そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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会議は続くよどこまでも

「今度こそ必ずエリちゃんを……!!」

 

「「保護する!!」」

 

 会議室に、緑谷くんとミリオ先輩の声が響く。

 僕も机の下で握っていた拳に、さらに力が入る。

 

「ケッガキがイキるのもいいけどよ。推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は、隠しておきたかった“核”なんだろ?それが何らかのトラブルで、外に出ちまってだ!あまつさえ、ガキんちょヒーローに見られちまった!」

 

 ロックロックが現実的な話を始める。

 熱くなった頭が、少しづつ冷えてく気がする。

 

「素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。攻め入るにしても、その子が『いませんでした』じゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定できてんのか?」

 

「確かに、どうなのナイトアイ」

 

「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かねば反撃のチャンスを与えかねない」

 

「そこで、八斎會との接点のある組織・グループ及び八斎會の持つ土地!可能な限り洗い出し、リストアップいたしました!」

 

「皆さんには、各自その箇所を探っていただき、拠点となり得るポイントを絞ってもらいたい!!」

 

「なるほど……それで俺たちのようなマイナーヒーローが……」

 

「?」

 

「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区と、リストがリンクしている!土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ」

 

 サー・ナイトアイはスクリーンに全国にある拠点候補を映し出した。

 

 リューキュウやファットガムのような有名どころ以外のヒーローが、今回この会議に呼ばれた理由を察したみたいだ。

 

「オールマイトの元サイドキックな割にずいぶん慎重やな回りくどいわ!!こうしてる間にも、エリちゃんいう子も泣いてるかもしれへんのやぞ!!」

 

「我々はオールマイトにはなれない!だからこそ、分析と予測を重ね救けられる可能性を、100%に近付けなければ!」

 

「焦っちゃいけねぇ……下手に大きく出て捕え損ねた場合、火種が大きくなりかねん。ステインの逮捕劇が、連合のPRになっちまったようにな……むしろ一介のチンピラに“個性”破壊なんつー武器流したのも、そういう意図があっての事かもしらん」

 

「……考え過ぎやろ!そないな事ばっか言うとったら、身動き取れへんようになるで!!」

 

 エリちゃんと呼ばれたクソ若頭の娘を助けるために、ファットガムは熱くなる。

 サー・ナイトアイやおじいちゃんヒーローが冷静に説明するが、静まることはなく他のヒーローも混ざり収拾がつかなくなる。

 

「あのー……一つ良いですか?」

 

 相澤先生が手を挙げて、サー・ナイトアイに質問する。

 周りのヒーローも、質問を聞くために静かになる。

 

「どういう性能かは存じませんがサー・ナイトアイ。未来を予知できるなら、俺たちの行く末を見ればいいじゃないですか、このままでは少々……合理性に欠ける」

 

「それは……出来ない」

 

「……?」

 

「私の予知ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり一日一時間一人しか見ることな出来ない。そしてフラッシュバックのように、一コマ一コマが脳裏に映される。発動してから一時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見られる……と考えて頂きたい。ただし、そのフィルムは全編、人物のすぐ近くからの視点、見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ」

 

 相澤先生の質問にサー・ナイトアイは答える。

 確かに、部分的な未来しか見れないけど……それでも有用のはずなんだけど、なんで出来ないなんて言ったんだろう。

 

「いや、それだけでも充分すぎる程色々わかるでしょう。出来ないとはどういうことなんです」

 

 僕が思った疑問は相澤先生も同じだったみたいで、サー・ナイトアイに聞く。

 

「例えば、その人物に近い将来…………ただ無慈悲な死が待っていたらどうします」

 

「この“個性”は行動の成功率を最大に引き上げた後に、勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は闇雲に見るべきじゃない」

 

「ナイトアイ!よくわかんねぇな……いいぜ、俺を見てみろ!いくらでも回避してやるよ!」

 

「ダメだ」

 

 ロックロックが自分を見ろと言うけど、サー・ナイトアイは強く拒否した。

 会議室になんとも言えない空気が流れる。

 

「……とりあえずやりましょう。“困ってる子がいる”これが最も重要よ」

 

「娘の居場所の特定・保護……可能な限り確度を高め早期解決を目指します」

 

「ご協力よろしくお願いします」

 

 リューキュウの言葉が空気を変えて、会議は終了した。

 


 

 会議が終わると、僕らは相澤先生にロビーで待つように言われた。

 相澤先生を待っている間に、緑谷くんとミリオ先輩から、エリちゃんについて話を聞いた。

 

 ……悔しいね。

 

 二人の話を聞いて僕は、あえていつも通りを装うことにした。

 皆が暗い顔してるんだから、僕くらいいつも通りでもいいはずさ。

 

「通夜でもしてんのか」

 

 ロビーのエレベーターから音がなり、相澤先生がこちらに近づいてくる。

 

「先生!」

 

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ……いやァしかし……今日は、君たちのインターン中止を提言する予定だったんだかなァ……」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 相澤先生の言葉に僕らは全員驚いた。

 確かに、敵連合が関係しているって話は聞いたけど……。

 

「ええ!!今更なんで!!」

 

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ、話は変わってくる」

 

 切島くんの質問に相澤先生は答える。

 そして、頭をかきながら緑谷くんの方を見ながら言葉を続けた。

 

「ただなァ……緑谷。お前はまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ、ケンカしたからな」

 

 相澤先生は屈んで、緑谷くんの目を真っ直ぐに見つめて続ける。

 

「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまう。俺は確信してしまった」

 

「俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう緑谷」

 

「わかったか問題児」

 

 相澤先生は僕たちが、インターンを続けること……死穢八斎會の一件に関わることを許可してくれた。

 

「ミリオ……顔を上げてくれ」

 

「ねぇ、私知ってるの、ねぇ通形。後悔して落ち込んでもね仕方ないんだよ!知ってた!?」

 

「……あぁ」

 

「気休めを言う、掴み損ねたその手はエリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない……前向いていこう」

 

「はい!!!!」

 

 緑谷くんもミリオ先輩も顔を上げて元気を出したみたいだ。

 

「俺……イレイザーヘッドに一生ついていきます!」

 

「一生はやめてくれ」

 

「すいァっせん!!」

 

「切島くん声デカイ……!」

 

 ふふ、皆二人が元気になったからか明るくなってきたね。

 


 

「あ、いたいた!すみません!」

 

「む?」

 

「ん?」

 

 相澤先生からインターン続行の許可が下りたあと、僕はおじいちゃんヒーロー……グラントリノ*1を探して、会議室に戻っていた。

 

「すみません……お話中でしたか?」

 

「いや……大丈夫だ。……なにか用かね?」

 

「えぇ……グラントリノさん!神野では救けて頂きありがとうございました!」

 

 多分、今日を逃すとお礼を言えるのはもっと後になりそうな気がしたから、先生に一言伝えてここに来た。

 僕はグラントリノに頭を下げてお礼を言う。

 

「あぁその事か……別に気にせんでいい」

 

「オールマイトにも同じこと言われました……でもちゃんと伝えたかったんです」

 

「若ェのにしっかりしてるな……小僧……緑谷の“フルカウル”会得に付き合ってくれたんだろ*2……それでチャラでいい、変に気ィ遣わんでいい」

 

「……あぁそういえばそうでしたね」

 

「丁度いいか……お前さんから見て緑谷はどうだ?」

 

「え?」

 

「別に本人に伝えるつもりわねェ……率直な感想を聞かせてくれ」

 

「そうですね……底抜けに善人ですかね……優しくて正義感ってやつに溢れてて……オールマイトみたいでした」

 

「そうか……変なこと聞いて悪かったな、気ィつけて帰んな」

 

「はい!……失礼します!」

 

 僕はもう一度グラントリノに頭を下げて会議室を出た。

 僕たちインターン生はエリちゃんの居場所がわかるまで、雄英で待機となった。

 

 ……早く見つかるといいな。

 

 僕は、来るべき時に向けて少しでも力を着けるように努めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルくん……今、いいですか?」

 

「トガちゃん?」

*1
緑谷くんから名前を聞いた。

*2
15話、体育祭始まると思った?残念、特訓回でした 参照

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