あれ?僕らはここで何をしているんだ?
濁った頭が急に晴れる。
周りを見ると、かっちゃんや飯田くん達がいる。皆も、僕も同じように周りを見ている。
目の前には、さっきまで雄英の謝罪会見を流していた、大きなスクリーンが取り付けられたビルがある。
「……!?」
スクリーンには、オールマイトとマスクを被りスーツを着た敵が、ぶつかり合っていた。
その近くには……ハルくんがいる。
僕らはなんで動かなかったんだ……思い出せ!
「オッラ!?」
八百万さんが作ったデバイスを頼りに、神野区に着いた僕たちは、念の為変装して目的地まで向かっていた。
「おっ?雄英じゃん!!」
「オッオッラ……」
通り過ぎた人が、雄英を口にしたのでヤカラのフリをした時だった。
『おや?』
前方を見ていなかった僕は、目の前を歩く男性にぶつかってしまった。
「オッオラ!」
『ふふ、元気なお方ですね』
「あ、すみません!」
「申し訳ございません!!緑谷くん!ちゃんと前を見たまえ!」
「う、うん……あの!怪我はしてないですか?」
『えぇ大丈夫ですよ……皆さんはお若いですが、お友達ですかね?』
「え?あ、あぁそうです!」
「うっす!たまたま予定があったんで集まったスよ!」
『そうですか……今夜の神野は少し騒がしいので……気をつけてくださいね』
『
ステッキを持った赤いスーツの男性はそう言うと、人混みに紛れてどこかへ行ってしまった。
その後だった、なぜか意識がぼんやりしてきたのは……
「……ッ!?ハルくん!」
「待て!緑谷くん!もう……遅い!」
今からでもハルくんを助けに行こうと、僕は走り出す。
飯田くんは僕の腕を掴み、スクリーンを指さす。
オールマイトとマスクの敵が戦いっている。
ヘリからの中継で二人の戦いが、どれ程のものか分かる。
「……今からあそこに行って……俺たちに何ができる……」
「……もう……オールマイト先生に、任せるしかありませんわ」
「ッ!」
「クソがッ!」
僕らはスクリーンに映るオールマイトに、ハルくんを任せるしかなかった。
「ずいぶん遅かったじゃないか」
「うわっ!?」
オールマイトと、オール・フォー・ワンと呼ばれた敵がぶつかり合う。
その衝撃は凄まじく、気を抜けば吹き飛ばされそうになるほどだ。
「バーからここまで5km余り……僕が脳無を
「貴様こそ、何だその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理してるんじゃあないか!?」
……マジかよ……オール・フォー・ワン……長いなAFOでいいや。
AFO……オールマイトを素手で弾いたよね!?見た感じ、敵連合のボスっぽいけど……ヤバない!?
「5年前と同じ過ちは犯さん……オール・フォー・ワン」
「張理有少年を取り返す!そして貴様は、今度こそ刑務所にブチ込む!貴様の操る敵連合もろとも!!」
「それは……やる事が多くて大変だな……お互いに」
オールマイトは、力強く宣言し接近する。
AFOは、いきなり腕が膨らみ衝撃波をオールマイトに向けて飛ばす。
ビルを巻き込みながら、オールマイトは吹き飛ぶ。
「“空気を押し出す”+“筋骨発条化”“瞬発力”×4“膂力増強”×3……この組み合わせは楽しいな……増強系をもう少し足すか……」
「オールマイトッ!!!」
「心配しなくても、あの程度じゃ死なないよ。だからここは逃げろ弔……この子を連れて」
AFOは死柄木にそう言うと、爪を伸ばし気絶している黒霧に突き刺した。
「黒霧、皆を逃がすんだ」
「ちょ!あなた!彼やられて気絶してんのよ!?よくわかんないけど、ワープを使えるなら、あなたが逃がしてちょうだいよ」
「僕のはまだ出来たてでねマグネ。転送距離はひどく短い上……彼の
……コイツ、幾つ“個性”を持っているんだ?
それにしても、この状況マズイよな……なんとか隙を見つけて逃げないと……
僕がこの場をどう離れようか、考えていると倒れていた黒霧から黒いモヤが広がっていく。
「さぁ行け」
「先生は……」
遠くの方で、何かが飛び上がりこちらに近づいてくる。
「逃がさん!!」
オールマイトだ!良かった無事だったみたいだ。
「常に考えろ弔、君はまだ成長出来るんだ」
まるで、最後の別れを告げるように、AFOはオールマイトに向かって行った。
「行こう死柄木!あのパイプ仮面が、オールマイトをくい止めてくれてる間に!」
地面に膝をつき、AFOの戦いを呆然と見ている死柄木に、コンプレスが気絶した荼毘を圧縮しながら、声をかける。
「
「お構いなく……なんて言っても諦めてくんないんだよね」
「張理有少年……!!」
仕方がないね……念の為筋は通しておこうか。
「オールマイト!“個性”使用の許可を!!僕の“個性”なら!貴方が勝つまで持ちこたえられます!!」
「……ッ!……絶対に無茶をしちゃダメだぞ!オールマイトの名において、張理有少年の“個性”使用を許可する!」
「ありがとうございます!!」
さて、全力で逃げるとしますか……。
欲を言えば、コイツら捕まえたいんだけど……二兎追うものは一兎も得ずって言うし、オールマイトが戦いやすくするためにも、僕は逃げることにする。
「中々いいコンビネーションじゃん!」
全身タイツの敵……僕が股間を蹴り飛ばしたトゥワイスと、爬虫類っぽい敵……スピナーが接近してくる。
ワイヤーとナイフを回避しながら後ろに飛ぶ。
「うっざ!」
後ろには既に、マグネとコンプレスが待ち構えている。
《バリアブルスマッシュ》
足でバリアを破壊して、2人に衝撃波を食らわせる。
圧縮を使いこなせたらいいんだけど、使えるようになったばかりからか、実戦投入にはまだ早い。
今の僕は、母さんやコンプレスみたいにビー玉サイズまで対象を圧縮できない。等身大パネルみたいにしか圧縮できないし、その状態も数秒しか持たない。
ついでにいえば、使いすぎたらまた反動がくるかもしれない、この状況でそんな博打に頼れるわけがない。
「やっぱ陸か……」
逃走経路も限られている。
バリアを足場にして、空からの脱出も考えたけど、AFOの範囲攻撃で、撃ち落とされそうだからやめた。
とりあえず、コンプレスには絶対触れられたらアウトだ。
クソッ!流石に僕一人じゃ脱出はキツイか?
「今、行くぞ!!」
「オールマイト気をつけて!!」
「僕がいるんだ、行かせるわけないだろ?」
僕が苦戦しているのを見て、オールマイトは助けに来てくれるが、それを許すAFOじゃない。
黒霧を刺した爪で、オールマイト押さえ地面に擦り付ける。
『お困りのようですね』
「ッ!?」
「ッ!?」
「ッ!?」
ノイズが混じった声が聞こえた。
『ずうぅぅっと待ってましたよ……この状況をね』
「不味い!」
「君は……!」
『久しぶりですね……オールマイト、オール・フォー・ワン』
Mr.Yだ。
いつの間にか、この戦場のど真ん中に現れたMr.Yは、ステッキを回しながら鼻歌交じりに、二人に近づいていく。
『あれから6年……貴方達がこうして相見えるのを、心待ちにしていましたよ』
「また僕たちに、催眠をかけるつもりかい?」
『無駄と言いたいみたいですが……流石の私も無策でここには来ませんよ』
Mr.Yはニヤニヤと笑い、二人にステッキを向ける。
『強制Y談』
「…………ッ!?」
「…………ッ!?」
Mr.Yの“個性”が発動した。
アイツの話では、あの二人には耐性があるみたいだけど……
二人は口を押さえている。
……どういうことだ?
『やはりですね……貴方達の耐性は劣化していますね』
「……ッ!?」
「……ッ!?」
『それだけの大怪我を負ったんですから……体質が変わってもおかしくないですよね?それとも歳をとったせいですか?まぁなんにせよ……この状況は私にとって都合がいい!!』
「“性癖解放”!!巨大化したMt.レディの尻で息絶えたい!!」
遠くの方から、性癖に塗れた大声が聞こえる。
何かが近づいてくる、足音がどんどん大きくなってくる。
《
「うわっ!?」
「ちょっ!?」
巨大な犀が敵連合を吹き飛ばしながら、僕の前で停止する。
「助けに来たぞ我が弟子!」
「私たちもいますよ!」
「初めまして……私は
犀化した犀原の背中から、箱庭と初めて会う女性が身を乗り出してくる。
聖母愛聖と名乗った女性は、青を基調としたドレスを身にまとった、落ち着いた雰囲気がある……この人が最後のメンバー?
「彼女のことが、気になるかもしれませんが後にしてください!チャーター便を、用意したのですぐに逃げてください!」
箱庭が指を指すと、竜化したリューキュウがこちらに向かって来るのが見える。
「……ありがとう」
「お礼は、無事に逃げ帰ったあとでお願しますね!」
「おいおい!勝手なことしてんじゃねぇよ!」
「行かせねぇぜ!!行っていいよ!」
「少しでも動けば君たちを……汗だくホ〇セ〇クスしないと出られない部屋に閉じ込めます」
「ッ!?」
「ッ!?」
今、恐ろしいこと言ったぞ!?
箱庭の“個性”……あの時はリューキュウとだったけど、そういう使い方できるのか……敵に回したくないね!
「閉じ込められる前に、圧縮してやるよ!!」
「あら?イケナイ子ですね♡」
《バブビーム》
「ッ!?」
コンプレスが、僕たちを圧縮しようと近づくが、聖母さんが放った桃色の光線に当たると、体が縮み赤ん坊になってしまう。
「……あれが彼女の“個性”です」
「……あんたらのメンバーってことは……」
嫌な予感がして聖母さんの方を見る。
「あらあらあらあらあらあら」
目がキマっていた。
頬を赤く染め、息が荒くなっている。
「あの人って……」
「……赤ちゃんや幼児をあやすことに、興奮する変態です」
「……ですよね」
「まぁ……彼女は通常運転ですので……それよりリューキュウが、もうすぐこっちに来ますよ」
「はぁ……そうだね……犀原!僕を飛ばしてくれ!」
「任せろ!」
目の前のとんでもない光景を振り払い、僕は足にバリアを纏い犀原の角に向かって飛ぶ。
《
僕は勢いよく上空へと飛ばされる。
Mr.Yのおかげで、AFOが僕を打ち落とす心配が無くなった。
「リューキュウ!!」
「ハル!!」
僕はリューキュウの背に乗り、戦場を後にした。
『それではショーを始めましょうか!!』
聖母 愛聖
“個性”年齢操作
対象の年齢を操作出来る光線を放つ個性。
本人の気分により、両手でハートを作ることで光線を発射する。
生物だけでなく物体にも適応している。しかし、本人の気質から、物体に使うことはまずない。
若返りだけでなく、老いさせることもできるが、介護プレイに興味がないため、まずやらない。
操作された年齢は一定時間経過で元に戻る。