、イメージしてみたら」

 

「イメージ?」

 

「そう、エネルギー遠くに放出したいんでしょ?なら、シンクに水が広がるとか、自分の中でわかりやすいイメージを作ってみたら、上手くいくかもよ」

 

「なるほど……ありがとう切奈、明日試してみるよ」

 

「どーいたしまして」

 

 切奈は本当に賢いよね!

 僕じゃ思いつかないような案を、すぐに出してくれる。

 

 ……今、僕のことバカって言ったか?*1

 


 

「……イメージかぁ……」

 

 合宿3日目、今日も昨日と同じでオーラを遠くへ放出できるよう訓練する。

 

「イメージ……イメージ……」

 

 イメージしろと言われても……なんかピンとくるイメージが湧かない。

 

 ……そういやこの前、峰田くんがなんか言ってたな。

 ミッドナイト先生とMt.レディが、テレビでキャットファイトしたとか何とか……。

 

 ダメだ余計なこと思い出して集中できない。

 

「ん?……ミッドナイト先生……」

 

 あ、ちょっと待って……なんかいける気がする!

 ……下ネタじゃないからね。

 

「すぅー……ふぅ……」

 

 深呼吸して、オーラを広げていく。

 期末試験で猛威を振るったミッドナイト先生の“眠り香”、直近で見た自分を中心として広がる“個性”……いける!

 

「いっけぇ!!」

 

 卵からヒナが孵るように、僕の“個性”も壁をぶち破り大きく成長する。

 

 2.5……2.6……2.7…………3m突破!

 

「まだ……まだだ!」

 

 体力がガンガン削れていくけど、放出し続ける。

 

「プルス・ウルトラァ!!」

 

 ……5m突破!!あ、もう無理だ。

 

「……ぜぇ……はぁ……はぁ……」

 

 糸が切れたように、その場に倒れる。

 乱れた呼吸を整えながら、今の感覚を忘れないようにする。

 

「……とりあえず、第一関門は突破したってことでいいかな?」

 

 少し休憩をして、また同じように放出してみる。

 やっぱり距離が伸びている。

 

「よっしゃ!」

 

 ごめんね!やっぱり僕、才能マンなんだよね!!*2

 まぁ当然っていうか?必然っていうか?できちゃうんだよね!!*3

 

「……元気そうだな」

 

「あ!相澤先生!聞いてくださいよ!放出できる距離伸びましたよ!」

 

「そうか……なら次だ」

 

「褒めてください!」

 

「次だ」

 

「……はい」

 

 相澤先生に冷水ぶっかけられて、テンションも元に戻り訓練にもどる。

 

 ……ん?

 

「先生……ポケットになんか入れてますか?」

 

「……サルミアッキが入っているが……なんでわかった?」

 

「いや、今まで感覚で使ってたんですけど……オーラを伸ばすために意識してたら……なんかこう3Dデータみたいな感じで、オーラ内にあるものが浮かび上がって……頭の中に相澤先生の詳細な3Dデータが出力されてます」

 

「つまり、オーラ内であれば索敵も可能になったわけだ」

 

 あ、嫌な予感が……

 

「“個性”の効果範囲の拡大と圧縮に加えて、索敵も使いこなせるように訓練しろ」

 

「グエー……やっぱりこうなるんだ」

 

「ほら口を動かす前に、“個性”をガンガン使え……使える手札は、多いことに越したことはないからな」

 

「はい……」

 

 なんだろう……強くなった実感はあるのに、次から次へと壁が出てくるよ。

 

「……えぇい!このなりゃヤケだ!!やってやるよ!!」

 

 考えても仕方がない!壁を全部乗り越えて!皆より先の景色を拝んでやる!!

*1
豹変

*2
調子に乗ってます

*3
とてつもなく調子に乗ってます




現時点での合宿での成果

“個性”の射程、自身を中心とした半径2.5mから半径5mまで拡大。

“個性”の射程内であれば、オーラによる索敵が可能。
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