うらめしや~!どうもハルくんだよ!
合宿3日目の夜、クラス対抗肝試しが始まって皆疲れを忘れて、楽しんでるみたいだよ!
「ぎゃああああ!!?」*1
「ぎゃああああ!!?」*2
「ぎゃああああ!!?」*3
「ぎゃああああ!!?」*4
……楽しんでるみたいだ!
「緑谷くん楽しみだね!」
「ハルくんは、怖いの大丈夫なんだ」
「いや、全然。サメ映画でスプラッター耐性はあるけど、ドッキリはそこまでかな」
「じゃあなんで楽しそうなの!?」
「え?だって皆で盛り上がれるじゃん!」
「ハルくん」
「それに、この顔の僕が驚いたら、ギャップで人気でそうじゃない?」
「ハルくん……」
なんだろう……緑谷くんから失望された気がする……まぁ気のせいか!
僕と緑谷くんは8番目、つまりA組最後の組なわけで、僕らの順番がくるのはまだまだ先だ。
「何この、こげ臭いの……」
「黒煙……」
ピクシーボブとマンダレイが森の方を見て、なにか怪しんだ。
……ピクシーボブの体が、浮いた気がした。
「ピクシーボブ!!」
僕は駆け出した。
ピクシーボブの体が、見えない何かに勢いよく引っ張られた。僕は素早く、ピクシーボブと森の中にいる何かの間に割って入り、バリアで受け止めた。
「大丈夫ですか!」
「えぇ!君のお陰で助かった!」
僕らは森から出てきた、2人に動揺する。
万全を期した合宿のはずだった……
なのに……
「何で敵がいるんだよォ!!!」
峰田くんの叫びが、絶望の始まりを知らせた。
《皆!!!》
《敵二名襲来!!他にも複数いる可能性アリ!!》
《動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず撤退を!!》
僕らの頭に、マンダレイの“個性”で声が送られてくる。
「ご機嫌よろしゅう、雄英高校!!我ら敵連合開闢行動隊!!」
「敵連合……!?何でここに……!?」
「残念ね。水色の子の頭潰そうと思ったんだけど、あの子に邪魔されちゃった……イイ男ね!」
ごめんなさい、今ボケる状況じゃないんだけど、これだけ言わせて……命危機よりお尻の危機を感じます!!
「貴様!!」
「待て待て、早まるなよマグ姉!虎もだ落ち着け……生殺与奪は全て、ステインの仰る主張に沿うか否か!!」
「ステイン……!
「またステイン?はぁ……アイツのフォロワー面倒なのばっかだよね」
「そして、アァそう!俺は、そうお前ら!保須市にてステインの終焉を招いた人物。申し遅れた俺はスピナー……彼の夢を紡ぐ者だ」
長ったらしい自己紹介とともに、得物を取り出すスピナー。
「何でもいいがなぁ貴様ら……!お前らが狙ったピクシーボブは、最近婚期を気にし始めててなぁ……女の幸せを掴もうって……いい歳して頑張ってたんだよ」
「そんな女の顔を狙って、男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ」
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
「虎!!“指示”は出した!他の生徒の安否はラグドールとピクシーボブに任せよう、私たちは二人でここを押さえる!!」
マンダレイの言葉を聞き、ピクシーボブは“個性”で幾つもの魔獣を作り出す。
「ピクシーボブ!皆を任せた!委員長万が一はあなたが引率をお願い!!」
「承知しました!行こう!!」
マンダレイの指示で僕たちも施設に向かって動き出す。
だけど、緑谷くんが何かに気づいてマンダレイの方を向く。
「……飯田くん、先行ってて」
「緑谷くん!?何を言ってる!?」
「緑谷!!」
「マンダレイ!!僕
僕は察した。
……洸汰くんだ。
僕たちを嫌う、洸汰くんがここにいない。
緑谷くんは反応からしてどこにいるのか、見当がついてるんだ。
「……飯田くん……僕が着いて行く……必ず緑谷くんを連れて戻るから……頼む」
「……ハルくん……」
「緑谷くん!僕も行く!案内よろしく!!」
肝試しのスタート地点から離れていく緑谷くんを追い、僕も走り出した。
「緑谷くん!この行動派オタクめ!!」
「うわっハルくん!?なんで来たの!?」
「君を一人にしないためさ!……それに僕の“個性”なら、不意打ちだろうが君らを守れるからね……洸汰くん連れて帰るよ!」
「う、うん」
「そんで……飯田くんとか、マンダレイとか、相澤先生に、一緒に叱られるよ!」
「ハルくん……」
「それより場所は?」
「えっと、あそこの崖みたいなところ!」
「秘密基地か……なんだかんだ言っても男の子だね!」
僕たちは、洸汰くんのいる方へ急いだ。
嫌な予感がした僕たちは、本当はダメだけど“個性”を使って森を翔ける。
「ハルくん……すごいや!フルカウルの僕に着いてこれるんだね」
「場所が良いからさ!それより急ぐよ!」
「う、うん!」
僕は木から木へと飛び移り、フルカウルで走る緑谷くんと併走していた。
ゾワッ
「緑谷くん!!」
僕は、バリアを壊した衝撃で緑谷くんを前方に吹き飛ばす。
次の瞬間、緑谷くんがいた場所が抉るように消えた。
「緑谷くん!行って!!」
僕は緑谷くんに止まらずに洸汰くんの元に急げと叫ぶ。
……緑谷くんは、一瞬躊躇ったけど僕の顔を見て頷いた。
「……」
緑谷くんの背が小さくなっていく。
僕は、木陰に向かって話しかける……緑谷くんを奇襲した人物に心当たりがあったからだ。
「久しぶりだね……叔父さん」
「ハルか……大きくなったな」
「……今まで……何してたんだよ」
「知ってるだろ?実家に来たって聞いたぜ」
「なんで……なんで、ここにいるんだよ」
「おじさんにも色々あってねぇ……敵連合は都合が良かったんだよ」
「……母さん……泣いてたよ?」
「だから?……俺にはやるべきことがある……家を捨て、血を否定したあいつが……今更、泣こうがどうでもいい」
「……そっか」
「それより……あの時の答えを聞かせてくれよ……」
「……」
「張間歐児を継ぐ気はあるか?」
「……叔父さん……僕ね、この世で許せないことが3つあるんだよ」
「一つ、サメ映画を謳っておきながら、サメが出てこない作品」
「二つ、ギザ歯と八重歯の矯正!」
「三つ、母さんを泣かせて、僕らの
僕は叔父さん……Mr.コンプレスを全力でぶん殴った。
「何回でも殴ってやる……それでアンタが元に戻るなら!!」
「イテテ……最近の若い子ってこんな感じなの?おじさん困っちゃうな……悪い子にはお仕置しないとな」
木々が揺れる。
家族喧嘩が始まった。