「「「「「ギィギギギギィ!!」」」」」
沢山の小型脳無が僕らに向かって襲いかかる。
《バリアドーム》
僕とヤクザ達を覆うようにバリアを展開して、小型脳無から身を守る。
これで少しの間、時間が稼げる。
僕はヤクザ達に近づき、腰のケースから圧縮していた救急箱を取り出した。
「皆さん……これ鎮痛剤です……」
「わ、悪りぃ……」
「若ぇの、助かった……ありがとよ」
「ありがとう……ありがとう……」
「いえ……すみません……応急処置は……」
「あ……お前ら足こっちに向けろ」
左腕を失った僕を見て、ヤクザたちは自分たちで応急処置を始めた。
バリアで時間稼ぎは出来たけど、増殖した小型脳無を何とかしないと、ここから出られないし緑谷くん達も危険が及んでしまう。
「若ぇの……腕見せてみな」
「え?」
「その腕じゃ自分の傷も治せねぇだろ?」
「……ありがとうございます」
「お互い様だ……」
ヤクザに応急処置をして貰う。
「……アンタらに聞くのも変なんだけどさ……なんで抵抗したの?……確かに、アンタらも捕まるし罪を償わなきゃいけないかもだけど……治崎やその他幹部と比べれば……まだマシじゃない……?」
こんな窮地に立たされて変な絆を感じた僕は、手当てしてくれているヤクザになぜ抵抗したのか聞く。
「……自分から捕まりに行くアホなんていねぇよ……だが、大人しくしてたらオーバーホールに殺されちまう」
「……オーバー……治崎のことだよね」
「あぁ……組長が倒れて実権を手に入れてから使うようになった名だ。組長は昔気質の極道を重んじた……この時代にあって極道が生きる道を模索していた」
「あ、兄貴……」
「いいんだよ……俺たちを助けてくれたんだ……話してやんなきゃ筋が通らねぇ」
「……俺たちは組長に惚れたんだ……断じてあんな奴じゃねェ……!敵紛いな名を名乗るようになって……組の意向に沿わねェシノギに手をつけて……やりたい放題しているアイツなんて……!」
「その割には治崎が捕まるって思わないんだね……」
「あぁ……正気じゃねェってのは後先考えねェ人間のことだ……そういう人間はな強えんだよ」
「……そっか」
「ついでだ……あの仮面野郎とお前……なんか因縁あんのか?」
「……叔父だよ」
「……ッ!?……悪りぃ」
「気にしなくていいよ……」
「……よし!終わったぞ……どうだ?」
少し気まずい空気が流れたけど、応急処置が終わりこの状況をどうするかに切り替わった。
「……さてと、ここから脱出しようか」
「お、おい……正気か!?あんだけうじゃうじゃいんのに!?」
「あなた達は必ず助けます……失礼します!」
「ちょっ!!?」
ヤクザ達を『ヒトプレス』にして、上着の中にしまう。
コンプレスが圧縮で人を殺すところを見たせいで、圧縮を使う自分に嫌悪感から吐きそうになるが、こみあがってきたものを無理矢理飲み込み深呼吸する。
これは守るため……守るため……守るためだ……!
「……」
小型脳無をどうするか……ここにいる奴らを全部圧縮できるかどうか……何体かに噛みつかれはするだろうけど可能かな。
「バリアブ……ッ!?」
小型脳無を何とかするために立ち上がッた瞬間、体から力が抜ける。
目の前のバリアがゆっくりと崩れていく。
頭が重い……視界が安定しない……血を流しすぎたか……。
バリアは僕が意識を失えば維持できなくなる、幸い圧縮したものは僕が解除するか死ぬまで元には戻らないから……ヤクザ達はもう少し長く生きられると思う。
切奈……トガちゃん……母さん……父さん……姉さん達……皆…………ごめん。
僕の意識がゆっくりと落ちていく。
壁が壊れる音がした。
同時刻
「ファット!!?」
ファットガムが、敵に一方的に殴られ続けている。
俺は目の前の光景を見て、現実ってやつを痛感した。
敵の“個性”で、ハルみてェに壁に飲み込まれそうになった相澤先生を、助けようと飛び出した俺は、ファットガムと一緒に別の部屋へ連れていかれた。
そこで二人の敵と対峙した俺は、敵の拳を“硬化”で防御した。
俺の“硬化”は敵に通用しなかった。
敵の拳を逆に砕く勢いで防御したのにも関わらず、俺は壁に叩きつけられて、“硬化”した腕は割れた。
……倒れねーってのはクソ強ェだろ……
俺は強くなった気でいた。
俺はまた……。
「
ファットガムが俺を奮い立たせる。
それでも……足が動かない。
あの時と同じだ。
中学の時と同じ……俺は変わってねぇ……。
……ん?僕が凄いって?……
……あぁ、防御力も機動力も……何もかも俺と比べてハルはすげェよ……
……そんなことないよ……
……謙遜すんなよ……事実だろ……
……なら、僕のバリアを破れるように特訓しよ!……
……は?……
……切島くんの“個性”は打てば打つだけ硬くなるでしょ?“個性”伸ばしでも、そんな感じで伸ばしてたよね……
……お、おう……そうだけど……
……なら付き合ってあげる!やってみようよ!……
……いいのかよ、そのA組最強の防御力的なのとか……
……それって誰かを守るために必要?そんなちっぽけな称号なんていらないよ、それよりも切島くんがより多くの人を守れるようになった方がお得じゃない?……
……ハル……
……爆豪くんも言ってたでしょ!倒れないってことはクソクソ強いって!なってやろうぜ
そうだ……ハル……俺はおめェが認めてくれた最硬の漢!
こんなところで立ち止まってたら……おめェに顔向け出来ねェよ!!
「乱破!!そいつ何かを企んでいる!早く仕留めろ!!」
「気になる!!生きていたら披露してくれ!!」
ファットガムがヤベェ……!!
行け!俺は烈怒頼雄斗!!硬化の漢だ!!!
俺はファットガムの前に立ち、敵の拳を全身で防御する。
強烈な連打が全身を襲う。
さっきは吹っ飛ばされたけど、もう飛ばされねェ死ぬ気で踏ん張って耐え続ける。
硬化した体が拳を食らって割れるが、それ以上に硬めて対応していく。
絶対に折れねェ……!!
「おまえ!!!良いな!!!」
敵のラッシュが止まる。
ここしかない、俺の全部をここでぶつける!!
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
もう一人の敵が“個性”で
「バリアは!」
「出すに決まってるだろう」
おあつらえ向きじゃねェか……ハル!!
「
俺の拳がバリアを打ち砕く!!
やったぜハル……俺、最硬に近づけたかな……?
「莫迦なッ!?」
「次くるぞ!!」
「切島くん……ようやった!!」
「おかげでええ矛になったわ!!」
「敗因一つや!!あまく見とった!!俺も!!!お前らも!!」
「最大最硬防御ッ「無駄だ割られる」ッ!!?」
「烈怒頼雄斗っちゅうヒーローの」
「漢気を!」
凄まじい衝撃が部屋を轟かせる。
ファットガムの拳が敵達をフッ飛ばした。
「ホコタテ勝負……こっちの勝ちや!!」
地下空間のコンクリに入り僕らを邪魔し続けた入中。
八斎會と何故か協力していた敵連合のコンプレスとトゥワイスを退けて……先に向かっていた通形先輩と合流した。
リューキュウ達、警察の皆さん、天喰先輩、ハルくん、ファットガムと切島くん、ロックロック……皆の思いを背負って、ついに治崎と対峙した。
通形先輩は、僕たちがここに来るまで、たった一人で治崎と側近三人を相手にして、エリちゃんを守り続けた。
本当に凄い人だ。
……でも
「悲しい人生だったなルミリオン……壊理に……俺に関わらなければ」
「“個性”を永遠に失うこともなかった。病に患ったままでいられた」
状況はハッキリ言って良いとは言えなかった。
治崎の“個性”を封じていた相澤先生が、敵の奇襲で無力化されどこかへ連れて行かれた。
“個性”が使用できるようになった治崎は、仲間と自分を『分解』して『治す』……四本の腕を持つ怪物に変わった。
そして……通形先輩が“個性”を失った。
「失って尚粘って……そしてその結果、
四つの腕で地面に触れた治崎は、地面を壊し作り替えた棘で僕らを殺そうとする。
僕は尖った岩を蹴り壊し治崎にぶつける。
治崎は腕の一つで触れて壊すと、岩を作り替えて僕を貫こうとする棘から、足に装備したアイアンソールで身を守る。
速すぎる……アイアンソールじゃなきゃ貫かれてたぞ。
「力と速さ……それだけだ」
直前まで負っていた傷と、通形先輩との戦いで消費した体力まで回復している。
「こいつの相手は私がする!貴様はルミリオンとエリちゃんを!!」
サー・ナイトアイのサポートアイテム《超質量印》を投げつけて、治崎の腕を一本へし折る。
「了解です」
続けざまに複数個の印を投げつけ、更にもう一本使えなくする。
僕は、サー・ナイトアイと戦闘を代わりエリちゃんと通形先輩の元に向かう。
「イレイザーをどこへやった、側近もいないのは?」
「“個性”を消すヒーローには興味があるんでね、VIPルームに案内しといたよ」
「他人の“個性”を壊し浸っている人間が、“個性”を消されるのを恐れているのか。永遠というのは『銃弾』は“完成”していて……ルミリオンに使用した……ということか……それを隠す為に、コソコソとしていたと思っていたが……」
「よっぽどルミリオンが恐かったか!?」
「どけ」
腕を治した治崎がサー・ナイトアイに攻撃を仕掛けるが、流石は通形先輩の師匠だ。
凶悪な“個性”を持つ治崎の行動を、予測して回避し的確に攻撃を食らわせている。
僕は岩から岩へと飛び移り、エリちゃんと通形先輩の目の前に着地する。
「エリちゃん!!先輩!!動けますか!?」
「……あぁ……!……余裕…………だよね……!!………………結局……悲しませてしまった」
「ッ…………移動します!」
治崎との戦闘で“個性”を失い……どれだけの時間戦っていたのだろうか。
……通形先輩はボロボロになりながらも、エリちゃんをこれ以上悲しませないように、気丈に振る舞おうとする。
「……さっきので防がれてたけど、僕らが通ってきた通路です!治崎と距離を置かないと……少なくともここよりは安全です」
エリちゃんと通形先輩を庇いながら、壁に近づくと“OFA”で強化した足で壁を蹴り砕き脱出する。
「もう……いいです……」
エリちゃんがか細い声で涙を流し始めた。
「ごめんなさい」
僕は何も言えなかった。
「…………サー!!!」
通形先輩が叫んだ。
僕は振り返る。
治崎の生成した棘が、サー・ナイトアイの体に突き刺さろうとしていた。
……間に合わない。
ここからあそこまで、どれだけ頑張っても先に棘がサー・ナイトアイに突き刺さってしまう。
僕も先輩も……サー・ナイトアイを救けることができない。
ガッキン!!?
部屋にそんな音が響いた。
硬いもの同士がぶつかり合う音。
僕は恐る恐るサー・ナイトアイの方に目を向ける。
サー・ナイトアイの体の周りを
「ごめん……遅くなった」
後ろから声が聞こえる。
明るくて、親しみやすい声だ。
「緑谷くんが……壁を、壊してくれて……助かったよ」
僕が壊した壁から誰かが近づいてくる。
「おかげで……間に合った……みた、いだね……」
「ハ、ハルくん……?」
「う、ん……そうだ、よ……」
筋肉質な巨漢に背負われながら、僕の友人……張理有ハルがそこにいた。
「もう大丈夫……僕たち、が……来た……!」