そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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とある少女の独白/ザ・修羅場1

張理有ハル……私の大好きな人の名前です。

 

 あの日、公園で隠れて血を飲んでいた私の前に現れて、自分の腕を差し出してきた、不思議な男の子。

 

 家族に認められなかった、私の()()を受け入れてくれた人。

 

 もしあの時、出会わなかったら……私は普通を演じ続けていつか壊れていたと思います。

 

 あの日、公園で一緒にいた少しの間……ハルくんは私に色んな話をしてくれました。

 

 ヒーローになりたいこと、好きな物のこと、また遊ぼうと約束してくれたこと、血とは違う暖かさがその言葉たちに宿ってました。

 

 でも、あの日から会うことができなくなりました。

 血を飲む姿を見ても、恐れることなく自分の手を差し出したハルくん……

 

 私は嬉しくて嬉しくて嬉しくて……飲みすぎてしまったのです。

 血を多く失ったハルくんは倒れてしまいました。

 私はどうしたらいいか分からなくなって泣いていました。

 たまたま通りかかったお婆さんがいなければ、ハルくんはあのまま死んでいたかもしれません。

 当然、私の両親は怒りました。

 頬っぺたも叩かれました。

 

 幸い、ハルくんは輸血が間に合ったみたいで、無事に数日後に退院して良かったです。

 ……でも、明日も一緒に遊ぶ約束は守れませんでした。

 私の両親は、ハルくんの入院中に引越しの準備をして、すぐに地元を離れてしまいました。

 私が会いたいと言っても怒られるだけでした。

 

 もう一度、ハルくんに会いたい。

 今日までずっとこの気持ちが変わることはなかったです。

 

 だからヒーローになろうと思いました。

 ハルくんはヒーローになると言ってたから、私もヒーローになればいつか会えると信じて頑張りました。

 

 血が飲みたくなっても、ハルくんのことを想うと我慢できました。

 笑顔も皆の前ではあまり見せないようにしました。

 これまでの奇行が嘘のようになりを潜めて普通になった私を見て、両親は寄り添ってくれるようになりました。

 特になにも感じませんでしたが、雄英に行くために利用することにしました。

 

 ハルくんさえいればもう他に何も要りません。

 私の全部をあげるから、ハルくんは傍にいてくれるよね?

 

 

 

「いやー切奈にも見せたかったなぁ……僕の大活躍をさ!」

 

「はいはい、昨日も聞いたよそれ」

 

「何度も話したいんだよ!」

 

 ……やっと会えたねハルくん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣にいる女の子は誰か聞いてもいい?

 


 

 やっほー僕だよ!

 早速なんだけど皆!

 

 

 

「いきなり何?というか誰?」

 

「あなたこそ誰ですか?私はハルくんに用があるのです」

 

「は?」

 

「ん?」

 

 

 

 助けてくれませんか?

 

 戦闘訓練の翌日、マスコミやら委員長決めやらで忙しかったんだけど、切奈と一緒にお昼ご飯を食べるからワクワクしてたんだけど、後ろから女子に声をかけられて、天国は地獄に変わった。

 

 ……いや素敵な歯に挟まれてるから天国か。

 

 とにかく、僕を挟んでメンチ切ってる2人をなんとかして欲しい。

 さっきから怖くて仕方ないんだよね。

 でも、僕好みの歯が沢山見れて幸せでもあるんだよね!

 

「だから私は幼なじみだって言ってるでしょ!ハルに近づかないでもらってもいいかな!」

 

「幼なじみのクセに彼女面ですか?残念ですけど、私とハルくんは運命の赤い糸で結ばれているんです」

 

「は?ハル!どういうこと!!」

 

「ハルくんからも説明してください!私のことをちゃんとこの人に!」

 

 やっべこっちに飛び火した。

 さてと……どうしようか。

 ……それにしても、この子どこかで会ったような……思い出せ僕!こんなに素敵な歯の持ち主を忘れるなんて、トゥースフェティッシュ*1の風上にも置けないぞ!

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「もしかして、あの子!?公園で僕を目覚めさせた!」

 

「思い出してくれましたか!」

 

「うそでしょ!?」

 

「ごめん!あの時のことほとんど覚えてなくて……思い出すのに時間かかっちゃった」

 

「いいのです!こうしてまた会えましたから!」

 

「会えて嬉しいよ」

 

「え……」

 

「改めて自己紹介しましょう。渡我です!渡我被身子です。ハルくんが好きです!ハルくんと会うためにここに来ました!」

 

「渡我さん」

 

「さん付けやめてください。トガって呼んでください……名前でもいいですよ」

 

「じゃあトガちゃんで……よろしくね。僕は張理有ハル好きに呼んでいいよ」

 

「あの2人とも私のこと忘れてない!?」

 

「まだいたんですか?」

 

「最初からずっといましたけど!?」

 

「あっち行っててください。私はこれからハルくんとイチャイチャするので」

 

「流石にそれは恥ずかしいかな」

 

「はァ!ありえないんだけど!私だってハルとイチャイチャしたいし!!」

 

「切奈ここ食堂だから皆見てるよ……」

 

「なによ!」

 

「なんですか!」

 

「誰か助けてくれ」

 

 キャッツファイトが始まりそうになる2人に頭を抱える僕。

 今好きな人と初恋の人が出会うなんて……人生何があるか分からないよね!

 ってそんなこと言ってる場合じゃない!喧嘩を止めないと……

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難してください』

 

 次から次へと今日は厄日かな?

*1
歯フェチ

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