欠けた連星のサブスティチュート   作:アカネのメガネ

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兵士として、モモイは訓練に励んでいた。
食事はあるが味はほぼなく、水もほとんど与えられない。

そんな過酷な環境の中で、モモイはその心を砕きながら生きていた。

モモイ「………うっ…うぅ…!」
アリウス幹部「立て。この程度で膝をついていては何も出来ないぞ」
モモイ「…は、はい…!」

その身を削りながら生きてきた。

モモイ「…申し訳ございません…。許してください…。二度と、二度とこのようなことはしません…。もう二度と、大人の言葉を破りません…反抗しません…。将来に希望を抱かないよう努めます…。二度と幸福なんて望みません…祈りません…!どうか、どうか…!」

その言葉の通り、アリウスでの訓練を経てモモイは希望や幸福を自ら手放すようになっていった。

そして後にミサキたちと再会し、彼女たちに指導を行うことになった頃には、自分にとっての『幸せな日々の象徴』であるミドリとの記憶を思い出せなくなっていっていた。

そんな中で、将来に希望を抱いて生きようとするアズサの背中は、モモイにとっては光って見えた。

モモイ「…将来には希望も幸せもないんだよ、アズサ。それなのに、抗うつもりなの?」
アズサ「…何も考えないまま生きたくはない」
モモイ「そっか。でも全ては虚しいものなんだよ?」
アズサ「だとしても、それは今日を頑張らない理由にはならない」
モモイ「………先輩は凄いね」

嫌味らしく呼んでいた先輩という言葉も、もしかすると本心から慕っていたからこその呼び名だったのかもしれない。

モモイ「いい加減わかってよ先輩。全ては虚しいものなんだってさ。………先輩?待って、何処に行くの…?なんで?なんで先輩だけがそっちに行ってるの?私たちはまだここにいるのに…。待って、待ってよ…。行かないでよ、先輩…!」


姉妹なんだから

─先輩…。

 

ミカ「ん?」

モモイ「………負け、だよね…。もう…いいや…」

ミカ「もう、いい?」

モモイ「…うん。もう、私は何もわからないんだ。何が正しくて、何が間違ったことなのか…。今までそうしないといけないって思いながらしてきたことが、間違っていたことだったとしても…私はそれに気づけなかった。…そんな私が幸せになれるわけなんてないのにね」

 

モモイの独白を、ミカは何も言わずに聞いていた。

 

モモイ「…いや、それだけじゃないかな。今までを振り返ってみてわかったんだ。私はミドリのことを、忘れたわけじゃなかった。ただ、思い出そうとしなかっただけだったんだ。思い出してしまえば、私が今まで生きてきたこと、やってきたことが間違っていたことだったんだって…自ら認めることになると感じたから…。自分で自分の記憶に蓋をしていただけだったんだ。…こんなどうしようもない人間が、お姉ちゃんを名乗っていいわけがないよね。幸せになんて…なっていいわけがないよね」

 

そう言うモモイの表情は、どこか晴れ晴れとしているようにも見えた。

 

モモイ「…だから、ここで終わりにするんだ。ミドリは優しい子だからきっと悲しむだろうけどね」

 

再び目を閉じるモモイ。

 

モモイ(…あぁ、これが私の物語かぁ…。くだらない…シナリオだったなぁ…)

 

しかし一向に銃声が聞こえない。疑問に思い目を開くと、そこには─

 

ミドリ「………」

モモイ「…ミドリ…?」

 

ミカの前に立つ、ミドリの背中があった。

 

ミドリ「お姉ちゃんに…手は出さないでください…!」

 

震える声でミカにそう言うミドリ。モモイはその背中を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

モモイ「…ミドリ…」

ミドリ「お、お姉ちゃん!」

 

ミドリはモモイに駆け寄る。その表情は、明らかに怒っていた。

 

ミドリ「………お姉ちゃんのバカ!幸せになっていいわけないなんてことないよ!幸せになっちゃいけない人なんていないんだから!」

モモイ「…ミ、ミドリ…」

ミカ「………」

 

怒りを顕にするミドリの姿を見て、怒りの声を上げるミドリの言葉を聞いて、ミカの脳裏に浮かんだのは、先程交戦した生徒が最後に呟いた言葉。

 

サオリ『…しあわせに、なってはいけない人間なんて…いない』

 

─ミカは、手に持っていた武器を落とした。

 

その目には…涙が浮かんでいた。

 

そんなミカを見て、二人は呆気に取られていた。

 

モモイ「…ミカ…?」

ミカ「…私は、魔女だから…幸せになっちゃいけなくて…。でも、それでもって…ずっと、思ってた。…そんなことを願っても、幸せになんかなれないって、そう思ってた…」

 

地面に涙の跡を作りながら、そう話し続けるミカ。

 

ミカ「…さっきの、シナリオライターって言ってた人…名前はわからなかったけど…。ミドリ、あなたと同じことを言ってたの」

ミドリ「………お姉ちゃんが…?」

ミカ「…私も、幸せになりたい。…全部やり直して、一から出直して…幸せになりたいって…。でも、もう、無理なんだ。モモイ…私も、あなたも…幸せにはなれない。だから私は…あなたに公平な痛みを願っていたのかもしれない…」

 

ミカのその言葉を、モモイは何も言わずに聞いていた。

 

ミカ「…私は…!」

ミドリ「…誰が決めたんですか」

ミカ「…え?」

モモイ「ミドリ?」

ミドリ「…幸せになれないって…誰が決めたんですか」

 

真っ直ぐな目で、ミドリはそう言い放つ。

 

ミカ「…でも、私たちはもう…」

ミドリ「…『人生に、リセットボタンはない。コンティニューはある。』…前に遊んだゲームに、そんな言葉がありました。本当にやり直したり、出直したりすることは、確かにできないのかもしれません。でも、それで終わりじゃないんです。まだ、エンディングじゃないんですよ!!」

モモイ「…ミドリ…」

 

そう訴えるミドリの言葉に賛同する声が、少し遠くから聞こえてくる。

 

“ミドリの言う通りだよ”

 

その声の主が誰なのかは、すぐにわかった。

 

ミカ「…先生…?」

ヒヨリ「け、結局戻ってきちゃいました…」

ミサキ「…モモイもミドリも…怪我はしてるけど、思ったより元気そうだね」

モモイ「先生…?姫を助けに行ったんじゃ…」

“助けに行くよ。モモイもミドリも…一緒にね”

 

そう言って微笑む先生の姿が、モモイにはいつになく光って見えた。

 

ヒヨリ「せ、説得はしましたよ…?でも…」

ミサキ「止められなかった。というか止まらなかった」

 

ミカは近づこうとする先生を手で制止する。

 

“ミカ?”

ミカ「…ダメだよ、先生。私みたいな問題児より、もっと大事な生徒がいるでしょう?モモイもその子のこと、心配してるよ?」

“私にとっては、アツコもミカも、モモイもミドリも、みんな…大事な生徒だよ”

ミカ「…!!」

“…だから、ミカのことも…見捨てない。さっきミドリが言ってたように、エンディングはまだ先なんだから。…私は、あなたたちを不幸にはさせないから”

 

迷いなくそう告げる先生。そこへ─

 

ユスティナ聖徒会のミメシスが現れた。

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