今日もいつも通り学校に行き、授業を受け、放課後にパトロールをしていた。学校で仁美から話を聞いた所、どうやら上手く行ったようだ。あのヴァイオリン馬鹿が仁美のことを気にかけてくれて良かった、と言ったら少し複雑な顔をされた。
最近は町中をかなり歩いても魔女を見かけないなんてこともある。
ただ、魔女を減らしても目の届かない所に潜んでいるのか、使い魔の数はあまり減ったように感じない。
グリーフシードは蓄えてあるので魔女を狩れなくても平気ではあるのだが…。
使い魔を倒し終えた所で丁度俺の電話が鳴った。
「もしもし。」
「さやかちゃん、仁美ちゃんが、仁美ちゃんが……!」
電話に出るとまどかが切羽詰まった声で訴えかけてきた。
「落ち着いて。仁美に何かあったの?」
「様子がおかしくて後をついていってたんだけど、首の所を良く見てみたら魔女の口づけがあって……。」
魔女の口づけ。それは魔女が獲物を誘導するためにつけるマーキングの様なもの。人間の負の感情を増幅させ、やがて自分の餌にするためのものだ。急がないと仁美が危ない。
電話を繋いでもらったまま仁美を追ってもらい、場所を報告してもらいつつ急いでまどかのもとに向かった。
辿り着いたのは町外れの廃工場だった。中へ入っていくと仁美の他にも魔女の口づけによって操られたであろう人たちもいた。皆同じドアの前に立っていて鍵がかけられたであろうそれをこじ開けようとしている。
恐らくあの中にまどかがいるのだろう。操られた人たちを傷つけないように制圧し、ドア越しに声をかける。
「まどか、大丈夫?」
「さやかちゃん!うん、大丈夫だよ。」
鍵を開け中からまどかが出てくる。無事で良かった、と思ったのも束の間、魔女の結界に飲み込まれかけようとしていた。
間一髪でまどかの手を掴みこちらに引き寄せる。辺りはあっという間に結界に包みこまれてしまった。
すぐさま戦えるように変身する。マミさんとほむらも変身した。俺の剣とマミさんのリボンで簡易的にまどかを守る結界を作った。
「まどかはそこで待ってて。すぐ片付けるから。」
「う、うん。気をつけてね。」
剣を作り出し相手に向かって行く。今回は珍しく最初から魔女がいてこちらに使い魔を差し向けて来た。それを次々と斬っていく。一体一体はあまり強くないが数が多い。マミさんとほむらもいるおかげで手数が足りないということはなく、こちらに向かってくる使い魔をそれぞれ剣やら銃やらで対処しつつ割とあっさり本体へ近づけた。
本体はすばしっこく俺の斬撃をのらりくらりと躱し、マミさんやほむらの攻撃も躱している。
そうこうしていると、突如テレビの様なパソコンの様な魔女の画面にある映像が映し出された。
―――俺の前世の姿だった。
よりにもよって死ぬ直前のショッキングな映像だ。皆の動きが一瞬止まる。
続け様に今度は今世で恭介を庇った件の事故の映像が映った。
あまりの出来事にまたもや動きが止まったが、すぐさま気を取り直す。
そのまま魔女へ一直線に向かい、あの映像を見せてくれたお礼と言わんばかりの特大の一撃を打ち込むと結界と共に消滅していった。
魔女を倒した後、しばらく周囲は沈黙に包まれていた。
やがてマミさんが口を開いた。
「今の映像ってもしかして美樹さんの記憶、なの?」
「……そう、です。」
いつかは話さないといけないとは思っていた。
「美樹さんが事故に遭ってその怪我を治すために魔法少女になったのは知っているけど、その前の映像って……。」
誰にも話したことがない。
拒絶されるのが怖くて。
今まで築いてきたものが壊れる気がして。
だけど……
きっと皆なら受け入れてくれる。
そう思って勇気を出して話し出した。
暁美ほむら
美樹さやかの口から告げられたのは信じられない事実だった。
実は自分は転生者だと言うのだ。私たちの居る世界とは別の世界からやってきたらしい。
信じられないけど、どこか納得もした。
今までの美樹さやかとは違うと感じたのはそれが原因だったのだろう。そう思えば不思議では無かった。
「……ごめんね。今まで秘密にしてて。皆にこんなこと言っても信じてもらえるか、受け入れてもらえるか心配で言えなかったんだ。」
そう言う彼女の瞳には涙が溢れていた。彼女も私と同じで人に言えない秘密を持っていて苦労があったのだろう。
「安心して。ここにいる皆あなたに助けられてきたんだからあなたのこと信じるに決まっているでしょう。」
そう巴マミが告げた。
「見た目も性別も違うし、別の世界から来たっていうのも驚いたけど、中身は私たちの知ってるいつものさやかちゃんなんでしょ?」
「そ、そうだけど……。」
「だったら大丈夫。私もさやかちゃんのこと信じるよ。」
巴マミに続きまどかもそう告げる。
「私もあなたを信じてる。例え姿が違ってもあなたはあなた。私たちの知っている美樹さやかよ。だから、その、信じるわ、あなたのこと。」
私も彼女に助けられた。銃を向けられたにも関わらず私に寄り添ってくれた。彼女を信頼する理由はそれで十分だ。
「……ありがとう、皆。ほんと、に、ありがとう。」
涙を零しながら美樹さやかはそう言った。そんな彼女を皆で抱きしめてあげた。
大丈夫よ。例え誰にも信頼されなくなっても私たちはあなたの味方だから。
ずっと、ずっと。
ちょっと順番が違うけど先にハコの魔女を済ませました。
今回のこれがやりたかっただけです。