エリちゃんの居場所を特定した後、驚くほど早く準備が整った。
そしてサー・ナイトアイが構成員の未来を見た結果、八斎會邸には、一切の届出のない入り組んだ地下空間が存在しているようだ。
エリちゃんはその地下空間の一室にいる。
「しかし、目指すにしても“個性”を駆使されれば捜索は難航する。そこで!わかる範囲だが八斎會の構成員の登録個性をリストアップしておいた。頭に入れといてくれ!」
警察の方に渡されたリストを目に通す。
「隠蔽に時間を与えぬ為にも、全構成員の確認捕捉等、可能な限り迅速に行いたい」
警察の言葉に頷き、気持ちを切替える。
「決まったら早いっスね」
「君、朝から元気だな……」
「緊張してきた」
「探偵業のようなことから、警察との協力……知らないことだらけ」
「ね!不思議だね」
「こういうのって、学校じゃ深く教えて貰えなくて新人時代苦労したよ」
「わかる」
「プロ、皆落ち着いてんな!慣れか!」
「かもね……僕たちも数年後にはこんなふうになれるかな?」
「なろうぜ!な!緑谷もさ!」
「う、うん……」
「ん?緑谷くんどうかした?」
「あぁいや……グラントリノがいなくて……どうしたんだろ」
緑谷くんがソワソワしていたから、話を聞いてみたらこの前の会議に参加していたグラントリノの姿が見当たらない。
「あの人は来れなくなったそうだ」
「え」
「塚内が行ってる連合の件に、大きな動きがあったみたいでな。悔しそうだったよ……だがまァこちらも人手は充分、支障はない」
「そっか……」
「八斎會と敵連合、一気に捕まったりしてな!」
「それだ!」
警察の人から詳しく話を聞き、切島くんが頑張ろうと言う。
「おい」
「あいっイレイザーヘッド!」
「俺はナイトアイ事務所と動く意味わかるな?」
「はい……!」
「ヒーロー……多少手荒になっても仕方がない」
「少しでも怪しい素振りや、反抗の意思が見えたらすぐ対応を頼むよ!」
「ハル……今回の作戦、あなたの“個性”なら手早く無力化できるはずよ……期待してるわね」
「はい!」
「相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに、各員の仕事を全うしてほしい!」
「出動!」
僕は八斎會邸に向かった。
AM8:30
決行!!
「礼状読み上げたらダーッ!!と!行くんで!速やかによろしくお願いします」
「しつこいな、信用されてねぇのか」
「集中しましょロックロック」
「そういう意味やないやろ、いじわるやな」
「フン」
僕は、いつでも動けるようにオーラを広げる。
扉の向こう側にある八斎會邸の様子が、頭に入ってくる、それと同時に警察の方がインターホンを鳴らした。
「そもそもよぉ……ヤクザ者なんてコソコソ生きる日陰者だ。ヒーローや警察見て、案外縮こまっちまったりしてな」
「ッ!?皆さん!奴らスタンバってます!!」
「何?」
「何なんですかァ……朝から大人数でぇ……」
「!!」
僕が扉の向こうにいるヤクザ達の様子を伝えると同時に、巨漢が扉を突き破り僕らに向かって突撃してくる。
巨漢は拳を振り上げて、警察官が何人か吹き飛ばす。
僕は腰のケースから、圧縮していたワイヤーを元に戻して警察官の一人に向かって投擲する。
先端に重りをつけたワイヤーを警察官の体に巻き付けると、僕の方へ引っ張り受け止める。
残りの警察官は相澤先生と緑谷くんが救けたみたいだ。
「大丈夫ですか!」
「あぁ……俺はいいから……先に行ってくれ」
「安静にしていてください」
「オイオイ待て待て!!!感付かれたのかよ!!」
「いいから皆で取りおさえろ!!」
突然の奇襲に全員の動きが止まる。
そんな状況を敵が待ってくれるはずもない。
「少し元気が入ったぞー……もぉ~~~」
「離れて!!」
「何の用ですかァ!!!」
巨漢の拳を竜化したリューキュウが受け止める。
「とりあえず、ここに人員割くのは違うでしょう……彼はリューキュウ事務所で対処します!皆は引き続き仕事を」
「はい!今のうちに!」
リューキュウが巨漢を地面に叩きつけると同時に、警察とヒーローが八斎會邸に入っていく。
僕もリューキュウ達と巨漢の敵の対処に当たろうとして、行動を開始する。
「ハル!あなたはナイトアイ達と一緒に行動!エリちゃんの保護に向かって!……ここは私たちで充分だから!」
「……っ!はい!」
僕も警察やヒーローに続いて、邸の中に突入した。
「麗日さん!梅雨ちゃん!お互いに頑張ろうね!」
「うん!」
「ええ!」
「緑谷くん!切島くん!行こう!!」
「うん!」
「おう!」
「おォい何じゃてめェら!」
「勝手に上がり込んでんじゃねー!!」
「ヒーローと警察だ!違法薬物製造・販売の容疑で捜索礼状が出てる!」
邸にはヤクザがこちらを迎え撃つ形で沢山いた。
僕は慌てることなく、前の三人にワイヤーを投擲してまとめて縛り上げる。
「“圧縮”!!」
ワイヤーで縛られたヤクザ達を圧縮して『ヒトプレス』にすると、僕の方に引き寄せて腰のケースに保管する。
仮免試験の一次で上手く圧縮を活かせなかった反省から、捕縛用のワイヤーに重りをつけて相澤先生の捕縛布みたいな使い方ができるようにした。
あちこちでヒーローとヤクザが戦っている。
僕らは目の前の扉を目指して走り出した。