そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

54 / 93
合宿の終わり

 ……頭が痛い、ここはどこだ?

 ……駄目だ……何も思い出せない。

 

「お、目覚めたか?」

 

 ……誰だ?

 

「改めて自己紹介しとくか……ようこそ敵連合へ」

 

「は?」

 

 ゆっくりと目を開き、周りを確認する。

 バー的な場所に、こちらを見ている敵たち……椅子に拘束されている僕。

 

「歓迎するぜ、張理有ハルくん!」

 

 カウンターの席で、ふんぞり返る死柄木弔。

 

「……」

 

 ……あぁ、思い出してきた。

 

 確か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイツら鬱陶しいな!!」

 

 コンプレスが出した、群体型脳無を対処していた僕は焦っていた。

 

「クソッ!コンプレスが逃げた……早く追わないと!」

 

 Mr.コンプレスが逃げた方を睨みつけながらも、脳無を攻撃する。

 群体型と言われるだけあり、力はそこまでないけど……数が多い。

 いくら殴ってもすぐに別の個体が襲ってくるのでキリがない。

 

「……鬱陶しいね!!」

 

 コンプレスにしたように、大きいプレパラートのような形で圧縮していく。

 

「悪いけど……全力でいくよ!」

 

《真・バリアブルスマッシュ》

 

 オーラと一緒に圧縮し、動けない対象をバリアごと殴りつける新技。

 相手は、圧縮されたことで身動きが取れず、防御不能の核を捉えた一撃が当てられる。

 

 吹き飛んだ脳無は許容量を超えたのか、その場で機能を停止し動かなくなる。

 

「……さてと、まずは緑谷くんのッ!?」

 

ズキッ

 

 群体型脳無を撃破した僕は、緑谷くんを追いかけようと足を動かした。

 次の瞬間、激痛が頭を襲った。

 

ズキッズキッ

 

 世界が歪んで見える。

 頭が割れそうなほどの痛みで、体が動かない。

 

「ウッ……ウォエェッ」

 

 腹の中がひっくり返るような感覚に、嘔吐する。

 体温が急激に下がったのか、体が寒くて震える。

 

ズキッズキッズキッ

 

「……こん、な……とき、に……」

 

 多分、“個性”の許容限界……慣れない圧縮を多用したことによる負荷が、僕を襲っている。

 

「ご……めん……」

 

 ……意識が遠くなる……体に力が入らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《A組B組総員……プロヒーロー“イレイザーヘッド”の名に於いて……戦闘を許可する!》

 

 ……なんだ?

 

《敵の狙いの一つ判明……!!》

 

 ……頭に誰かが語りかけてくる。

 

《生徒の“かっちゃん”!!》

 

 ……なんだ、何を言っているんだ?

 

《わかった!?“かっちゃん”!!》

 

 ……静かにしてくれ……頭が痛いんだ。

 ……体が重くて動かない。

 

《“かっちゃん”は、なるべく戦闘を避けて、単独では動かないこと!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

 どれくらい眠ってた……!?

 

 僕はまだ痛む頭を押さえながら、よろよろと立ち上がる。

 

 ……マンダレイはなんて言ってた?

 

 先程、意識が朦朧としているなか聞こえた声を思い出す。

 頭が割れるように痛い……でも、やらなくちゃ。

 

「……かっちゃん……爆豪くんが狙われているのか……」

 

 僕はオーラを放出する。

 今の限界は半径約9m……全然足りない。

 

「……頭が痛いんだ……誤差だよね……」

 

 僕はありったけの勢いで、オーラを森全体に広げていく。

 敵やクラスメイト、B組……ありとあらゆる情報が一気にに流れ込んできて、頭に熱が籠る。

 

「ッ!?……プルス……ウル、トラァ!!」

 

 情報の暴力に、鼻血が出る。

 それでもオーラを広げて、現状を把握する。

 

「コン、プレス……み、緑谷くん……」

 

 ここから少し離れたところで、コンプレスを追いかけている、緑谷くん達を感知した。

 

 ……爆豪くんがいない……圧縮されたのか?

 ……コンプレスの先に敵が二人……青山くんも……。

 

「なる、ほど……ね」

 

 状況は理解した……僕はまだ動ける!

 

 鼻血を拭った僕は、コンプレスの目的地に向けて、走り出した。

 


 

 僕達は今、目の前にいる仮面をつけた敵を追っている。

 

 洸汰くんを相澤先生に預け、マンダレイに敵の目的と相澤先生の伝言を伝えた後、僕はかっちゃんを探していた。

 

 障子くんと合流して、暴走した常闇くんをかっちゃんたちの方に誘導し、なんとか落ち着かせた後、僕らは施設に向かった。

 

 その時だった。

 

 たった一瞬の隙に、かっちゃんと常闇くんを敵に奪われた。

 

 僕らは、追跡中に合流した麗日さんたちの力を借りて、仮面の敵をついに捕まえることができた。

 

「知ってるぜ、このガキ共!!誰だ!?」

 

「Mr.避けろ」

 

「ッ!了解」

 

 仮面の敵の仲間が僕たちに攻撃を仕掛けてくる。

 

「バッカ冷たっ!!」

 

 仮面の敵は“個性”を使ったのか、姿が消えた。僕らは敵の放った炎が直撃する。

 

「死柄木の殺せリストにあった顔だ!そこの地味ボロ君とおまえ!なかったけどな!」

 

「チッ!!」

 

 炎を回避した轟くんは、全身タイツの敵に襲われる。

 

「いってて……ハルもそうだけど、最近の若い子ってすごいね……飛んでくるなんて、発想がトんでる」

 

「ハルくんをどうした!?」

 

「さぁね……多分、生きてるんじゃない?」

 

「Mr.逃がしたのか……まぁいい、爆豪は?」

 

「もちろん……ここに……!?」

 

「二人とも逃げるぞ!」

 

 障子くんが僕らに叫ぶ。

 

()()()()でハッキリした!“個性”はわからんが、散々見せびらかした……右ポケットに入っていた()()が常闇、爆豪だな……エンターテイナー」

 

「障子くん!」

 

「ホホウ!あの短時間でよく!さすが6本腕!!まさぐり上手!!」

 

 障子くんがMr.と呼ばれた敵から、かっちゃん達を取り返してくれた。

 僕たちは、急いでこの場を離れる。

 

「合図から5分経ちました。行きますよ荼毘」

 

 僕らの目の前に、雄英襲撃の時にいたワープの“個性”持ちが現れる。

 

 僕らは、ワープを回避して逃げようとするけど、障子くんの持っていたビー玉が氷塊に変わる。

 

「手品さ!氷結攻撃の際に貰ったんだ……そんじゃーお後がよろしいようで」

 

 僕らは騙された。

 敵たちが、ワープの中に入っていく。

 

 間に合わない!

 

 そんな時だった。

 

「ッ!?」

 

 Mr.の死角からレーザーが飛び、顔の仮面を破壊する。

 突然のことに、口の中に隠していた、常闇くんとかっちゃんが入ったビー玉が吐き出される。

 

 ここしかない!

 

 僕らは走り出した!

 

 常闇くんは障子くんがキャッチした。

 

 かっちゃんは……ダメだ!轟くんが取ろうとしたけど、横からツギハギの敵の方が早い。

 

「させないよ!!」

 

「ッ!?」

 

 ツギハギの敵の手がバリアに弾かれる。

 ハルくんが、死角から飛び出した。

 その隙を逃さず、轟くんがかっちゃんをキャッチした。

 

「……ゴハッ!?」

 

 僕らが2人を奪い取る隙を作ってくれたハルくんが、血を吐き、動きが鈍る。

 

「……最後までグダグダだったが……第一目標は達成した。お友達が狙われてるって知ったら、お前は動くもんなハル(ヒーロー)?」

 

 Mr.が、ハルくんを掴んでワープの中に引きずり込む。

 

「……お友達は返してやるよ……今度こそショウは終わりだ」

 

 ワープから声が聞こえる。

 常闇くんとかっちゃんが元に戻った。

 

「ハルくん!!」

 

「来ちゃダメだよ……じゃあね」

 

 僕らに別れを告げるように、優しいハルくんの声が聞こえた。

僕は地面にうずくまるしかできなかった。

……完全にしてやられた。

 

 

 

 

 

この夜、僕らは敗北した。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで?爆豪くんが狙いじゃなかったの?」

 

 肝試しが行われた夜のことを思い出した僕は、ファッションセンスが変わらない死柄木弔に聞く。

 

「実際、狙いではあったよ……体育祭で見せた粗暴な面、俺たちと歩むのに相応しいと思う……逸材さ」

 

「ハッ……見る目ないね、スカウトとかしない方がいいよ」

 

「……まぁいいさ、一番の目的はお前だからな……張理有ハルくん」

 

「僕を敵連合に迎えるつもり?僕が首を縦に振ると思ってんの?」

 

「焦るなよ……張間歐児の子孫、ネームバリューも完璧じゃないか!」

 

「はぁ……その話、もう終わったんだけど?そこにいるコンプレスで充分じゃん」

 

「まぁまぁ、時間はたっぷりある……取り敢えずゲームでもして親睦を深めようぜ……まずはUN〇から始めようか」

 

「……なんでだよ」

 

 

 本当になんでだよ。

 ……僕の監禁生活はこうして始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。