ミサキ「どうするの?リーダー」
モモイ「他の入口を探してる時間はない。とはいえ、私たちが知ってるルートは当然マダムもそこを使うと予測してくるはず」
ヒヨリ「だったら…」
ミサキ「強行突破…」
モモイ「…そうだね。それしかない」
モモイは立ち止まると、先生とミドリの方に向き直る。
モモイ「この先は手練のアリウス生もいる。先生とミドリは安全の確認ができたら後ろから着いてきて」
ミドリ「待ってお姉ちゃん。私も戦えるよ」
モモイ「…じゃあ、先生を守ってあげて。先陣は私たちが切るから」
ミドリ「…うん。わかった」
合図と共に三人はアリウス生たちが待ち構えるカタコンベの入口へと向かう。それを先生とミドリはやや離れた位置から追っていた。
その最中に先生は「そういえば」と切り出す。
“ミドリ。サオリには何か伝えてたの?”
ミドリ「………」
押し黙るミドリ。応答こそできなかったがずっと来ていたユズからの連絡も併せて、ミドリがユズたちには特に何も言わずに来ていたことは明らかだった。
“みんな心配してるよ。だから…”
ミドリ「いいんです。私がお姉ちゃんを助けたいと思っただけなので」
言葉を遮ってミドリはそう返した。その目には、後悔の念が混じっているようにも見えた。
一方その頃、モモイたちは…。
ヒヨリ「…!!」
モモイ「…聖園…ミカ…!」
ミカ「ふふ、やっぱりここに来ると思ってたよ!それにしても…どうしたの?そんな顔して…」
─まるで、魔女にでも会ったみたいな顔してさ。
不穏に響く銃声を、先生とミドリはモモイたちから離れた場所で聞いた。
“今の銃声は…!”
ミドリ「先生!」
モモイから連絡が来ないことも併せて、何かあったと考えた二人は、モモイたちの元へ急ぐ。
そして、ミカと交戦していたモモイたちだったが、その戦闘力はコンディションが万全でないことを抜きにしても圧倒的だった。
ミカ「…ねぇ、モモイ。私はちょっと痛い目に…って言ったよね?ヘイローを壊せなんて、言ってないよね?」
モモイ「…はぁ…はぁ…!」
ミカ「私の大切なもの…ぜーんぶ、なくなっちゃった。学園も、友達も、宝物も、帰る場所も、先生との約束だって…」
モモイ「…先生…」
ミカ「だから、共犯者のあなたたちにも…同じ痛みを味あわせてあげる。特にモモイ…あなたにはね」
狂気を孕んだ目で、ミカはそう告げる。モモイはその言葉を、揺らぎつつあった意識の中で聞いていた。
その時、モモイの後ろから銃声が響いた。
飛んできた弾丸は、ミカを的確に撃ち抜く。
ミカ「ッ…!」
ミドリ「お姉ちゃん!大丈夫!?」
モモイ「ミドリ…!」
そこにいたのは、モモイを姉と慕う、モモイと瓜二つの少女。そして─
“…ミカ…!?”
ミカ「せ、先生…!?」
モモイに妹がいたことと、先生がここにいること。二つの事実に、ミカは驚きを隠せない様子を見せる。
“ミカ、こんなところで何をしているの?”
ミドリ「…先生のお知り合いですか?」
モモイ「お知り合いというよりは、協力者だよ。私たちの、計画に加担した…内通者」
ミカ「先生こそ、どうしてここに…?なんでそっち側にいるの?ねぇ、どうして…こんな姿、先生には…!」
混乱する場を更に掻き乱すように、何処からか攻撃が飛んでくる。
アリウス生A「いたぞ!」
アリウス生B「聖園ミカもいる!撃て!」
追っ手のアリウス生たちが攻撃を仕掛けてきた。先生はミカを案じたものの…。
ヒヨリ「せ、先生…!もう、時間が…!」
ミサキ「急いで入らないと、入口が閉じる…!」
決断を迫られ、葛藤の末先生は駆け出した。
“ごめんミカ!話はまた後でするから、トリニティに戻ってて!”
ミドリ「お姉ちゃん、こっち!」
無我夢中で駆け抜け、何とかカタコンベへと滑り込むことができた。
ミサキ「まだ完全に通路が閉じるまで時間がある。追っ手が来る前に、急ごう」
ヒヨリ「…ここから先は電波が通じません。迷ったら終わりです…」
モモイ「この先がアリウス自治区だよ。…行こう」
ミドリ「…アリウス…」
ミドリにとっては、久しぶりの故郷。されど、ここまで気持ちの昂らない里帰りもないだろう。
ミドリ「………」
モモイ「…大丈夫だよ。ミドリ」
体を小さく震わすミドリの頭を、モモイは優しく撫でる。
モモイ(…嫌な思い出と向き合うかもしれないのに、それでも…私のところに来ようとしたんだ…)
モモイはそんなことを思いながら、未だミドリのことを完全に思い出せていない自分を厭わしく思うのだった。
一方で追っ手のアリウス生を叩きのめしたミカは、カタコンベへの入口へ向かいながら独り言ちていた。
ミカ「そっか。そうなんだ。モモイ、あなたには妹がいたんだね」
アツコが連れ去られたこと。彼女が殺されそうになっていることは、先程のアリウス生から聞いた。先生がスクワッドの味方についたことにも、納得はした。それでも、自分はもう止まれないと…ミカは自分に言い聞かせるように零す。
ミカ「私が大切なものを失ったんだから、あなたも失わないと不公平だもんね?ねぇ、モモイ?」
そう言いながら、ミカはどこかへと去っていく。
「………」
その後ろから響く足音に、彼女が気づくことはなかった。