うっふ~ん♡
張理有ハルよぉ~♡
よく分からないけどミリオ先輩と戦うことになったのぉ~ん♡
さて、ミリオ先輩に促されるまま体操服に着替えて、やってきたのは体育館γ……仮免試験に向けての特訓でお世話になった場所だ。
「あの……マジすか」
「マジだよね」
ストレッチしてるミリオ先輩に、瀬呂くんが本当に戦うのかと聞く。
そんな様子を見て、天喰先輩が僕たちに背を向けながら、ミリオ先輩にやめた方がいいと伝える。
「ミリオ……やめた方がいい。形式的にこういう具合でとても有意義ですと語るだけで充分だ」
「遠」
「皆が皆、上昇志向に満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」
……天喰先輩……今の言葉は不味いですね。
僕たちを気遣ってくれてるのかもしれないけれど、その言い方じゃ煽ってるって捉えられても仕方ないですよ。
「あ、聞いて知ってる。昔、挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって、問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?大変だよねぇ通形、ちゃんと考えないと辛いよ、これは辛いよー」
「おやめください」
芦戸さんの角を触りながら、波動先輩もこの戦いを中止した方がいいと言う。
「待って下さい……我々はハンデありとはいえ、プロとも戦っている」
「そして敵との戦いも経験しています。そんな心配される程、ザコに見えますか……?」
あ〜ぁ皆乗せられちゃった。
僕は、波動先輩の実力をこの目で見たことあるから、同じビッグ3のミリオ先輩も遥かに強いと思ってるけど……皆は知らないからなぁ……ま、今更止めても後悔が残るだけだし、僕も参加するから少しは抗えるんじゃないかな?
「うん、いつどこから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」
「おれ」
「僕……行きます!」
「意外な緑谷!!」
「問題児!!いいね君やっぱり元気があるな!」
やる気MAXの緑谷くんが前に出る。
いい感じに燃えてるね!それじゃ僕もサポートに回ろうかな。
「近接隊は一斉に囲んでやろうぜ!!」
「よっしゃ先輩、そいじゃあご指導……よろしくお願いしまーっす!!!」
緑谷くんを前に、僕たちは陣形を整えていく。
僕は、近接隊と遠距離組の中間に立つ。
切島くんの合図でミリオ先輩との勝負が始まる。
緑谷くんが一気に飛び出した。
爆豪くんとのケンカで“ワン・フォー・オール”の許容限界が5%から8%に伸びたらしく、この前より速度が上がっている。
緑谷くんが接近戦を仕掛けようとしたその時だった。
ミリオ先輩の服が落ちた。
脱いだんじゃなくて、スルッと落ちた。
すり抜けたみたいに、身にまとっていた体操服が落ちて全裸になった。
鍛え抜かれた全身が露になる。
突然の光景に皆が驚く。
……ふむ、障子くんクラスか……流石ビッグ3ですね!
「あー!!」
こういうのに耐性がなかったのか、耳郎さんが顔を赤くして叫んだ。
「ああ失礼、調整が難しくてね!」
慌てて、ズボンを履くミリオ先輩。
当然、隙だらけなので緑谷くんが顔面に蹴りを叩き込む。
「顔面かよ」
緑谷くんの蹴りは、どういうわけかミリオ先輩を通り抜けて空振ってしまう。
緑谷くんの蹴りに続いて、遠距離組の攻撃がミリオ先輩を襲うけど、全部すり抜けてしまう。
皆の攻撃は、ミリオ先輩の後ろにあったコンクリートに当たり、爆発が起きる。
爆発の煙が晴れると、ミリオ先輩は姿を消していた。
「いないぞ!」
飯田くんが叫び、周りを警戒する。
……おかしい、僕のオーラによる索敵にも引っかからない。
「まずは遠距離持ちだよね!!」
突然、後ろの方で声がした。
声のするほうを向くと、耳郎さんの背後からミリオ先輩が飛び出てきた。
……全裸で。
「ギャアァァァ」
「ワープした!!」
「すり抜けるだけじゃねえのか!?どんな強個性だよ!」
突然現れて遠距離組の背後を取ったミリオ先輩に、皆は攻撃を仕掛ける。
……だけど、ミリオ先輩は皆の攻撃をすり抜けとワープを併用して接近し、次々に腹パンを喰らわせていく。
……強い……皆より知ってるつもりだったけど……これは予想外だ。
「お前らいい機会だ。しっかりもんでもらえ、その人……通形ミリオは俺の知る限り、最もNO.1に近い男だぞ」
……相澤先生がそこまで言うのか……強敵じゃんね!
あっという間に、遠距離組が全滅した。
……あ、待ってこの感じ次に狙われるのって……。
「バリアの君も厄介だから、眠っててもらうよ!」
僕の背後から声が聞こえる。
オーラの索敵に引っかからないってことは、多分すり抜ける“個性”なんだと思うけど……それがわかっても対処のしょうがないよね。
僕は振り向きながら後ろに飛び、ミリオ先輩の攻撃を回避する。
「お!避けるなんて凄いね!」
ミリオ先輩はまた姿を消してしまう。
「何したのかさっぱりわからねぇ!!」
「すり抜けるだけでも強いのに……ワープとか……!それってもう無敵じゃないですか!」
「よせやい!」
ズボンを履き直したミリオ先輩が、僕たちの前に立つ。
「何かからくりがあると思うよ!」
皆がミリオ先輩の無法ぶりに諦めかけていたその時、緑谷くんが声をかける。
「“すり抜け”の応用でワープしてるのか、“ワープ”の応用ですり抜けてるのか、どちらにしろ直接攻撃されてるわけだから、カウンター狙いでいけばこっちも触れられる時があるハズ……!何してるかわかんないなら、わかってる範囲から仮説を立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」
「オオ!サンキュー!謹慎明け緑谷スゲー良い!」
緑谷くんの言葉で、攻略できる可能性があると分かり、諦めムードが消えていく。
「皆!タイミング逃したけど、ミリオ先輩は“すり抜け”だ!ズボン履いてる時、腕や足は索敵に引っかかったけど、頭と胸辺りは全く反応しなかった!」
「ハル!やっぱ頼りになんな!」
僕の報告で更に士気が上がる。
「やるね……問題児コンビ……なら、探ってみなよ!」
「!!
“個性”がすり抜けだと看破されても、ミリオ先輩は強かった。
地面に沈み姿を消すと、緑谷くんの背後に現れる。
カウンター狙いで、ミリオ先輩を警戒していた緑谷くんは得意の分析で、遠距離組がやられたパターンから背後に蹴りを放った。
「必殺!!!ブラインドタッチ目つぶし!!」
「うっ!!?」
「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね……ならば当然、そいつを狩る訓練!するさ!!」
「緑谷くん!?」
しかし、ミリオ先輩は強かった。
カウンター狙いの相手に対する対処法を既に会得していた。
緑谷くんは鳩尾に拳を受けてダウンする。
そこからは、ミリオ先輩の一方的な蹂躙だった。
速さ自慢の飯田くんに何もさせず、硬い切島くんすら“個性”を使う前に沈めてしまった。
「残るは君だけだね!問題児!」
「マジかよ……」
冷や汗をかきながら、ミリオ先輩と対峙する。
……しゃーない!皆の仇取ってみせるから応援してよね!