そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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これが僕の戦い方

 緑谷くんに爆豪くんの相手を任せて、核の回収に向かってる途中の僕でーす!

 

 正直な話、緑谷くんと爆豪くんの因縁の戦いは見てみたい。でもこれは授業で訓練だから、観戦してたらオールマイトに怒られちゃうからね。僕も真面目に頑張りまーす!

 

「さてと……緑谷くん聞こえる?核を守ってる飯田くんを発見した。これから回収するね」

 

『……』

 

 インカムから返事はない。

 それほどまでに苛烈な戦いなんだろう。

 

「万が一君が負けても僕がいる。全力でぶつかりなよ」

 

 緑谷くんを安心させるように、僕がいるってことを教えて通信を切る。

 

 さてとじゃあ僕も始めますか。

 

「そこまでだ敵!」

 

「い、いきなりどうしたんだ!?」

 

「その姿、指名手配犯のターボマスクで間違いないな! 」

 

「ターボマスク!?僕のことか!?……いやまて、今の僕は敵だ…………いかにもそれで?ヒーローが一人で何をしに来た!!」

 

「……君の……君の母さんに、君のことを止めるよう言われてきたんだ」

 

「か、母さんが!?」

 

「もうやめよう……これ以上、その手を汚してなんになるんだ……今ならまだ間に合う。今ここで君が自首するというのなら下で戦ってる君の仲間も含めて、僕から刑を軽くできないか掛け合う!だから……だからもうやめるんだ!」

 

「それは本当か……だが……もう遅い!僕の手は……取り返しのつかないほどに血に染まっている!」

 

「遅いも早いもない!今ここでどうするか決めるんだ!」

 

 ……思いのほか飯田がノッてきてくれるからか、演技に力が入る。

 正直な話、僕は飯田くんなら完封できる。でもそれをしないのは、下で戦っている二人に時間を作るためだ。

 余計なお世話かもしれないけど、今ここでぶつかって、吐き出したいもの全部出さないと、一生後悔するから。

 後で怒られるのは僕だけでいい、ここ数日で僕がどんなイメージを持たれているかは、わかっている。だから、それを逆手にとって、二人が戦うための時間を少しでも延ばす。

 


 

「オールマイト先生!あの二人何喋ってるんですか?」

 

「ム、そうだね。張理有少年は敵役の飯田少年を説得しているようだ」

 

「え、戦わないんですか?」

 

「ヒーローといえど、常に敵と戦うわけじゃないよ。張理有少年のように血を流さない戦い方もあるという話さ」

 

「なるほど!やるなアイツ!」

 

 ……それにしては演技に力が入りすぎてないかな?

 私は切島少年が張理有少年を褒める声を聞きながら、モニターに映る光景に不安を覚えるのだった。

 


 

「……って!こんなことをしてる場合じゃなかった!僕を騙したのかい!?ハルくん!謀ったな!」

 

「バレちゃった(ノ≧ڡ≦)」

 

 はいバレました。

 乗せられちゃった?まぁいいやそろそろ真面目にしないと、成績に響きそうだ。

 

「バレちゃったし、戦おうか?」

 

「最初からそうしてくれ」

 

「まぁ一応ね?降伏する意思があるかどうかは聞いときたいじゃん」

 

「なるほど……ではここからは全力で行かせてもらう!」

 

「いいよ、どっからでも来てよ」

 

 おふざけも終わりにして、飯田くんと戦うことにする。

 僕が軽く跳ねて力を抜いている間に、飯田くんはふくらはぎのエンジンを吹かして接近する。

 

「こんな狭い部屋でよく動けるね!」

 

「君が来る前に粗方片付けておいたさ!」

 

 開けてるとはいえ、ここは屋内。飯田くんの強みの速度は制限されるはずだけど、少しでも速く走れるように対策して、小回りを利かせて連続の蹴りを放ってくる。

 

「危ないね、避けるので精一杯だよ」

 

「普通は避けられないと思うが」

 

「こんな“個性”を持ってるからね。“個性”を頼りにしてたら、いつまで経っても危険に慣れないでしょ?僕は補助輪付きの自転車に、いつまでも乗るような趣味はないんだよ」

 

 “個性”で危険から守られていた僕はある日、事故にあった。

 信号無視をした車が僕にぶつかりそうになる。幸い僕の“個性”が車から守ってくれたけど、とても怖かった。

 だから日常生活でなるべく“個性”を使わないよう周りをよく見るようにして、“個性”以外で危険から身を守る方法を学んだ。

 

「そのスピードじゃまだ目で追えるから、もっと速度上げたら?」

 

「そうやってまた乗せる気だろう」

 

「そんなつもりはないんだけどな」

 

「もらった!」

 

 蹴りを回避できても屋内じゃ逃げ場がない。

()()()壁際に誘導されてしまったようだ。

 飯田くんの蹴りが僕を打つその瞬間、()()()()()()赤黒いオーラを放出させバリアを展開し防いだ。

 

「ざんねん」

 

「まだまだ!」

 

 指を鳴らしてバリアを展開し、飯田くんの連続蹴りに対応していく。

 

「あ、しまった」

 

「そこだ!」

 

 飯田くんの蹴りに合わせて指を鳴らして“個性”を発動していたけど、わざと失敗して大きな隙を作る。

 そこを狙ってきた飯田くんは強烈な蹴りを放つが、それが僕に当たることはなかった。

 

「ゴメンねぇ、“個性”使うのに指パッチンは必要ないんだ」

 

 バリアによって弾かれ大きく体勢を崩した飯田くんに僕は種明かしをする。

 わざと壁際に自分から向かったのは、飯田くんの攻撃する方向を絞るため、指を鳴らして“個性”を使っていたのは不意を突くため、ブラフとハッタリで大きな隙を作った。

 

「僕の“個性”は盾としては優秀なんだけどさ、今のところ攻撃には使えないのよ……だから手札を偽った」

 

 パルクールとダンスで鍛えた身体能力を発揮して、確保テープで、体勢を崩して回避できない飯田くんを捕まえる。

 

「3だと思った?悪いけど僕はJOKERだ」

 

『飯田少年確保!試合が終わるまでじっとしていてくれ』

 

「さてと……終わりにしますか」

 

 緑谷くんたちの戦いに水を差すのは気が引けるけど、授業だから仕方いと割り切り核に近づく。

 

 その瞬間……

 

 

 

 

 

BOOOOOM!!!

 

 

 

 

 

 ビルが揺れた。比喩とかじゃなくてマジで揺れた。

 轟音と共に激しい揺れが起き、いきなりのことで反応できず足を滑らせて転けそうになる。

 

「一体全体なんだってんだ」

 

 僕は核に触れた。

 

『そこまで!ヒーローチームWin!』

 

 オールマイトのアナウンスが試合終了を知らせる。

 

『それじゃ試合の反省会するから戻っておいで』

 

 オールマイトの言われた通り、モニタールームに向かう。

 その途中、ボロボロの緑谷くんと合流する。近くの壁は焦げて大きく壊れていた。

 

「やったね緑谷くん!ナイス時間稼ぎ!おかげで勝てたよ!」

 

「こちらこそ、ハルくんが核を回収してくれて勝てたよ!」

 

 互いの健闘を称えて僕たちはモニタールームに戻るのだった。

 


 

「今回の試合、MVPは飯田さんと緑谷さんですわ。爆豪さんは私怨による独断専行と屋内での大規模破壊。張理有さんは、要所要所真面目に取り組んでいましたが、全体的にふざけていると感じました。それに比べて飯田さんは屋内という“個性”が制限される場所で上手く立ち回れるよう事前に準備していましたし、最初こそ張理有さんのペースに持っていかれましたが、すぐに持ち直して戦闘に入れていました。緑谷さんは爆豪さん相手に果敢に攻めていき、状況が不利と悟ると撤退し、張理有さんが核を回収する時間を稼ぎました」

 

 めーっちゃ喋るじゃん。

 僕は今、正座中さ。足が痺れるのなんのってキツいよね。

 試合が終わった後、オールマイトがMVPを発表したんだけど、その理由を皆に聞いてみたら、八百万さんがめちゃくちゃ詳しく説明してくれたんだよね。

 ……八百万さんってすごい格好してるよね。そうとうな覚悟がないとそのレオタードは着こなせないと思うよ。

 

「まぁ……正解だよ……!」

 

 オールマイト……もしかして思ってたより言われたとか考えてない?

 まぁ楽しかったしいいかな!

 

 この後も授業は続き、試合が行われていった。

 特に轟くんは凄かった。同じチームで索敵が得意な障子くんから、敵チームと核の位置情報を聞いたら、ビルを丸ごと凍らせちゃうもん。モニタールームまで冷気が送られてきて寒かった。

 

 とまあこんな感じで最初の授業は終了した。

 ……最後の方、オールマイトなんか焦ってたけど何かあったのかな?便意?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それより正座やめていい?正直ツラい。

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