「ご迷惑おかけしました!!」
僕の謹慎が解けました。
いやぁ……大変だったよ。
皆の使う共同スペースを、住み始めた時より綺麗にして驚かせたり、なんだかんだ距離が縮まった緑谷くんと爆豪くんのやり取りを見たりと、楽しいことはあった。
この二日間、僕たち謹慎トリオは授業内容やHR等での伝達事項の口外禁止により、ずっとやきもきしてた。
「ハル!待ってたぜ!これお前がいなかった分のノートな!」
「ありがとう峰田くん!それじゃこれ、僕の秘蔵のグラビアね!」
「うっひょー!いい趣味してんな!」
「当たり前だろ?僕はギザ歯八重歯が一番なだけで、基本雑食だからね!隙なんてないよ!」
「流石ハル!それこそオイラの親友だぜ!」
僕は、切奈とトガちゃんと付き合ったことで、読まなくなったグラビア雑誌を峰田くんに渡した。
個人的に、A組でわかりやすくノートをまとめているのは、緑谷くん、八百万さん、峰田くんなんだよね!
他の人も綺麗なんだけど、特に三人はわかりやすい。
謹慎中の緑谷くんはもちろんダメで、八百万さんにノート貸してと言いずらい。
なら、峰田くんしかいない、グラビアと交換で快く貸してくれる。
僕は、諸事情あって*1処分に困っていたグラビアを手放すきっかけができただけでなく、ノートも借りれて、峰田くんは後ろめたさや罪悪感なく、実質タダでグラビア雑誌を得ることができる、WinWinの関係というやつだ。
「……朝からする会話じゃねぇな」
「まぁ……ハルが戻ってきたって感じはするな」
切島くんと、瀬呂くんがなんか言ってるけど聞こえないフリしとこ。
……翌日。
「ご迷惑おかけしました!!」
緑谷くんも、シャバに戻ってきた。
僕と同じで、ずっとやきもきしてたみたいで、気合いが入ってる。
「デクくんオツトメごくろうさま!!」
「オツトメって……つかなに息巻いてんの?」
「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」
「あ!良いな!そういうの好き俺!」
「張理有と緑谷が戻ってきたところで、本格的にインターンの話をしていこう」
ここ数日、皆の話題になっていたインターンについて、相澤先生から説明される。
仮免持ちの僕と緑谷くんが謹慎してたから、待ってたんだね。
……本当にご迷惑おかけしました。
まぁ、僕はほんの少しだけインターンについて知ってるんだけど……だって、職場体験で実際にインターンやってる先輩から話を聞く機会があったからね。
「入っておいで」
「ん?」
「?」
「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から、話してもらう」
ん?この流れまさか……。
相澤先生は、廊下に向かって教室に入るように言う。
扉が開き、三人の生徒が入ってくる。
あ、ねじれ先輩。
「多忙な中、都合を合わせてくれたんだ、心して聞くように。……現雄英生の中でもトップに君臨する3年生の3名……」
「通称……雄英ビッグ3」
金髪のガタイの良い先輩、黒髪の猫背気味の先輩……そして、波動ねじれ先輩。
この人達が雄英ビッグ3……なんかオーラあるわぁ。
「あの人たちが……的な人がいるとは聞いてたけど……!」
「びっぐすりー」
「めっちゃキレイな人いるし、そんな感じには見えねー……な?」
皆もビッグ3の皆さんに、興味津々だ。
「あ!ハルくんだ!久しぶりだね!元気してた?」
「波動先輩お久しぶりです!元気です!」
「君が波動さんの言ってた後輩か!職場体験のこと楽しそうに話してたから、気になってたんだよね!」
「えへへ……そうだ!ねぇ聞いて!この前、抱き枕買ったんだ!」
「へぇそうなんですね!」
……なんだろう……とてつもなく嫌な予感がする。
「ハルくんとお昼寝が気持ちよかったから、なにかを抱きしめて寝るのにハマったの!」*2
「ハルゥ!!またやったなァ!!」
「おいハルゥ!ブチ○すぞテメェ!!」
上鳴くんと、峰田くんが席を立ち僕に向かって叫んでくる。
やっぱりこうなったよ。
詳しく話すと長くなるから、簡単に説明するね。
職場体験中、夜間の出動が何件か続き徹夜した僕らは、交代で仮眠をとることになった。
そしたら、仮眠室で眠ってた僕の布団の中に、寝ぼけて波動先輩が入ってきたんだよね。
あとはお察しの通り、先輩の抱き枕にされて熟睡してました。
なお、事務員さんが事務所のPRとして写真をアップしたことで、僕だけが炎上したことは、語るまでもないだろう。
もちろん、二人には詰められた。……まぁ、あのおっぱいの感触を堪能した対価としては、妥当かもしれない。
「おい」
騒がしくなった教室を、相澤先生が人睨みで静かにさせる。
流石の峰田くんも相澤先生には勝てないようで、血涙を流しながら席に戻った。
「じゃ手短に自己紹介よろしいか?天喰から」
静かになった教室で、相澤先生はビッグ3に自己紹介を頼む。
相澤先生に指名された天喰先輩は、先程までのナヨっとした感じから、険しい顔に変わる。
天喰先輩から出た覇気に僕らは身じろぐ。
「ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで、以前人にしか見えない……後、目の前の子が俺を見て笑ってる……。どうしたらいい?言葉が出てこない……」
「!?」
「頭が真っ白だ……辛いっ……!」
「帰りたい……!」
天喰先輩はそう言うと、僕らに背を向けて黒板にもたれかかってしまった。
「雄英……ヒーロー科のトップ……ですよね……」
「あ!聞いて天喰くん!そういうのってノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」
「彼はノミの『
波動先輩が、天喰先輩の紹介をして軌道修正を図る。
「けどしかし、ねぇねぇところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」
「!」
好奇心旺盛な波動先輩は、初対面の僕にしたように障子くんに質問をした。
……先輩ちょっと待ってください、その質問はデリケートなことかもしれないから止めといたほうが……。
「これは昔に……」
「あら、あとあなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷した!?」
ちょっと待てぃ!!
それは、聞いちゃダメなやつだと思います!
「……!?それは……」
「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの?ね!?峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?ハルくんはなんでさっき怒られてたの?どの子も皆気になるところばかり!」
デジャブ……職場体験でリューキュウ事務所に向かってる道中もこんな感じだったなぁ。
波動先輩はインターンの説明そっちのけで、A組の皆に質問しまくる。
「天然っぽーいかわいー」
「幼稚園児みたいだ」
「オイラの玉が気になるってちょっとちょっとー!!?セクハラですって先パハァイ!!」
「違うよ」
とりあえず、峰田くんは外に出しませんか?
波動先輩に良くない影響を与えそうなんで、近づけたくないです。
「ねぇねぇ、尾白くんは尻尾で体を支えられる?ねぇねぇ答えて気になるの」
「合理性に欠くね?」
「イレイザーヘッド安心して下さい!!大トリは俺なんだよね!」
波動先輩が自由に質問して説明を全くしないので、相澤先生がおこだ。
慌てて、最後のビッグ3が冷や汗をかきながら、大丈夫だと言う。
……本当に大丈夫ですか?
「前途ー!!?」
「「「「「……」」」」」
「多難ー!っつってね!」
「よォしツカミは大失敗だ」
……何が大丈夫だったんですか?
思いっきり失敗しましたよ。
「……3人とも変だよな?ビッグ3という割には……なんかさ……」
「風格が感じられん」
ビッグ3と呼ばれているから、凄い人達と思っていた皆が首を傾げて、本当に凄いのかと疑い始めた。
「まァ何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもない校外活動の説明に、突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね」
僕らの空気を察知した先輩が、真面目な感じで話し始めた。
「1年から仮免取得……だよね。フム。今年の1年生ってすごく……元気があるよね……。そうだねェ……何やらスベリ倒してしまったようだし……」
「ミリオ!?」
「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!」
「「「「「え……ええ~!?」」」」」
ミリオ先輩からの急な提案に皆が驚く。
「俺たちの経・験・を、その身で経験した方が合理的でしょう!?どうでしょうねイレイザーヘッド!」
「好きにしな」
相澤先生の許可も出たことで、僕たちはミリオ先輩と戦うことになった。