「オラッ!!」
「うっ!?」
「ドラッ!!」
「がっ!?」
「無駄ッ!!」
「ブベラッ!?」
拝啓
母さん……僕は今、エネ姉さんの事務所でインターンをしています。
プロヒーローの元で、現場に出動して事件や事故を解決して経験を積む貴重な体験をさせてもらってます。
実際、先輩の話では死に立ち会う事もあるそうです。
さて、本題に入りますが……そのインターン先のヒーローである姉に殺されかけてます。
「……姉さん……もうちょっとこう……手心とか……」
「あるわけないだろ、お前を強くするためなんだからビシバシいくよ……てかヒーロー名」
「すいません……クィーン」
「よろしい」
……かれこれ数時間ぶっ通しで殴られまくってます。
「それにしても、エネルギーのコツ掴むの遅いな」
「クィーンが考えるな感じろなんて言うからでしょ……もっとこうないの?」
「強いて言うなら、アンタのエネルギーは目に見えていないでしょ?普段無意識に放出しているものに意識を向けろ。オーラを意識できるようになったら、まずは自分の体に留めてみろ……ほら見えない鎧を着る様なイメージで」
「……なんで武○色で例えたんだよ」
「……わかりやすいだろ?」
「100年以上前の作品持ち出されても伝わらないよ……僕らがマイノリティなの自覚したら?」
「……うっせぇわ」
「というか……それもっと早く教えてくんない?」
「今までのは準備運動兼お前がどれだけやれんのか見てたんだよ。まぁ、基礎はできてるが……これまでバリアありきでやってたから純粋な近接はお察しだったけどな」
「うっ……」
「それに、お前はどちらかといえば窮地になればなるほど伸びるからな……あえてアドバイスもなしに、しこたま殴ればその状態を打開するために覚醒するかもと思っただけだ」
「たしかにそうだけど……」
エネ姉さんの言葉を否定できない。
USJでは、脳無の攻撃を防ぐためにバリアの硬度を上げることができた。合宿では、今まで圧縮が使えるようになったし、“個性”の射程も伸びた……確かに窮地に陥った時の伸びは凄いと思う。
「安心しな……ここからはちゃんと鍛えてやるよ」
「クィーンって……昔からスパルタだよね」
「文句あるか?」
「ないよ」
互いに軽口をぶつけながら、訓練は続く。
エネ姉さんのアドバイス通りに、いつも無意識に放出しているオーラを感知できるように意識を向けることから始めた。
「オラッ!!」
「うっ!?」
「ドラッ!!」
「がっ!?」
「無駄ッ!!」
「ブベラッ!?」
……あれ?さっきと何も変わんないんだけど……。
この日はひたすらにボコボコにされるだけで終わったことを、ここに記しておこう。
今回のインターン中、僕と切奈はエナジークィーン事務所で寝泊まりすることになっている。
まぁ、僕らはインターン生の前に学生だから週明けの月曜日には学校に戻るんだけどね。
そういうわけで、僕と切奈は仮眠室で今日一日の反省会をしていた。
「全然ダメだったよ……普段意識してないものを意識するって……難しいね」
「私も……搦手ばっかだから……純粋な近接に苦戦してる……」
「お互いに課題ばっかだね」
「だね」
「お前ら寮生活で色々溜まってるかもしんないけど、変なことすんなよ……明日も早いんだとっとと寝ろよ」
「エネ姉さん!」
「お義姉さん!?」
「お前にお義姉さんと呼ばれる筋合いは無い!」
仮眠室にノックもせず、エネ姉さんが入ってくる。
変なことって流石にこんな所じゃしないよ。
……あと、めんどくさい義父ムーブやめて。
「まぁなんだ……彼女ができて、羽目外してるかと思ったが……節度は持ってるようで安心したよ」
僕たちの様子を見たエネ姉さんの言葉に、何も言えず視線をそらす。
「「……」」
「……お前らまさか……もう神ったのか?」
「「……」」
ノーコメントで。
「……ハル、お前ちょっとこっちこい」
「うわなにをするくぁせdrftgyふじこlp」
「切奈……お前はもう寝ろ」
「はい!」
エネ姉さんは僕を仮眠室から連れ出して、応接室に連れ込んだ。
そこで、これまで内緒にしてた学校生活のあれこれを聞き出された。
「ふぅ~ん……切奈に飽き足らず他の女とも付き合ってたとはね……いいご身分ですこと」
「はい……」
「……2人は納得してんの?」
「はい……3人で話し合った結果……今の形に落ち着きました」
「チッ……母さんに報告しとくから」
「……はい」
「姉貴達にも言っとくから」
「……はい」
「……まぁ……幸せそうでいいじゃん……血みどろの修羅場だったら介入しようと思ってたけど、胸焼けするぐらい仲良いならアタシは見守るよ」
「ありがとうございます」
「それはそうと、明日の訓練は今日の五倍厳しくするけど」
「……私情では?」
「私情だよ。幾つになってもアタシに春は来ねぇし……大切な弟は両手に花で爛れた生活してるし……文句ある?」
「いえ何も……」
エネ姉さんの圧に僕は何も言えなかった。
そもそも、全部事実で正論だから反論もできない。
「……言っとくけど……アンタが刺されて死んだら、アタシは思いっきり殴るからね」
「はい……気をつけます」
「……本当にね……リューキュウさんも……いや、いいや」
「その話もうちょっと詳しくお願いします!」
「仕事で一緒になった時、アンタの好みとか色々教えてくれって言われたんだよ……本当に刺されて死なないでね」
「善処します」
「はぁ……あんなに可愛かった弟が……こんなことになるなんて……もう遅いから寝なさい、母さんはアンタの女事情知っても笑って許すんじゃない?姉貴たちは知らんけど」
「……」
「とりあえず、明日もビシバシやってくからそのつもりでね」
「お願いします!」
「おう!」
翌日の訓練は三途の川が見えたことを、追記しておく。