そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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それは越えちゃいけない一線だろうが!!

皆と分断されて、全面コンクリの密室に閉じ込められた僕は、コンプレスと再会して戦いを始めた。

合宿から約二ヶ月、互いに色々あったんだと思う。

 

正直、コンプレスを相手にしている場合じゃないんだけど、皆と合流しようにもコイツがそれを許すとは思えない。

 

「だから!最短で捕まえる!!」

 

「やってみろよ!」

 

コンプレスは圧縮した物を元に戻し、コンクリや瓦礫などを僕に向かって投げつけてくる。

僕に接近すれば、問答無用で圧縮されるのを理解しているが故の安牌……この程度じゃ僕は止まらない。

 

《バリアスマッシュ》

 

バリアを纏った腕で破壊していく。

エネ姉さんとの特訓で、純粋な近接能力を強化した僕なら、楽に壊せる。

 

「ほらほら!脇が甘ェよ!」

 

「あえてだよ!」

 

瓦礫を対処している僕の隙を突いて、攻撃を仕掛けてくるコンプレスをバリアで閉じ込める。

 

この密室空間で僕に死角はない。

逃げ道を封じたつもりだろうけど、この空間なら僕のオーラは一瞬で全体を覆える。

コンプレスがどこから攻撃しようとも無駄だ。

 

「このまま圧縮して終わりだ」

 

「残念でした」

 

バリアを圧縮しようとした僕だったが、先にコンプレスがドーム状に展開したバリアの一部を圧縮して脱出した。

 

「俺の“個性”だって当然、伸びてるさ……お前と戦うならバリアを警戒しないわけないもんな」

 

「だったら!」

 

さっきみたいに、下っ端ヤクザと同じ『ヒトプレス』にしてやる。

腰のケースから圧縮したワイヤーを取り出し、コンプレスに向かって投擲する。

 

「そんな付け焼き刃が俺に通用するとでも?」

 

ワイヤーを軽やかに避けたコンプレスは、先端の重りに触れて圧縮した。

重りにより、ある程度指向性を持たせていたワイヤーは、重力に従い地面に落ちる。

 

「ッ!?」

 

「これで……担任の真似事はできなくなったな」

 

「あっそ……ならこれはどうかな!」

 

《インファイトスタイル》

 

オーラを体内に留めて、全身に循環させる。

アニメみたいに、赤黒いオーラを全身に纏い身体能力を強化する。

 

「なるほどな……オーラを身体能力強化に使ったわけか……ガッカリだよ」

 

「……は?」

 

「さっきからずっと思ってたよ。この部屋はお前のオーラで満たされてる……なのになんで俺を圧縮しないんだ。まさか、入中のオッサンが地面に落ちた俺を回収すると思ってんのか?」

 

コンプレスは呆れた態度を隠そうともせず、淡々と言葉を重ねていく。

 

「お前……合宿の時に俺に宣言したよな?俺に認めて貰うって……今この状況でお前のどこを認めればいんだよ」

 

「……」

 

「お前……割り切った気でいるけどよ……まだ圧縮使うのに毎回覚悟してるよな?」

 

「……ッ!?」

 

「図星か……大方、圧縮を使う度に俺(張間歐児)がチラつくんだろ?……自分も俺たちと同じになるかもしれないってビビってるんだろ?」

 

「甘ェよ……それが俺を捕まえるだ!?いい加減にしろよハル!!」

 

コンプレスの速度が一気に上がり、腹に重い一撃をもらってしまう。

オートバリアが上手く展開されない。

 

「おいおい……図星突かれて“個性”にまで影響でてんじゃねぇかよ!」

 

コンプレスの言葉に僕は動けなくなった。

心の底で無意識に思っていたそれを言葉にされて、頭が上手く回らない。

 

「ほらほらほら!!もうギブアップか!?」

 

顔を腹を何度も何度も何度も殴られる。

 

「ハル!!」

 

腰の入った重い一撃が頬を打ち抜いた。

何本か折れた歯が血ともに宙を舞い、僕は地面を転がって壁にぶつかる。

地面を転がった拍子に、腰のケースからヤクザの『ヒトプレス』が放り出される。

 

「……なんだこれ?……あぁお前の圧縮か……これも、人の状態を見るとか何とか理由つけて圧縮した結果だろ?…………おい、見ろよハル」

 

「……や、やめ……ろ!」

 

「これがお前が忌避した“圧縮”の使い方だ」

 

コンプレスが手に持った三つの『ヒトプレス』の上半身が一瞬で無くなった

 

「ほらよ」

 

コンプレスの足下にビー玉が転がる。

下半身だけになった『ヒトプレス』を床に投げ捨て、僕に見せつける。

 

「お前が躊躇したからコイツらは死んだ。お前がしくじったから死んだんだ……ヒーローは辛いよな?守るものが多くて…………あ、お前は何も守れなかったか!!」

 

「う、う……うぁ……ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」

 

僕は叫んだ。

僕は吐いた。

僕は呪った。

僕は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の敵を殴った。

 

コンプレスの仮面が砕け、地面を転がり壁に激突する。

 

「コぉンプレスぅ!!俺はお前を許さない!!!」

 

「ハナから許してもらうつもりはねェよ!!」

 

《インファイトスタイル》

 

口に溜まった血を吐いて、コンプレスを殴る。

コイツは……敵だ。

ずっと前からわかっていたことだ……なのに家族だから最後の一歩が踏み出せなかった……それは僕の罪だ。

 

「またそれかよ!!」

 

コンプレスは圧縮した瓦礫を放り投げ、即席の足場にすると距離を取りながらヒットアンドアウェイに努めている。

 

パルクールで瓦礫の上を飛び移りながら、こちらの出方を伺っているけど……

 

「遅せェよ!!」

 

それは僕の十八番だ。

 

瓦礫を足場に、一気に距離を詰めてぶん殴る。

血を吐きながらコンプレスは背を床に叩きつけた。

 

「はぁ……はぁ……酷いことするなぁ」

 

「お前には負けるよ」

 

「……なら、タイマンは終わりにしようか」

 

コンプレスはそういうと床にビー玉をばら蒔いた。

ビー玉は光ると、圧縮されていたモノが元に戻り、その姿を露わにする。

 

「……この人達ッ!?」

 

足(・)を(・)失(・)っ(・)た(・)ヤクザ達が倒れていた。

 

「痛ェ……助けてくれ」

 

「足がァ……俺の足が……!」

 

「敵連合ゥ……ふざけんなよォ……」

 

「お前がやったのか……?」

 

「あぁそうだ……お前を殺すためにな!さらにこいつを追加だ」

 

ヤクザの近くにビー玉を落とすと、ソレは合宿で見た小型の脳無に戻る。

小型脳無はゆっくりとヤクザ達の方に近づいていく。

 

「コイツは合宿の時にお前に使った群体型脳無……その改良型さ」

 

「改良型……?」

 

「コイツには“増殖”って“個性”を持ってる……タンパク質やカルシウムみたいな人体に必要な栄養素を摂取し続けることで、ほぼ無制限に増殖できる」

 

「ヒッ!?た、助けてくれェ!!」

 

「嫌だ!!死にたくねぇ!!」

 

「く、来るな!来ないでくれ!!」

 

「ッ!!」

 

「だよな?……お前は助けるよな!」

 

コンプレスは僕がヤクザに目をやった瞬間に接近して、何かを刺そうとする。

 

今度はオートバリアを展開して、コンプレスの攻撃を防御できた

 

「忘れたのかよ?俺の“圧縮”は成長してんぞ」

 

オートバリアが圧縮され、左手首に何かが刺さった。

無茶動き方をしたのかバランスを崩したコンプレスを、勢いよく蹴り飛ばし、左手首を見る。

 

赤い特殊な形の弾丸が刺さっていた。

 

「これは……!」

 

「“個性”破壊弾……その完成品だ!これでお前は無個性だ!!」

 

コンプレスから伝えられた事実に僕は驚愕する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……左腕を圧縮し切り離した。

 

サー・ナイトアイ達との会議で、破壊弾について情報を整理しといて良かった。

やっぱり全身に回るまでにラグがあったみたいだ。

 

「ッ!?」

 

《バリアブルスマッシュ》

 

コンプレスごと小型脳無を吹き飛ばし、ヤクザ達の前に立つ。

ビチャビチャと夥しい量の血液が、コンクリの地面を赤く染め上げていく。

予想通り弾の中身が全身に回る前に、その部位を切り離せば“個性”は使えるっぽい。

 

「……痛ってェ……マジシャンの命を簡単に捨てていいのかよ?」

 

コンプレスは体(・)が(・)泥(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)溶(・)け(・)な(・)が(・)ら(・)僕の無茶に苦言を呈す。

 

「……それで……この人達に罪を償わせるなら……お釣りがくるね……!」

 

肘から上が無くなった左腕にワイヤーを巻き付け止血をしながら、コンプレスに答える。

 

「本当に……愚かだよ……脳無!そこに餌があるぞ!!」

 

僕が圧縮で切り飛ばした腕に小型脳無が貪る。

 

「しまッ!?」

 

「生きてたらまた会うな……ハルゥ…………」

 

コンプレスはそう言い残すと完全に泥になった、それと同時に小型脳無の体がボコボコと膨れ上がる。

大きく膨らんだ背中から、数匹の小型脳無が産み落とされる。

産まれたばかりの小型脳無は、母胎となった脳無群がり、また個体を産み落としていく。

 

「…………ッ!!」

 

血の匂いにつられたのか、小型脳無の群れが僕らに襲いかかってきた。




補足

コンプレスがオリ主に刺した“個性”破壊弾は完成品と言いましたが、本当は死穢八斎會との抗争で圧縮した試作品です。
オリ主の動揺を誘うために、あえて完成品と嘘をついた。
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