仮免試験、一次試験が始まって十数分。
僕は皆と離れて岩陰に隠れている。
『けっこう、状況動いてます!現在通過者……52……あ53名!続々出てます!』
一次試験を突破できるボーダーは半分を切った……
「そろそろ動かないと……ヤバいよね」
「それな!イダテン*1でカイサツ*2抜けないと……一次で落ちたら、アビス*3って感じぃ」
岩陰に隠れる僕の隣には、士傑のギャルさんがいる。
なぜ、こんな状況になっているのか……
それは、一次試験開始直後にまで遡る。
《バリアドーム》
ここにいるA組16人を覆うように、バリアを展開する。試験開始と同時に、僕らに降り注いだ攻撃やボールが、全て弾かれる。
「緑谷くん!作戦を伝えて!!バリア解除と共に一気に行くよ!!」
「うん!皆!バリアが解除したら、ここにいる人たちを無力化して拘束!峰田くん、瀬呂くんを中心に僕らが一次試験を突破できる人数が集まったら、ハルくんにバリアを展開してもらう!」
「ちなみに、32人集まれば全員に行き渡るよ!」
「「「「「おう!」」」」」
「3秒後にバリア壊すから……体勢崩した奴から狙ってけ!」
緑谷くんが作戦を伝え、全員が構える。
「3……2……1……GO!!」
《バリアブルスマッシュ》
僕らを覆っていたバリアを破壊して、全方位に解放されたエネルギーによる衝撃波を放つ。衝撃波で体勢を崩した受験生を、幾つかのグループに別れた皆が拘束するために接近する。
「マジかよ!」
「こっち来んな!」
大勢で僕らを狩ろうとしてた受験生は、慌てて迎撃しよとするが、体勢が崩れたことで思うように動けないみたいだ。
「真堂先輩!遠慮なくいきますね!!」
「さすが雄英……一筋縄じゃ行かないか」
「1年だと侮ると痛み目見るな……任せた!」
「任された!」
僕は目の前にいる、傑物学園の先輩達に接近する。
他の受験生と違って、衝撃波を回避した先輩らはすぐに迎撃の体勢を整える。
でも、圧縮しちゃえば関係ないんだよね!
「ッ!?離れろ!!割る!!」
僕が何か企んでいるのを理解したのか、真堂先輩は地面に手を置き、仲間を下がらせる。
「遅いよね!」
この距離なら安全に圧縮できる。
人を圧縮する際、すぐに回収できるようにしないと、色々危ないから人に使う時は、距離を意識しないと行けないんだよね!
「させないよ!」
「ッ!?」
何かしようとする真堂先輩に接近して、圧縮しようと思ったけど、横からボールが飛んでくる。
真っ直ぐに僕のターゲットを狙ってくるから、多分ホーミング系の“個性”が付与されてるのかな。
「無視は……できないね!」
飛んできたボールを躱しながら圧縮する。
「マジか……でも遅い!!」
「最大威力!」
《震動伝地》
真堂先輩は、地面を揺らし割る。
地面が砕け、ここにいる全員を巻き込んで、飲み込んでいく。
「クソ……届かない!」
一人でも圧縮しようと思ったけど、手が届かない。
万が一、圧縮したビー玉を掴み損ねたら、この割れた地面の中から探すのは難しいだろう。
……圧縮を解除したら、生き埋めになってましたとか、シャレにならないからね。
僕は、受け身に集中して、割れた地面に落ちていった。
……っということがあったんだよね!
真堂先輩の“個性”で分断された後、僕は皆を探してる途中で士傑のギャルさんと出会ったんだよね。
「改めて、自己紹介しときましょうか……雄英高校1年A組の張理有ハルです」
「マジメだねぇ……士傑高校の2年、現見ケミィ~よろぴー」
「よろぴー」
「ノリよ!イケメンでノリもいいって超優良じゃん!」
自己紹介も済んだことだし、皆の疑問にも答えようかな。
なんで、士傑の人と岩場で隠れているのか、それはね……
「それにしても、マジアビス……足痛めるとかホント……ありえないんだけど」
はい、こういうことです。
皆と合流するために、オーラで探知してたら足を引きずりながら、他の受験生から逃げてたので助けました。
「現見先輩……どうします?」
「ケミィでいいのに……さっきも言ったけど、一次は突破しないとねぇ……ハルるんは?ウチ置いてけば、一次試験突破でしょ?」
「でも……目の前で怪我した人ほっとけないですよ……仮免試験受けてるのに、先輩を無視したら……それこそヒーロー失格でしょ」
「さてと……それじゃ、さっさと4人捕まえて一次試験突破しましょう」
「り」
「僕の“個性”は“圧縮”。一定範囲のものをビー玉サイズにまで圧縮できます」
「ウチの“個性”は“幻惑”なんかエモい感じの幻を作れる」
「なるほど……ならすぐに突破できそうですね……とりあえず、応急処置だけしますんで、足失礼しますね」
僕は、腰のポーチから圧縮して持ち込んでいた、救急箱を取り出す。
圧縮を使いこなせるようになってから、荷物を沢山持てるようになったんだよね。
だから、腰のポーチの中は青いネコ型ロボットのポケットばりに、色々入ってるんだ!
「これでよし!」
「手際良!?」
「まぁ慣れてますから……」
現見先輩に、応急処置の手際の良さを褒められたけど、あんまり自慢できない……いつも、切奈やトガちゃんに噛まれた傷の手当してるから、自然と身についたなんて人には言えないもんね!
「よし!じゃあ行きましょう!」
「OK!」
念の為、現見先輩をおぶって、僕らを探している受験生に接近する。
「ねぇ君の可愛い顔が見たいんだ」
「ほら、こっちにおいで?」
「「「「ハ~イ♡」」」」
……あれもしかしなくても僕だったりする?
姉さん達が読んでた、少女漫画みたいな作画になってるけど……
まぁ……かっこいいからいっか!
とりあえず、4人の意識を逸らすことに成功したので、僕の“個性”で圧縮して、安全な場所で4人のターゲットにボールを当て、一次試験を突破する。
「なんかイダテンで終わったね」
「現見先輩のおかげです!ありがとうございます!」
『通過者が出ました!67、68名……現在68名です!』
僕らは、一次試験を突破して控え室に向かう。
「皆……頑張ってね」
まだ、試験中の皆にエールを送り、僕は現見先輩を医務室に送り届けるのだった。
張理有ハル……ヒーロー仮免許取得試験
一次試験突破