そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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インターン?悪いねおじさん達の時間さ!

 やぁ……皆久しぶりだな、おじさんさ!

 

 神野の悪夢からしばらく、死柄木が先生と呼んでいる人物……AFOに逃がされた後、俺たちは捜査の目を眩ます為に各地に分散している。

 そして……同士を集める為、組織の更なる拡大の為に動いている。

 

 俺たちは、トゥワイスの招集で廃工場に集まっている。

 

「……とんだ大物連れてきたな……トゥワイス」

 

 廃工場の扉を開け、トゥワイスとペストマスクの男が入ってくる。

 ……ペストマスクの男……確か死穢八斎會とかいう極道の若頭だったよな。

 

「大物とは皮肉が効いてるな敵連合」

 

「何!?大物って有名人!?」

 

「“先生”に写真を見せてもらったことがある……いわゆるスジ者さ、『死穢八斎會』その若頭さ」

 

 ……どうやら俺の記憶力は問題なかったようだ。

 

 いやね、おじさん三十過ぎてるわけで、これから体のあちこちにガタがくるんじゃないかってビビってんのよね。

 

 そうだ!せっかくだし、皆に(ヴィラン)と極道の違いでも教えようか!

 

 昔は裏社会を取り仕切る恐い団体が数多くあった。

 でも、ヒーローが隆盛してからは摘発・解体が進み、オールマイトの登場で時代を終えた。

 シッポを掴まれなかった生き残りは、敵予備軍という扱いで監視されながら細々と生きている。

 

 

 ハッキリ言って時代遅れの天然記念物だな」

 

「……まぁ……間違っちゃいない」

 

 ……やべ声に出てた。

 

「それでその細々ライフの極道くんが、なぜ敵連合(うち)に?あなたもオールマイトが引退してハイになっちゃったタイプ?」

 

 マグネが若頭に話しかけている。

 まぁ好きそうだもんな……多分。

 

「いや……オールマイト(ヒーロー)よりもオール・フォー・ワンの消失が大きい」

 

 若頭の言葉に、俺たちの空気が変わる。

 

「裏社会の全てを支配していたという闇の帝王……俺の世代じゃ都市伝説扱いだった。だが、老人たちは確信をもって畏れてた、死亡説が噂されても尚な」

 

「それが今回、実体を現し……タルタロス(牢獄)へとブチ込まれた。つまり今は、日向日陰も支配者がいない……じゃあ次は誰が支配者なるか」

 

「……ウチの先生が誰が知ってて言ってんのなら、そりゃ……挑発でもしてんのか?」

 

「次は俺だ」

 

 死柄木はハッキリと若頭に宣言する。

 

「今も勢力をかき集めている、すぐに拡大していく、そしてその力で必ずこのヒーロー社会をドタマからブッ潰す」

 

「計画はあるのか?」

 

「計画?おまえさっきから……仲間になりに来たんだよな?」

 

「計画のない目標は妄想と言う。妄想をプレゼンされてもこっちが困る。勢力を増やしてどうする?そもそもどうやって操っていく?どういう組織図を目指している?」

 

 若頭らペラペラと語る。

 まるで、俺たちが無計画のバカだと伝えるように。

 

「ヒーロー殺しステインをはじめ、快楽殺人のマスキュラー、脱獄死刑囚ムーンフィッシュ……どれも駒として一級品だが、すぐに落としてるな?使い方がわからなかったか?」

 

「イカれた人間十余人も操れないのに勢力拡大?コントロール出来ない力を集めてなんになる。目標を達成するには計画がいる。そして俺には計画がある……今日は別に仲間に入れてほしくて来たんじゃない」

 

「トゥワイス……ちゃんと意思確認してから連れてこい」

 

「計画の遂行には莫大な金が要る。時代遅れの小さなヤクザ者に、投資しようなんて物好きはなかなかいなくてな。ただ名の膨れ上がったお前たちがいれば話は別だ」

 

「俺の傘下に入れ、お前たちを使ってみせよう。そして俺が次の支配者になる」

 

「帰れ」

 

 若頭の話が終わり、死柄木が帰れと怒りを露わにする。

 ……それが合図だった。

 

「ごめんね極道くん!私たち誰かの下につく為に集まってるんじゃあないの」

 

 マグネが巨大磁石を構えて“個性”を使う。

 若頭に磁力を付与して引き寄せる。

 

「こないだ、友達と会ってきたのよ。内気で恥ずかしがり屋だけど、私の素性を知っても尚友達でいてくれた子、彼女言ってたわ……『常識という鎖につながれた人が、つながれてない人を笑ってる』」

 

「何にも縛られずに生きたくてここにいる」

 

「私たちの居場所は私たちが決めるわ!!」

 

 磁石による強烈な一撃が若頭の頭を割る。

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッン

 

 マグネの上半身が弾けた。

 辺りに、血と肉片が飛び散る。

 

「先に手を出したのはお前らだ」

 

「マグ姉ー!!!?」

 

「あぁ汚いな……!!これだから嫌だ」

 

「待てコンプレス!」

 

 俺は飛び出した。

 

 この男のヤバさを理解したからだ、これ以上誰も死なないように“圧縮”で閉じ込めねぇと!!

 

「ッ!?」

 

 何かが飛んでくる気配を感じて、背後の空間を“圧縮”する。

 

「……近寄るな!」

 

「危ねぇな!!」

 

「ッ!?」

 

 若頭の振るった腕を回避して、左腕を“圧縮”して切り離す。

 マグネを殺し、俺のことも殺そうとした若頭を殺すために、死柄木が接近する。

 

 死柄木の真上を何かが飛んでくるが、狙いが甘かったのか、当たることはなかった。

 

「ッ盾!!」

 

 死柄木と若頭の間に割って入ったペストマスクの男が崩れていく。

 

「大丈夫ですか!?オーバーホール!!」

 

 工場の壁が破壊され、ペストマスクの集団が姿を表す。

 

「なるほど……ハナからそうしてりゃ幾分かわかりやすかったぜ」

 

「待てどこから!?尾行はされてなかった!!」

 

「大方どいつかの“個性”だろう」

 

「遅い!!」

 

「すいやせん!腕も……それに弾二発も……」

 

 部下と思われるペストマスクに強く当たる若頭……オーバーホールは失った左腕を押さえて、青筋を浮かべる。

 

「穏便に済ましたかったよ敵連合。こうなると冷静な判断を欠く。そうだな……戦力を削り会うのも不毛だし……互いに死体は一つ……キリがいい。頭を冷やして後日また話そう」

 

 オーバーホールは深呼吸をすると、仲間を引き連れて工場を後にする。

 

「腕一本……高くつくぞ」

 

「てめぇ殺してやる!!!」

 

「……駄目だ」

 

「責任とらせろ!!!」

 

「……落ち着けトゥワイス」

 

 俺は、マグネを殺されたことで激昂するトゥワイスの肩を掴み、落ち着くように言う。

 

「賢明だ。すぐにとは言わないがなるべく早めがいい。よく考えてみてくれ……自分たちの組織とか色々……」

 

 

 

「冷静になったら、電話してくれ」

 

 死穢八斎會若頭との会合は、マグネ(仲間)の死という最悪な形で幕を閉じた。

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