モモイ「…はぁ…はぁ…」
モモイは怪我を庇いながら、人気のない路地で天を見上げる。
アリウスの追っ手から逃げるうちに、仲間とははぐれてしまった。これからどうすれば…。そう思案に暮れていると、少し先から足音が聞こえた。
一人の足音。されど警戒は緩めずに、モモイは足音のした方に躙り寄る。
やがて、その足音の正体が姿を現した。
ミドリ「お姉ちゃん…!」
モモイ「…ミドリ…?」
何故ここに?と、モモイが疑問の声を発するよりも先に、ミドリはモモイに抱きついた。
ミドリ「また会えた…お姉ちゃん…」
今にも泣き出しそうな声色で、絞り出すようにミドリは零す。
モモイは、何も言わなかった。正確には、言えなかったのかもしれない。ただ、体は勝手に動いていた。
モモイの手が、そっとミドリの頭に触れる。そのままモモイは、ミドリを優しく撫で始めた。
ミドリのことは、また思い出せてはいない。それでも、こうしていると…どこか安心感を覚えて─
アリウスA生「そっちはいたか?」
モモイ「ッ!」
遠くからそんな声が聞こえた。
モモイ「…ミドリ」
ミドリ「?」
この子と私とでは、生きる世界が違う。
見捨てて逃げるべきだ。しかし─
モモイ「…逃げるよ」
魂は、それを否定した。
───────
一方その頃。サオリたちはヴェリタスの部室にてミドリの行方を追ってもらっていた。
ハレ「…うん。どうやらミドリはトリニティにいるみたいだよ」
マキ「トリニティから誰かに連絡したみたいだね」
サオリ「誰に連絡したかはわかるか?」
ハレ「多分先生だね。コタマ先輩の盗聴器からも、ミドリからの連絡に応答したっぽい音声が残ってるよ」
ミドリが既にトリニティにいることに加え、ミドリが先生に連絡を取っていることがわかった。
アリス「アリスたちが連絡しても出なかったのに…」
サオリ「それほど切羽詰まった状況なのかもしれない。私たちもトリニティへ向かうとしよう」
マキ「くれぐれも無茶はしないでね!?」
サオリ「…肝には命じておくさ」
───────
─それからしばらくして、先生はミドリからの連絡を受けトリニティへやってきていた。
“…モモイ”
モモイ「先生…?なんでここに?」
“ミドリから連絡が来たからね”
モモイ「………そっか…」
ミドリが心配そうに見守る中、考え込んだような表情を見せたモモイ。やがて顔を上げると武装を一つずつ地面に置いていく。そして、モモイは先生の前に跪いた。
モモイ「…先生。姫が…アツコが、連れ去られた。このままじゃアツコが、殺されちゃう…!あんなことをしておいて、こんなことを頼むのは…虫がいい話だなんてことはわかってる。いくらでも蔑んでも、罵ってくれてもいいから…!だから…ッ!」
話すにつれて、その震える声と一緒に涙が地面に落ちる音も激しくなる。
モモイ「アツコがいなくなったら…私は…!だから…!!」
“わかった”
断る選択肢は、なかった。
ミドリ「先生!」
“うん、助けに行こう!”
モモイ「…本当に…?…力を…貸してくれるの…?」
力強く頷く先生。モモイはしばらく呆気に取られたが、涙を拭うと大きな呼気を吐いた。
モモイ「先生。これを」
“これは?”
モモイ「ヘイロー破壊爆弾のスイッチだよ。私のこと、少しでも信頼できなくなったら…スイッチを押して」
ミドリ「お姉ちゃん!?」
モモイ「…これでいいんだよ。ミドリ」
モモイは自然とミドリの頭を撫でる。そんな光景を見て先生は少し微笑むと、ヘイロー破壊爆弾のスイッチを踏み潰して粉々に粉砕した。
モモイ「あっ!?」
それをゴミ箱に捨てた先生は、何一つ迷いのない顔をしたままモモイに笑いかける。
“まずはみんなを探しに行こう!”
ミドリ「はい!」
その先生の行動に、モモイは若干呆気に取られていたのだった。