「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
僕らは、電車に乗りとある場所へ向かっていた。
どこへ行くのか、なぜこうなっているのか……それは数時間前に遡る。
「じゃあ今度は救けよう」
「へ!?」
切島くんの言葉に、皆が驚く。
「実は俺と……轟さ。昨日も来ててよォ……」
切島くんは、昨日も僕たちのお見舞いに来ていてくれたみたいだ。
そこで、病室でオールマイトと警察の人が、八百万さんと話している内容を聞いたみたいだ。
八百万さんは、敵の一人に発信機をつけたみたいで、その信号を受信するデバイスを、オールマイト達に渡したようだ。
「……つまり、その受信デバイスを……八百万くんに創ってもらう……と?」
飯田くんが、切島くんが何を考えているのか、皆に伝える。
「オールマイトの仰る通りだ!プロに任せる案件だ!
「んなもんわかってるよ!!でもさァ!何っも出来なかったんだ!!」
飯田くんの言葉に切島くんが返した。
それは、切島くんの心に刺さった後悔の表れだった。
「ダチが狙われてるって聞いてさァ!!なんっっも出来なかった!!しなかった!!ここで動けなきゃ俺ァ……ヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ」
「切島、落ち着けよ。こだわりは良いけどよ、今回は……」
「飯田ちゃんが正しいわ」
「飯田が皆が正しいよでも!!なァ緑谷!!」
「まだ手は届くんだよ!!」
切島くんは僕に手を差し出した。
結局、ここでは答えは出なかった。
オールマイトや、他のヒーローに任せるべきと、主張する飯田くん。
皆も、切島くんの気持ちを理解した上で、それに賛成する。
主張と主張のぶつかり合いの末、僕の診察時間になり、その場はお開きになった。
その夜。
切島くんが病室を出る際に、今晩出発すると言い僕は覚悟を決め、八百万さんと共に病院を出る。
「八百万、答え……」
「私は……」
「待て!」
僕らを呼び止める声が聞こえる。
振り向くと、飯田くんがいた。
「……何でよりにもよって、君たちなんだ!俺の私的暴走 を、止めてくれた……共に特赦を受けたハズの君たちが……っ!!!何で俺と同じ過ちを、犯そうとしている!?……あんまりじゃないか!」
飯田くんの言葉に、職場体験の時を思い出す。
……あの時と状況が逆だ。
「何の話してんだよ」
事情を知らない切島くんを、轟くんが止める。
「俺たちはまだ、保護下にいる。ただでさえ雄英が大変な時にだぞ……君らの行動の責任は、誰がとるのかわかっているのか!?」
「飯田くん違うんだよ……僕らだってルールを破っていいなんて……」
僕がそう言い前に出る。
瞬間、頬に鈍い痛みが走る。
「俺だって悔しいさ!!心配さ!!当然さ!!……俺は学級委員長だ!クラスメイトを心配するんだ!!爆豪くんだけじゃない!!」
「君の怪我を見て、床に伏せる兄の姿を重ねた!!君たちが暴走した挙句、兄のように取り返しのつかない事態になったら……っ!!僕の心配はどうでもいいっていうのか!!」
「僕の気持ちは……どうでもいいっていうのか……」
「飯田くん……」
飯田くんの言葉が痛いほど伝わってくる。でも……それでも手が届くなら……僕は何を言っていいのか分からなくなる。
「飯田」
今まで、静観していた轟くんが口を開いた。
「俺たちだって、何も正面からカチ込む気なんざねぇよ」
「……!?」
「戦闘無しで救け出す……ようは隠密活動!!それが俺ら卵にできる……ルールにギリ触れねぇ戦い方だろ」
「私は轟さんを信頼しています……が!!万が一を考え、ストッパーとなれるよう、同行するつもりで参りました」
「八百万くん!?」
「八百万!」
「僕も……自分でもわからないんだ……手が届くと言われて……いてもたってもいられなくなって……」
オールマイトと、初めて会った時に言われた言葉が、頭を過ぎる。
考えるより先に体が動いていた!
「救けたいと思っちゃうんだ」
僕たちの言葉に飯田くんは折れてくれた。
飯田くんも、僕たちに同行することで、デバイスの受信先に行く許可を出した。
……そして
「いつまでグダグダやっとんじゃ」
「……」
いつまでこうしていればいいんだろうね!ハルくんだよ!
昼間に敵連合の誘いを断って、椅子に拘束されて数時間、そろそろお尻が痛くて限界だ。
「……ニュース見るか?」
今まで、黙っていた死柄木が口を開いた。
「……急になに?君ってニュースとか見るタイプだったの?」
「この状況で、よく強気で入れるな?」
「落ち着けよ荼毘……良いじゃないか元気があって」
「座りっぱなしで暇だったろ?ほら」
死柄木は余裕の態度で、テレビをつける。
『……では、先程行われた、雄英高校謝罪会見の一部をご覧下さい』
「ッ!?」
「お、タイミングいいな」
『この度……我々の不備から、ヒーロー科1年生25名に被害が及んでしまった事。ヒーロー育成の場でありながら、敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えた事。謹んでおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした』
……相澤先生。
『……NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒が敵と接触していますが、今回、生徒に被害が出るまで、各ご家庭にはどのような説明をされていたのか、又、具体的にどのような対策を行ってきたのか、お聞かせください』
『周辺地域の警備強化、校内の防犯システムの再検討、“強い姿勢”で生徒の安全を保証する……と説明しておりました』
「不思議なもんだよなぁ……何故ヒーローが責められている!?」
死柄木がこれみよがしに、演説を始める。
「奴らは少ーし対応がズレてだけ!守るのが仕事だから?誰にだってミスの一つや二つある!現代ヒーローってのは硬っ苦しいなァ……これがお前のなりたいものか?張理有くんよ!」
「……」
「黙りか?まぁいいさ、この会見で、お前の居場所はなくなるだろうさ!」
「は?」
『生徒の安全と仰りましたが、イレイザーヘッドさん……事件の最中、生徒に敵と戦うよう促したそうですね。意図をお聞かせ下さい』
『私共が状況を把握出来なかった為、最悪の事態を避けるべく、そう判断しました』
別の記者が、相澤先生に質問する。
『最悪の事態とは?24名もの被害者と1名の拉致は、最悪とは言えませんか?』
『……私があの場で想定した“最悪”とは、生徒が成す術なく殺害されることでした』
「こいつ……」
「おうおう攻めるね!」
『被害の大半を占めたガス攻撃、敵の“個性”から催眠ガスの類だと判明しております。拳藤さん鉄哲くんの迅速な対応のおかげで、全員命に別状はなくまた、生徒らのメンタルケアも行っておりますが、深刻な心的外傷などは今のところ見受けられません』
『不幸中の幸いだとでも?』
『未来を侵されることが“最悪”だと考えております』
記者の意地悪な質問にも、先生たちはしっかりと答えていく。
記者の声が僅かに低くなる……面白くないんだろう。
『攫われた張理有くんについても、同じことが言えますか?』
会見の空気が変わる。
『雄英体育祭準優勝、職場体験ではリューキュウと共に数々の事件を解決し、その経歴から若きヒーローの卵として、注目されていますが……反面、準決勝で見せた容赦のなさ、決勝での闘争を求める荒々しい性格……』
『そして、あの張間歐児の血を引く家系の産まれじゃないですか』
「ッ!!?」
なんで知ってるんだ?
母さんが必死に隠してきた事実を……コイツらが流したのか?
僕は、頭が真っ白になる。
緑谷くん達には明かしたけれど、まだ全員には話せていない。
動揺からか、視界が歪むような感覚に陥る。
『もし、そこに目をつけられた上での拉致だとしたら?言葉巧みに彼を勾引かし、悪の道に染まってしまったら?未来があると言い切れる根拠をお聞かせ下さい』
「あぁあ……知られちゃったな」
「……だからゲームする余裕があったんだ……本当にいい趣味してるよ」
僕は死柄木とコンプレスを睨みつける。
緑谷くんや相澤先生が、こんなこと言いふらすはずがない……なら、犯人は敵連合だ。
『……彼は自分の流れる血に、悩んでいました。合宿にて、初めて私に打ち明けてくれた彼が、どんな気持ちだったのか……普段何を思ってクラスメイトと接してきたのか……私には分かりません。……ですが!彼はそれでも、ヒーローを夢見て真っ直ぐ進んでいました!』
……相澤先生。
怒りがスッと消えていく。
『彼のそれらを、付け入る“隙”と捉えたのなら、敵は浅はかであると私は考えます』
『根拠になっていませんが?感情の問題でなく具体策があるのかと伺っており『さっきから聞いてりゃ好き勝手言ってくれるねぇ!!』ッ!?』
『アタシの弟が敵になるだ!?いい加減にしろよクソジジイ!!』
「ッ!?」
「は?」
「え?」
「……マジかぁ」
相澤先生にまだ質問を続けようとする記者を、怒鳴りつける女性の声が聞こえる。
間違えるわけがない……姉さんだ。
おそらく、会場の警備に来ていたんだと思う。
それで、記者の発言にキレた……姉さんそういうところあるからなぁ……。
ほら、コンプレスも頭抱えちゃってるじゃん。
『アタシも、弟と同じ血を引いてるんだ!それでも、ヒーローになった!それに弟はそんなに弱くねぇんだよ!!』
去年デビューしたばかりのプロヒーロー、エネルギーヒーロー“エナジークィーン”こと三女の張理有エネだ。
エネ姉さんは、記者に掴みかかる勢いで捲し立てる。
さっきまで、相澤先生を攻めていた記者は、エネ姉さんの圧に屈して、縮こまっている。
『アタシらのプライバシーガン無視して、雄英の粗探しかい?いい根性してるね!被害者の気持ちはどうした?この■■■■■が!!』
「……相変わらず元気だなぁ」
「……うん」
エネ姉さんは、会場の警備をしていた他のヒーローに連れられ、外に出された。
エネ姉さんに気圧されたのか、記者は質問をやめて席に着いた。
『……我々も、手を拱いているワケではありません。現在、警察と共に調査を進めております』
『我が校の生徒は、必ず取り戻します』
会見は終了した。
僕は思わず笑みがこぼれた。
だって……相澤先生がエネ姉さんの言葉が嬉しいからだ。
「……ちっ……まぁいいか」
死柄木は予想外のゲストに、この後の演説が僕にハマらないと悟ったんだろう……舌打ちすると、椅子に座り直す。
「……あのさ」
「あ?」
「トイレ行きたいんだけど?」
「今言うことか?」
「別にいいよ?ここで漏らしても……でも大の方だから、クッサいよ?」
「トゥワイス……着いて行ってやれ」
「また俺!?いいぜ!良くねぇよ!!」
トゥワイスと呼ばれた敵が、僕の拘束を外した。
次の瞬間……
僕は全力でトゥワイスの股間を蹴り上げた。
「んヌぉ!?」
股間を押さえてトゥワイスはうずくまる。
「ちょっと急に何!?ヤケにでもなったの!?」
「相澤先生が姉さんが、嬉しいこと言ってくれたんだ……僕の気持ちは変わらないよ!」
僕の行動に、敵連合が戦闘態勢に入る。
「言っとくけど、僕はまだ戦闘許可解けてないからね……全力で相手してやるよ」
「自分の立場わかってるわね……!小賢しい子!」
数時間前から、ずっとオーラを放出していたんだ。
外の様子もバッチリ頭に入っている。
お前らが、会見を待っていたように、僕もこのタイミングを待っていたんだ。
「どーもォピ〇ーラ神野店です!」
一触即発のこの場に、相応しいくない声が聞こえる。
僕の後ろの扉からノックが鳴った。
全員の視線がそちらに向く。
SMASSH!!
次の瞬間、壁をぶち抜いて最強が姿を現した。
壁に空いた穴から、ヒーローが続々と登場し、敵連合を捕まえていく。
シンリンカムイが動きを封じ、荼毘と呼ばれた敵をおじいちゃんヒーローが気絶させる。
「もう逃げられんぞ敵連合……何故って!?」
「我々が来た!」