学校が終わり放課後、俺とまどかは近くのショッピングモール内のフードコートで話をしていた。話題になっているのは件の転校生ことほむらだ。
運動も勉強もできておまけに美人、まさに才色兼備の転校生だ。今日の俺のクラスの話題はもっぱらほむら一色だった。
「謎の転校生って感じでミステリアスだよね。」
「うん、そうだね…。」
ほむらの話題になるとまどかは少し困惑しているような表情になる。朝に何か言われたからかな?
「もしかしてあの転校生に何か言われた?」
「えっと、それもあるんだけど…。どこかで会ったことあるような気がして…。」
「どこかって?」
「……変かもしれないけど、夢の中で会った、ような…。」
夢の中か。何というかロマンチックだ。
「案外勘違いじゃないかもよ?もしかしたら前世の因縁とか。」
「もう、冗談やめてよ。」
俺としては真面目に言ったんだけどな。何せ1回転生を経験した身としては前世があってもなんら不思議ではない。それが夢に出てくるかどうかは別の話だが。
ほむらについての話も終わり、折角ショッピングモールの来たのだから何か買って帰ろう、と俺達は近くにあったCDショップに寄った。
ヘッドフォンをつけ、サンプルを視聴する。俺の好きな曲はもちろん明るい曲だ。テンションが上がって元気になれるからたまに聴いている。しばらく音楽を聴いているとまどかがフラフラと店の外へ出て行ってしまった。
……いや、何してんの?
俺は慌ててまどかの後を追った。
まどかが向かったのは立ち入り禁止の看板がある廃虚の方だった。奥の方へ進んで行くとすぐに見つけられた。
ボロボロのキュゥべえ、ほむらと一緒に。
……?
状況を整理しよう。何が起こったんだ?
考えられるのはほむらがキュゥべえを攻撃してキュゥべえがここに逃げ込んで偶然そこにまどかが来たというものだが…。
何でキュゥべえを攻撃したかが全然分からん…。願いが正常に叶えられなくて不手際を起こした、とか?それで恨みを持ったから…。
だとすると怒るのも分かる。たった1回の願いを叶えられるチャンスを無駄にしたのだから。
何はともあれ、穏やかそうな雰囲気では全然無いので、まどかを守る形で前に立つ。
「さやかちゃん!」
俺が来てまどかは安心したような表情を見せる。対してほむらは険しい顔のままだ。
「また来たわね美樹さやか。邪魔をするつもりかしら?」
よく見るとほむらの衣装は制服から少しオシャレな私服のようなものになっていた。やっぱり魔法少女なのは確定のようだ。俺の考察も当たってないかな。
「待って待って、一旦落ち着いて。話し合おう、ねっ?」
「私は冷静よ。」
全然そうは見えん。こっちに向ける視線が学校の時と違いすぎる。下手したら魔女より怖いよ。
次の言葉も発せないまま沈黙が続く。気まずい空気が流れていたその時、突如周囲の空間が歪み始めた。
「な、何!?」
「こんな時に…。」
2人ともそれぞれ反応する。俺としてもこんな時に来て欲しくなかったよ。
「説明は後よ。2人共私の側から離れないで。」
しばらくすると完全に結界に取り込まれた。何も知らないまどかは酷く恐怖している。
「私、悪い夢を見てるんだよね?」
「大丈夫、ここは俺に任せて。」
まどかを安心させるため優しく声をかける。
「ほむら、ここは一緒に戦おう。」
「一緒にって、あなた、まさか!?」
出来ればまどかは巻き込みたくなかった。魔法少女の世界は危険だから。でも、せめて、俺の手でまどかを守ってみせる。
ソウルジェムを使い変身し、青い甲冑に身を包む。
迫りくる使い魔を次から次になぎ倒していく。マミさんと一緒にパトロールしたおかげか俺の実力も上がっていて容易く使い魔を殲滅出来るようになっていた。武器も二刀一対の双剣に変化させていて、合体すると大剣になる仕様だ(マミさん考案)。
器用に得物を使いこなし最後の使い魔も斬り捨てる。結界は消え、無事元の場所に戻ってこれた。
一緒にと言ったけど、ほぼ1人で倒してしまったが、まぁ、ヨシ!
「まどか、大丈夫?」
「あ、ありがとう、さやかちゃん。」
俺が手を差し出すとまどかはおずおずとその手を握る。なんか目が輝いていた気がする。
「美樹さやか、あなたはどこまで愚かなの?」
一件落着と思っていたらほむらが声を上げた。
「自分が何をしたか分かっているの?」
「分かってるよ。その上で魔法少女になったんだから。」
「いいえ、何も分かってないわ。後悔しても知らないわよ。」
そう言うとほむらは何処かへ消えて行った。どういう意味なんだろうさっきのは?追いかけたいけど一先ずまどかとキュゥべえをどうにかしないと…。
「2人共、大丈夫?」
そう思っている所にマミさんがやってきた。ナイスタイミングだ。取り敢えずまどか達のことはマミさんに任せよう。
「大丈夫です。悪いけどマミさん、後お願いします!」
「ちょっと、美樹さん!」
マミさんの静止を振り切り、俺はほむらを追いかけた。
暁美ほむら
まさか美樹さやかが既に契約していたとは…。
帰り道、つい先程のことに考えを巡らせる。もう彼女のことは諦めた方が良いかもしれない。
彼女が契約した時間軸では彼女が魔女になるのは逃れられない運命だった。どうせ今回も魔女になるに決まってる。
どうせならいっそこの手で…。
「ほーむらー!」
そう思っていると当の本人がやってきた。丁度良い今ここで始末しておこう。こっそりと魔法少女に変身出来るように身構えておく。
「丁度良かった。あなた、私の力になりたいと言っていたわね。」
「!もしかして、その気になった!?」
「もし、あなたが死ぬことが私の為になったら、あなたはどうするの?」
そう言い放つとすぐさま変身し、美樹さやかに銃を向ける。さすがに彼女も驚いたようだ。
「な、なんで…?」
酷く困惑した様子の彼女は私に問いかける。
「まどかを守る為にはあなたが邪魔なの、魔法少女としてのあなたが。あの子を悲しませるくらいならここで殺してあげるわ。」
他の時間軸の美樹さやかとは違うと少しでも思った私が馬鹿だった。彼女はいつだって思い込みが強くて好きな人に告白もできないままだった。
だけど、彼女は予想外の行動に出てきた。
変身もせずにこちらに向かってきたのだ。
「何のつもり?」
冷静に装おうとしているが内心では動揺している。魔法少女の真実を知らないのならこんな事はしないはずだ。
まさか知っているとでも言うのか?
「俺が死ぬのが君の為になるなら死ぬかもね。でも、まだ死ぬ訳にはいかない。俺には大事な友達と先輩がいるんだ。その人たちの為にも死ねない。それに…。」
「君が苦しんでる顔してるから。」
……は?
そんな筈はない。かつて親友すらも手にかけたことがあるのだ。あなたを殺すくらいどうってこと…。
そう、思っている筈なのに…。私の手は震えていた。
そうか。本当は怖かったんだ。諦めたつもりでいても周りの皆を失うのが。
気付いてしまってからはまともに銃を構えることすら出来なくなった。心なしか視界もボヤケて見える。
「今まで良く頑張ったね。でも、無理しなくていいんだよ?誰も君を責める人なんていない。いたら、俺が許さない。」
彼女の温もりに包まれる。人肌の温かさを感じるのは久しぶりで、私は彼女の腕の中で目一杯泣いた。