そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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泣き顔を見られるとなんか恥ずかしい///

 ……

 …………

 ………………

 

うあぁぁぁ!!

 

 ………………

 …………

 ……

 

 ふぅ……スッとした。

 

 失礼、開始早々取り乱しちゃったね!

 トガちゃんに頭撫でられながら、今まで蓋してたものを一気に吐き出して、心はスッキリしたんだけど……恥ずかしいよね!

 

 あんだけ泣いたの、小学生以来じゃないかな?

 まぁ、恥ずかしいことに変わりはないんだけどね!

 

「んん……うん?……おはよ……ございます……」

 

 僕が落ち着くまで、ずっと一緒にいてくれたトガちゃんが目を覚ました。

 

 昨日はずっと一緒にいてくれてありがとね。

 おかげで気分爽快でまた頑張れそうだよ。

 

「おはよう、トガちゃん。昨日はありがとう」

 

「えへへ……ハルくんが元気になって……良かったです」

 

 まだ寝惚けているのか、ほわほわしているトガちゃんはふにゃりとした笑顔を見せてくれる。

 

「ハルくんは……元気に笑ってるのが一番……です」

 

「僕もトガちゃんの笑顔は素敵だと思うよ」

 

「えへへ」

 

「ふふ」

 

 ……さて、現実に目を向けようか。

 

 絶対、相澤先生に怒られるだろうな。

 トガちゃんを寮に返さないどころか、そのまま一緒に寝ちゃったもんね。

 ……また謹慎かな?

 

 とりあえず、現在時刻は午前5時。

 まだ起きてる人はいないと思うから、今のうちに寮に帰ってもらえれば、相澤先生のお叱りだけで済むと思う。

 

「ほら起きな……皆が起きてきたら面倒なことになるよ?」

 

「あと5分……」

 

 寝惚けているトガちゃんは、体を起こすと僕に抱きつきまた目を閉じてしまう。

 

「その5分で僕が磔にされるかどうか決まるんだけど……」

 

 ……僕嫌だよ。

 峰田くんと上鳴くんに捕まって磔にされた挙句、石とか投げられたくないよ。

 

「ううん……あと一時間」

 

「思いっきり延びたね!?この流れで相場は10分じゃない!?」

 

「むぅ……うるさいです」

 

「ごめんね」

 

「んっ…………チウチウ」

 

 頬を膨らませたトガちゃんが、僕の服をズラして肩に噛みついた。

 

「……何してるのかな?」

 

へほひお(寝起きの)……チウチウです」

 

「そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカン、元気になっちゃう!!

 

 朝からなんてサプライズしてくれるんだ!

 めちゃくちゃ嬉しいけれど……ちょっと不味いかな!

 今、ここで元気になったら確実に搾られる……僕の感がそう言ってる!

 

 耐えろ……耐えるんだ……耐えなければ!!

 

「チウチウ……チウチウ……チウチウ」

 

 頭が冴えてきたのかトガちゃんは噛む力を強くする。

 素敵なキバが皮膚を突き破って、血が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカン、マジで元気になる!!

 

 とりあえず、何か別のことでも考えて気を紛らわせないと………………ダメだ!何考えてもギザ歯に繋がる!!

 

「ハルくん……んっ」

 

「トガちゃっ!?……んむぅ!?」

 

 肩から離れたトガちゃんは僕の唇を奪う。

 触れ合うだけのキスから、舌を絡めて互いの唾液を交換する。

 トガちゃん唾液と血液が混じった甘美な味が口内に広がる。

 体が熱くなって、トガちゃんがもっと欲しくなる。

 

 心臓がバクバクと音を立て、視界にトガちゃんしか映らなくなる。

 呼吸が苦しくなり互いに顔を離すと、銀の糸がつーっと伸びる。

 

「はぁはぁ……ハルくん」

 

「……トガちゃん」

 

 互いに顔を赤くして見つめ合う。

 

「どうします?……このまま悪いことしちゃいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

張理有ハルは耐えた。

 


 

 死ぬ気でトガちゃんの誘惑に耐えた僕は、トガちゃんともう一度キスをして寮に返した。

 

 我慢できたのは良いけど、一度湧き上がった性欲は抑えられないので、一時間全力でランニングして発散した。

 

「お!ハルおはよ……って汗だくじゃねぇか!?」

 

「何があった!?」

 

「あはは……ちょっとランニングに()を出しすぎちゃっただけだよ……」

 

「おいおい……本当に大丈夫かよ」

 

 切島くんに心配されながらも、僕は平静を装ってシャワーを浴びた。

 

「……なんか元気になったっぽいな」

 

「え?峰田くん急にどうしたの?」

 

「なんでもねぇ……それより早くしねぇと朝飯食う時間なくなるぞ」

 

 ……やっぱり僕ってわかりやすいのかな?顔に出てたりする?

 

 僕は洗面所の鏡を見て首を傾げる……カッコイイね。

 

 ……とりあえず、朝ごはん食べて学校行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「張理有」

 

「っはい!」

 

「……今回は見なかったことにする以上だ」

 

 バレてました。

 相澤先生の温情で許してもらったけど、同じことがないようにしないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハル!トガ先輩から話は聞いたよ!今日は私の番!!」

 

 ……君らは僕を除籍にしたいのかな?

 

 昨日、エネ姉さんのところで泊まりでインターンをしていた切奈が帰ってきた。

 トガちゃんから昨日の僕のことを聞き、部屋凸しに来たみたいだ。

 

 とりあえず、切奈には誕生日にトガちゃんに渡したピアスと同じデザインの物をプレゼントすること、ファーストピアスを僕が空けることを条件に、消灯時間前に帰ってもらった。

 

 ……三人でお揃いにしたいんだってね。

 

 そう言われて嬉しくなったから、切奈の誕生日に間に合うように頑張って僕と切奈の分を作ろっと。

 

 言い忘れてたけど、トガちゃんにプレゼントしたピアスは僕の手作りだ。

 

 え?誕生日プレゼントに手作りは重い?

 ははっ今更でしょ?僕だって二人に負けないくらいクソデカ感情持ってるよ。

 

 そんな感じで、僕は作戦までの時間で心をリフレッシュした。

 

 

 

翌日……深夜

 

 

 

 皆が寝静まった深夜、僕らは示し合わせたように共有スペースに集まった。

 

「来たか!?」

 

「うん……」

 

「決行日……!」

 

 僕らはスマホから目を離し皆を見る。

 ついにエリちゃんを救ける時が来たんだ。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本拠地にいるぅ!!?」

 

 サー・ナイトアイの報告に、この場にいるヒーローが驚く。

 

「なんだよ!俺たちの調査は無駄だったわけか!?」

 

「いえ、新たな情報も得られました」

 

「どうやって確信に至った!」

 

 ヒーローがサー・ナイトアイに、なぜ本拠地にエリちゃんがいるとわかったのか聞く。

 サー・ナイトアイは、机の下から女児向けの玩具を取り出した。

 

 あ、プリユアだ。

 

 懐かしいな……幼稚園入った頃だったかな……姉さん達にリモコン争奪戦で負けて、一緒に見たっけなぁ。

 僕は、同時刻にやってた少年漫画系のアニメが見たかったんだけど……嫌いや見ているうちに姉さん達よりもハマっちゃたんだよね。

 

「八斎會の構成員が先日、近くのデパートにて女児向けの玩具を購入していました」

 

「はぁ!?」

 

「なんじゃそりゃ」

 

 まぁそう思うだろうね。

 自分たちが必死に全国各地の拠点になりえそうな場所を探っていたのに、女児向け玩具を買っていた構成員が決め手になった、なんて言われたらねぇ……。

 

「そういう趣味の人かもしれへんやろ!!世界は広いんやでナイトアイ!……ちゅーかお前も買うとんねん」

 

「いえ……そういう趣味を持つ人間ならば、()()に言わないセリフを吐いていた」

 

 サー・ナイトアイは説明する。

 件の構成員は店員さんにプリユアのおもちゃがどこにあるか聞いていたみたいだ。

 しかも、初代のタイトルしか知らなかったみたいだし、それも直前まで忘れていたようだ。

 加えて、今のタイトルを店員さんから教えて貰ったら、面倒と呟いたらしい……間違いなくファンじゃないよね。

 どちらかと言えば、子供の誕生日にプリユアのおもちゃを買いに来たお父さんに近い。

 

 そういうわけで、怪しいと思ったサー・ナイトアイは“個性”を使い、構成員の未来を見たみたいだ。

 

「予知使うのかよ!」

 

「確信を得た時、ダメ押しで使うと先日も言ったハズ」

 

「とにかく!コレでようやっと決まりっちゅうワケやな」

 

「奴が家にいる時間帯は、張り込みによりバッチリでございます」

 

「礼状も出ている後は」

 

「緑谷くんやるぞ!!やるんだ!!」

 

 これで準備は全て整った。

 僕たちは死穢八斎會からエリちゃんを保護するために、行動を開始した。

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