エリちゃんの居場所が特定できるまで、僕らインターン生は待機することになり、雄英で学校生活を過ごしていた。
エリちゃん救出のために、少しでも力をつけようと日々の訓練をいつも以上に真面目に取り組みヒーロー達の連絡を待つ。
「インターン組、動きがキレてる」
「外で何か掴みやがったんだ……!コラオイ!何を掴んだ言え!!」
「わりー言えねー!」
僕や緑谷くん、麗日さんに梅雨ちゃん、切島くん……あの場の皆が作戦に加わる。
そして、インターンに関して一切の口外を禁止された。
だから爆豪くんがキレても教えられない。
「……とは言ってもだ」
緑谷くんとミリオ先輩が、相澤先生の言葉で立ち直ったあと、先生は僕らに目を向ける。
「!」
「プロと同等かそれ以上の実力を持つビッグ3はともかく、お前たちの役割は薄いと思う。……蛙吹、麗日、切島、張理有。おまえたちは、自分の意思でここにいるでもない、どうしたい」
「先……っイレイザーヘッド!あんな話聞かされて、やめときましょうとはいきません……!!」
「先生がダメと言わないなら……お力添えさせてほしいわ。小さな女の子を傷つけるなんて許せないもの」
麗日さんと梅雨ちゃんが、作戦に参加させて欲しいと言う。
「会議に参加させてる以上、ヒーローたちは1年生の実力を認めている……と思う。現に僕なんかよりも、1年の方がよっぽど輝かしい」
「天喰くん、隙あらばだねぇ」
「俺らの力が少しでもその子の為ンなるなら!やるぜイレイザーヘッド!」
「僕も同じです……小さな子供が泣いてるんです、救けるに決まってるでしょ!」
天喰先輩のフォローに続き、切島くんと僕が意志を伝える。
「意思確認をしたかった、わかってるならいい。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的、それ以上は踏み込まない。一番の懸念である敵連合の影、警察やナイトアイの見解では、良好な関係にはないとして……今回のガサ入れで奴らも同じ場にいる可能性は低いと見ている。だが万が一見当違いで……連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ」
「了解です!」
僕は真面目に訓練に取り組み、来る日を待っていた。
今日も必死になって訓練に取り組み、放課後も走り込みや敷地内の林の中でインファイトスタイルでパルクールをしたりと自主練をした。
日が沈んだので、自主練を終わりにして寮に戻り、お風呂で汗と汚れを落として自室に戻る。
「……」
自室の扉を開けると体操服姿の僕がいた。
もう1回言おうか……自室の扉を開けると体操服姿の僕がいた。
僕が僕のベッドに寝転び、DVDプレーヤーでサメ映画を見ている。
……やっぱり僕ってカッコイイよね。
リラックスしてるのに絵になるね……やっぱりカッコイイ。
「じゃなくて!?……なんでここにいるのさ……トガちゃん」
「あ、ハルくん!」
……ごめん、僕の姿で甘い声出さないで欲しい……ちょっと精神的にダメージ受けるから。
「そうでした…………これでどうですか?」
体操服姿のトガちゃん……カァイイね!
「あれ?確か“個性”って服も一緒に変身するじゃ?」
「ふっふっふ……“個性”伸ばしの成果で体の一部だけ、服だけ、体だけみたいに変身にバリエーションを持たせられるようになったのです!」
「凄いじゃん!」
「えへへ……もっとホメてください」
「よしよし!トガちゃんは凄いねぇ!」
「えへへ……///」
トガちゃんの頭を撫でながら褒めると、トガちゃんは顔を赤くしながら体をくねくねしてる……カァイイね!
「それで……なんで僕の部屋に来たの?」
「それはですね……」
「それは?」
「最後に登場してから43話も経ったからです!」
「いきなり何言ってんの!?」
「43話ですよ……約2ヶ月も登場しなかったんですよ!」
「やめなって!地の文だからメタ発言も許されてきたんだからさ!」
「むぅ」
「むぅ……じゃありません!」
頬を膨らませて拗ねるトガちゃん。
……そういえばトガちゃんってこっちにも干渉できたんだった。*1
それにしても、いきなりぶっ込んできて焦っちゃった。
「それで?本当は?」
「ハルくんが辛そうだったので……遊びに来ました」
「辛そうって……大丈夫だよ」
「……ハルくん……これ、私に付けてください」
「え?」
トガちゃんの言葉に誤魔化し笑うと、トガちゃんはポケットから何かを取り出した。
「これって……僕があげたピアスじゃん」
トガちゃんは、僕が誕生日にプレゼントした、赤い装飾のピアスを見せる。
「ハルくん……私に付けてくれますか?」
「……僕が空けていいの?お医者さんの方が安全だよ?」
「……ファーストピアスはハルくんがいいです」
「でも……」
「ハルくんが空けてくれるまで、ここに居座りますから」
「消灯時間とかあるのに!?」
「私が怒られないためにも……ハルくんが空けてください」
「……わかったよ、準備するからちょっと待ってて」
「はい!」
こうなるとトガちゃんはテコでも動かない、僕は諦めてピアスを空ける準備をする。
トガちゃんから預かったファーストピアスと消しゴムを消毒して、今回空けるピアスの
ピアスを自分で空けるには、ピアッサーとニードル二つの方法がある。
ピアッサーは、初心者向けで特別な技術が不要で、痛みが一瞬で終わる。
ニードルは、上級者向けで慣れてないと失敗するけど、ファーストピアスを好きに選べるし、ピアッサーと比べて
僕はニードル派なんだよね。
まぁ別にそんなことはいいか……手をしっかり洗った僕は、トガちゃんが空けようとしている部分を消毒して、耳にマジックペンで印をつける。
「ふふ……くすぐったいです」
「はいはい、じっとしててね」
「ふふ」
ニードルの内側と外側に軟膏を塗って、印をつけた裏側にちぎった消しゴムあてがう。
「……空けるよ」
「はい……きてください」
印にニードルを刺す。
ニードルは中が空洞になっているから、末端にピアスを押し当てて、接続したまま押し込んで装着する。
最後にピアスのキャッチをはめて終了だ。
「んっ……」
「大丈夫?」
「はい……思ったより痛くないですね」
「どうする?このまま反対も空ける?……それともやめにする?」
「お願いしてもいいですか?」
「わかった」
僕は同じ手順で、もう片方の耳にもピアスをつけた。
「はい、完成!ピアス穴をピアスがしっかり押さえて止血してるから、そのまま数日はつけっぱなしにしててね。不安なら僕に見せてくれればいいからさ」
「ありがとうございます!……わぁ……ふふ、似合ってますか?」
「カァイイよ……とても似合ってる」
「えへへ///……ありがとうございます」
トガちゃんは嬉しそうに鏡でピアスを見て微笑む。
それを見て少しだけ、心が軽くなった気がした。
「それにしても、なんで今ピアスを空けよう思ったの?元々空けるなら誕生日でも良かったんじゃない?」
「……ハルくんは隠し事が上手ですから」
「え?」
「何があったかは聞きません……でも、ネットでハルくんが色々言われてることは知っています」
「……」
トガちゃんは笑顔から少し真面目な顔に変わり、僕の目を真っ直ぐ見つめる。
「……ハルくん……私はそんなに頼りないですか?」
「そんな事は……」
「ないって言いきれます?」
「ごめん」
「謝らないでください……私が切奈ちゃんよりしっかりしてないことは自覚してますので」
トガちゃんは僕をベッドに座らせ、自分も隣に腰を下ろした。
「でも……ハルくんより二歳年上のお姉さんですから、何か抱え込んでいることぐらい分かります……直近で色々ありましたもんね……ハルくんは真面目ですから背負い込んじゃったんですよね」
「……トガ、ちゃ……ん」
「……大丈夫です……ここには私しかいませんから、落ち着くまで一緒にいてあげます」
「……僕……ぼくさ……」
「言わなくても大丈夫ですよ……言わなくてもハルくんが好きだってことは変わりません」
「トガ……ちゃん……僕……ずっと辛かった……心配かけたくなかったから……ずっと平気なフリしてた…………母さんにも……姉さん達にも……切奈にも……峰田くんや皆にも……言えなかった…………僕が上手くやってれば……オールマイトはまだ引退してなかったんじゃないかって……僕の血筋も明かされなかったんじゃないかって……」
「大丈夫ですよ……お胸でもお膝でも貸してあげすから……明日また笑えるように、全部吐き出しましょう……」
「うん」
僕は泣いた。
今まで
トガちゃんは消灯時間が過ぎても一緒にいてくれた。
明日からまた頑張れそうだ。