入院してから数日、学校から帰ってきたまどか達がその日あった事を話しに来るのが日課になっていた。恭介は俺を怪我させた事に責任を感じているのか、ずっと暗い顔のままだ。俺は気にするなと言っているのだが気にしたままだ。
そんな中医師から俺に衝撃の事実が伝えられた。
「非常に申し上げにくいのですが、腕の回復は絶望的かと思われます。」
一瞬何かの聞き間違いかと思った。だがそんなことは無かった。
続け様にこう告げられた。
「もし手術を行ったとしても成功する確率は極めて低いかと…。」
流石の俺もこれには堪えた。時間が経てばいずれ何とかなると思っていた。けど、突き付けられたのは腕が治る可能性は低いという残酷な現実だった。
「それでね……ってさやかちゃん、聞いてる?」
まどか達の話も入ってこない。心の中にはこれからどうすれば良いんだという不安が渦巻いていた。
「今日顔色悪いよ?何かあったの?」
こんな事言ったってどうにもならない。……だからって友達に隠し事するのは良くない。俺は意を決して言うことにした。
「……実は、もう腕は治らないかもって言われちゃって…。」
上条恭介
僕の所為だ。さやかが怪我をしたのも、その怪我が治らないかもしれないのも、全部僕の所為だ。
「……嘘、だよね…?」
まどかも仁美も信じられないといった感じだ。僕だって信じられない、いや信じたくない。でも、さやかが嘘をついている感じはしないし、そもそもそんな嘘をつくような奴でもない。
「ごめん、さやか。僕なんかを庇ったせいで…。」
「いやいや、気にすんなって。俺がやりたくてやったことなんだから。それに今は無理でもいつか治るかもだろ!だからそんな暗い顔すんなって!」
さやかはそう言うが、僕もまどかも仁美も沈んだ気分のままだった。いつか治るって言ったっていつ?下手をすれば一生治らないかもしれない。
なんでさやかがこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
美樹さやか
その日の夜、俺は中々寝付けなかった。皆にはちょっと強がってみたけど、やっぱりショックだった。でも大事な友達を守れたと考えれば安いもんだ。そうは思いつつも思う所が無いわけではなくて…。
そんな事を考えている俺に白い影が忍び寄ってきた。
「やあ、美樹さやか。その左腕を治したくはないかい?」
見てみるとそこには犬とも猫とも兎ともつかぬ不思議な白い生き物がいた。
その姿を見て、突如前世のある記憶がフラッシュバックしてきた。
今俺の目の前にいるこの白い生き物は魔法少女まどか☆マギカというアニメに出てくる言わばマスコットキャラクターらしい。
らしい、と言うのは実は俺はこのアニメを見たことがない。いかにも子供向けの様なタイトルをしているがその実鬱アニメらしいと知り、視聴を断念した。
俺は鬱アニメに耐性がない。耐えられるとしてもイナ◯マイ◯ブン2とかそこら辺が限界だ。
そんな俺の知識は先程言った物と俺の友達でもあるまどかが主人公であること。そして、暁美ほむらという人物が物語の鍵を握っているということしか知らない。
そんな訳でコイツがどんな話を持ちかけてくるか俺は警戒していた。
「お前は?」
「僕の名前はキュゥべえ。僕と契約して魔法少女になれば、その腕を治すことができるよ。」
なるほど。つまり契約して魔法少女になる代わりに何か願い事を叶えてもらえるシステムということか。
「魔法少女になるとどうなるんだ?」
「魔女と戦うことになるよ。」
「魔女?」
要するに敵みたいな奴、という感じか?
「魔法少女が希望を振りまく存在なら魔女は呪いを振りまく存在。自身の結界に人間をおびき寄せ殺してしまう。しかも普通の人間には見えないから質が悪い。」
そんなヤバそうな奴と戦う羽目になると…。でも、もし本当に腕が治るなら契約する価値はある。また普通の生活を送れるし、それに皆が悲しまなくて済む。
「分かった。俺魔法少女になるよ。」
「さぁ、美樹さやか。君の願いを言うんだ。」
「俺の腕を治してくれ。」
こうして俺は魔法少女の契約を結ぶことになり、そして魔女との戦いに身を投じることになった。