そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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3分も持たなかったよ……ポンポン痛い(泣)

 ハルくんだよ!

 唐突に始まったミリオ先輩との戦い。

 わずか数分で、僕以外全滅しちゃったんだよね!

 

 多分、増強型の“個性”じゃないと思うんだけど、あまりの速さに皆をバリアで守る暇もなかったんだ。

 

「残るは君だけだね!問題児!」

 

「マジかよ……」

 

 ミリオ先輩は、また全裸になり地面に沈む。

 

 ……ワープの仕組みを何とか解明しないと、ずっと後手に周りっぱなしだ。

 

「……ッ」

 

 とりあえず、仮説を立ててトライ&エラーを繰り返して解き明かすしかないか。

 

 仮設1

 地面スレスレで泳ぐように移動し、ワープしたと誤認させている。

 

 仮説2

 窒息死等を防ぐために、地中で“個性”を解除するとその場で自動的に地上に戻ってくる。

 

 仮説3

 すり抜けの練度がすごくて、地中でジャンプして地上に飛んでくる。

 

 パッと思いついた仮説は3つ。

 まずは、仮説1の検証から始めようか!

 

《バリアブルスマッシュ》

 

 地面に向かって拳を放って、僕を中心とした一定範囲を割る。

 

 ……ミリオ先輩はいない。

 

 ならもっと深いところまで沈んでいるのか?

 あの速さで背後を取っているなら、地面スレスレで移動しないと、間に合わなくないか?

 

 少なくとも、仮説1の線はなくなったと言ってもいいかもしれない。

 

「凄いパワーだね!」

 

 ミリオ先輩が割れた地面から飛び出してくる。

 

 ……今の感じ……弾き出されたって表現した方がしっくりくるね、仮説2の線が濃厚かな!

 

 地面を割ったおかげか、ミリオ先輩のワープの挙動が見えた。

 さっき立てた仮説と照らし合わせると、地中で“個性”を解除したら自動的に地上に戻ってくるみたいだ。

 

「ッ!?」

 

「さっきも言ったよね、カウンター狙いを狩る訓練してるって!」

 

 背後に現れたミリオ先輩に蹴りを放つけど、すり抜けて空振ってしまう。

 ミリオ先輩は、隙ができた僕の鳩尾に拳を放つ。

 

「ッ!?……バリアか厄介だね!」

 

 ……危なかった、バリアがなければさっきの腹パンで終わってたかも……。

 

「……先輩のワープってゲームのバグみたいに弾き出されてますよね?」

 

「へぇ……よくわかったね!でも、わかっても見切れるかな!」

 

 また地面に沈む。

 ミリオ先輩は、沈むと毎回背後から奇襲を仕掛けてくる。

 なら、背後を警戒すれば……いや待てよ。

 ミリオ先輩がそんな分かりやすく仕掛けてくるか?……背後と見せかけて正面から……なんてやってきてもおかしくない。

 

「さぁ行くよ!」

 

「そこ!」

 

 背後ではなく、正面を警戒して正解だった。

 金髪が地面から出てくるのが見えた、僕の仮説が正しければ、今のミリオ先輩は“個性”を解除している!

 

「残念」

 

 地面から顔だけを出してきたミリオ先輩に蹴りを放つが、すり抜けて空振る。

 ミリオ先輩は一瞬で地面に沈むと、体勢を崩した僕の背後から飛び出し拳を放つ。

 

「ッ!?」

 

 鳩尾を狙うのはわかっている。

 なら、予めバリアを展開して守ればいい。

 バリアで弾かれたところを、一撃で仕留めてやる!

 

「裏の裏ってやつさ!」

 

 鳩尾を守っていたバリアだけをすり抜けて、通過したと同時に“個性”を解除したのだろう。

 

「ぐっ!?」

 

 強烈な一撃が鳩尾に突き刺さった。

 


 

「ギリギリちんちん見えないよう努めたけど!!すみませんね女性陣!!」

 

 ……結構見えてましたよ……ご立派でしたね。

 

 僕は皆と同じようにお腹を押さえて、心の中でミリオ先輩にツッコむ。

 

「とまァーこんな感じなんだよね!」

 

「わけもわからず全員腹パンされただけなんですが……」

 

「俺の“個性”強かった?」

 

「強すぎっス!」

 

「ずるいや私の事考えて!」

 

「すり抜けるしワープだし!轟みたいなハイブリッドですか!?」

 

「私知ってるよ“個性”!ねぇねぇ言っていい?言っていい!?トーカ」

 

「波動さん今はミリオの時間だ」

 

 ミリオ先輩の言葉に皆が口々に強いと言う。

 初見じゃ、轟くんみたいなハイブリッドって思うよね!

 

 ……あれ?今の僕も初見じゃハイブリッドって思われたりするのかな?

 

 だって圧縮とバリアだし……知ってないと別々の“個性”って勘違いされるかも……今度、心操くんに見せて驚かせてみようかな。

 

「いや一つ!!“透過”なんだよね!君たちがワープと言うあの移動は、推察された通りその応用さ!」

 

「どういう原理でワープを……!!?」

 

「全身“個性”を発動すると、俺の体はあらゆるものをすり抜ける!あらゆる!すなわち地面もさ!!」

 

 ……なるほど、だから僕のオーラもすり抜けたんだ。

 

「あっ……じゃああれ……落っこちてたってこと……!?」

 

「そう!地中に落ちる!!そして落下中に“個性”を解除すると、不思議なことが起きる。質量あるモノが重なり合うことは出来ないらしく……()()()()しまうんだよね。つまり俺は、瞬時に地上へ弾き出されてるのさ!これがワープの原理、体の向きやポーズで角度を調整して、弾かれ先を狙うことができる!」

 

「……?ゲームのバグみたい」

 

「イーエテミョー!!さっきも張理有くんに言われたよね!」

 

「攻撃は全てスカせて、自由に瞬時に動けるのね……やっぱりとっても強い“個性”」

 

「いいや、強い“個性”にしたんだよね」

 

 梅雨ちゃんがタネ明かしを聞いて、ミリオ先輩の“個性”を強いと言う。

 ミリオ先輩は首を横に振り話を続ける。

 

「発動中は肺が空気を取り込めない、吸っても透過しているからね。同様に鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。あらゆるものがすり抜ける、それは何も感じることができず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚だけがある……ということなんだ」

 

「わかるかな!?そんなんだから壁一つ抜けるにしても、幾つかの工程がいるんだよね」

 

「急いでる時ほどミスるな……俺だったら……」

 

「おまけに、何も感じなくなってるんじゃ動けねー」

 

「……失敗したら大幅ロスになっちゃうもんね……現場じゃそれは致命的だ」

 

「そう案の定俺は遅れた!!ビリッけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた」

 

 僕たちの話にミリオ先輩は同意して、当初の目的だったインターンについての説明を始める。

 

「この“個性”で上に行くには遅れだけはとっちゃダメだった!!予測!!周囲よりも早く!!時に欺く!!何より予測が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!経験則から予測を立てる!」

 

「長くなったけど、これが手合わせの理由!言葉よりも“経験”で伝えたかった!インターンにおいて我々は『お客』ではなく一人のサイドキック!同列(プロ)として扱われるんだよね!」

 

「それはとても恐ろしいよ。時には、人の死にも立ち合う……!けれど、恐い思いも辛い思いもすべてが、学校じゃ手に入らない一線級の“経験”

 

「俺はインターンで得た経験を力に変えて、トップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ一年生!!」

 

 ……凄い……話し方が上手い……思わず引き込まれちゃったよ。

 

「話し方もプロっぽい……」

 

「一話で済むことを三話も……」

 

 ……八百万さん?

 

 何はともあれ、雄英ビッグ3……ミリオ先輩によるインターンの説明が終わり僕らは教室に戻った。

 


 

「1年生の校外活動ですが、昨日協議した結果……校長先生を始め多くの先生がやめとけという意見でした」

 

 HRで相澤先生から衝撃的なことを伝えられる。

 ……まさかまさかである。

 

「えーあんな説明会までして!?」 

 

「でも全寮制になった経緯から考えたらそうなるか……」

 

「ざまァ!!」

 

「が……今の保護下方針では、強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として『インターン受け入れの実績が多い、事務所に限り1年生の実施を許可する』という結論に至りました」

 

「ガンヘッドさんとこどうなんやろ……」

 

「セルキーさん連絡してみようかしら」

 

「クソが!!」

 

 皆、職場体験でお世話になったヒーローに連絡を取るみたいだ……よし!

 

 

 

 

 

リューキュウ!!お世話になります!!*1

 

 

 

 

 

 僕は、皆と違ってリューキュウからインターンに来てとお誘いされてるからね!

 圧縮も使いこなせるようになったし、更にパワーアップした僕を見せて好感度アップ間違いなしだよね!!

 

 

 

 

 

「ようこそ!エナジークィーン事務所へ!!」

 

 

 

 

 

「は?」

*1
110dB

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