ベアトリーチェ「中々の余興でしたが…もう結構です。これより儀式を開始しますので」
モモイ「えっ!?」
ヒヨリ「そ、そんな…まだ夜明けは…!」
狼狽するモモイたちを嘲笑うかのように、ミメシスやユスティナ聖徒会の聖女バルバラが襲いかかる。
モモイ「急がないと…!」
ミカ「…」
すると、ミカがバルバラに向けて駆け出した。
“…ミカ!?”
ミカ「行ってモモイ、先生!…助けたい子がいるんでしょ?だったら…!」
ミドリ「ミカさん…!」
モモイ「…行こう、先生!」
“…気をつけてね、ミカ!”
自分に背を向け走り去るその足音を、ミカは静かに聞いていた。
ミカ「…ああは言ったけど、流石に限界も近いかなぁ…」
これが罪滅ぼしになるとは思わないけれど。
これで赦されるだなんて考えてないけれど。
ミカ「…でも、やらないと」
言い聞かせるように、そう呟いた。
モモイ「姫!」
儀式が執り行われている至聖所に辿り着いたモモイたちは、磔にされたアツコを見つける。
ミドリ「…気を失ってるだけみたいだよ」
ヒヨリ「で、でしたら早く姫ちゃんを…!」
ミサキ「…そうもいかないみたい。見て、あれ」
ミサキが目線を向ける先にいたのは、不敵な笑みを浮かべるベアトリーチェ。
ベアトリーチェ「遅かったですね。儀式は既に進行しています。ロイヤルブラッドの持つ神秘とキヴォトスの外から到来する力…その力で、私はより高位の存在となる」
ミドリ「そんなことの為だけに、その子を利用してるの?」
ベアトリーチェ「部外者は黙っていなさい。…あぁ、私の言葉が理解できないからそう言っているのでしょうか?ではお見せしましょう…!これが、これこそが本来の姿…偉大なる大人の姿なのです!」
ミドリの言葉に若干イラついたか、ベアトリーチェはその姿をより人間離れしたものへと変化させていく。
“あれがベアトリーチェの本性なんだね”
ミドリ「思っていたより醜いですね。もう少し大衆ウケするデザインにした方がいいと思います」
ミサキ「…ミドリ、結構毒舌じゃない?」
モモイ「デザインなんてどうでもいいよ。早く姫を助けないと!」
ヒヨリ「そ、そうですね…!」
モモイの言葉を受け、臨戦態勢を取るスクワッドとミドリ。
ベアトリーチェ「減らず口を叩く聞き分けのない子供には…お仕置きをしてあげませんとね…!」
その頃、ミカは─
ミカ「…はぁ…はぁ…!」
襲い来るミメシス。その物量を前にして、ミカはついに膝をついた。
目の前には銃口をこちらに向ける聖女バルバラ。この体力でかなりの戦闘力を誇る彼女を制するのは流石に無謀だったかなとミカは考えていた。
ミカ(…まぁ…魔女にはお似合いの最後…かもね)
自身の限界を察したミカは目を閉じ、バルバラからの銃撃を抵抗せず受けようとする。
ミカ「ごめんね、先生。…私、やっぱり…」
───魔力充填、100%─
光よ───!!
瞬間、大きな音と眩い光が辺り一面に広がった。
アリス「無事なようですね!良かったです!」
ミカ「あ、あなたは…?」
呆気に取られていると先程ぶりの顔と再会する。
サオリ「大丈夫か?」
ミカ「あなた…さっきの…!」
サオリ「…ゆっくり話をしている暇はない。アリス、ユズ」
ユズ「う、うん。ここは任せて」
サオリ「無理はするなよ」
アリス「はい!ミドリをよろしくお願いしますね!」
サオリは二人にそう言うとモモイたちの元へ駆け出していく。
アリス「立てますか?」
ミカ「…助けてくれなくて、良かったのに…」
アリス「…?…何故ですか?」
ミカ「…私は…魔女だから…」
だから、これは当然の報い。幸せになれるなんて勘違いした魔女にはお似合いの最期─
アリス「あなたは魔女なのですね!パンパカパーン!魔女さんがパーティに合流しました!」
ミカ「え…?」
満面の笑みでそう言うアリスに、ミカは思わず驚きの表情を見せる。
アリス「魔女、それはつまり魔法使い…。魔法使いは勇者のパーティメンバーの定番です!バーサーカーユズもいますし、最高のパーティになってきました!」
ユズ「私バーサーカーなの!?」
ミカ「ま、待って!私の言う魔女っていうのはそういうのじゃなくて…」
アリス「違うのですか?」
ミカ「…そう。私は…悪い魔女だから…許されるだとか、幸せになるだとか…そういうことは、望んじゃいけないの…」
アリスは、真っ直ぐな瞳をミカに向けている。
アリス「悪い魔女でいたいのですか?………悪い魔女が嫌なら、転職をすればいいです!アリスは世界を滅ぼす魔王でしたが、今は違います。今のアリスは勇者です!勇者になりたいと思えたから、アリスは魔王から勇者になれました!…あなたも、魔女が嫌なら別の職業に転職すればいいんです!あなたがなりたいものに、あなただってなれます!」
ミカ「…私の…なりたいもの…?」
私のなりたいもの。私がなりたかったもの。
考えれば考えるほどわからなくなってくる。
私は、許されないことをした。
魔女と呼ばれることは、当然のことだと思っていた。
でも…。
魔女でない存在になれるとしたら…。
私は…。
アリス「…決まりませんか?ならアリスが決めます!」
ミカ「えっ」
アリス「今も昔も、勇者の傍らには…」
そういうとアリスはミカの手を取る。
アリス「守るべき存在…姫がいるものです!」
ミカ「!?」
目を丸くしたミカに、お構い無しと言わんばかりにアリスは続ける。
アリス「ですので、あなたは今からお姫様です!大丈夫です。勇者であるアリスが、必ず守ります!」
ミカ「…わーお」
臭い台詞ではあったかもしれない。それでも、アリスの真っ直ぐな心を乗せたその言葉は、ミカの心に確かに届いていた。
ミカ「………ありがとう。アリスちゃんにユズちゃん…でいいのかな?私は聖園ミカ。言っておくけれど…守られるだけのお姫様でいるつもりはないからね?」
アリス「なんと、姫が戦うのですか!?」
ユズ「最近はそういうシナリオもあるし…い、いいんじゃないかな…?」
体勢を立て直したバルバラは銃口をこちらに向けてくる。
アリス「わかりました!それでは…討伐クエスト、開始です!」