欠けた連星のサブスティチュート   作:アカネのメガネ

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─やがて、先生が戻ってきた。

その場に、モモイたちはいなかった。

“…モモイは?”
サオリ「………約束を守ってくれるそうだ。代わりに、ミドリのことを頼まれたよ」

そう言うサオリは先生の方は向かないままで、ミドリを優しく抱きしめていた。

ミドリ「…お姉ちゃん。本当にこれで良かったのかな…」
サオリ「…多分、あの場に正解なんてなかったよ。だからこそ、モモイはモモイ自身の答えを信じたし、ミドリもミドリ自身の答えを信じた…そうだろう?」
ミドリ「………そんなに大層なことじゃないよ。私は…」
サオリ「それでいいんだ。ハッピーエンドは1つだけだとは限らない。人の数だけハッピーエンドがあるんだから」

諭すようなその言葉は、ミドリの心を優しく癒していく。

サオリ「ミサキ、ヒヨリ、アツコ…」

サオリは先程のやり取りを思い返す。


ハッピーエンド

サオリ「…ほんとうに、そっちの道を選ぶのか」

モモイ「…うん」

サオリ「そうか。…それならもう私は何も言わない。…少なくとも、お前の選択には」

 

サオリは、ミサキたちへ目線を向ける。

 

サオリ「…少し、4人で話をさせてほしい」

モモイ「…わかった」

 

意図を察したかモモイはミドリを連れて少し離れた場所へ移動する。

ミサキが何かを言おうとしたが、それに先んじてサオリは深く頭を下げた。

 

ヒヨリ「ね、姉さん…?」

アツコ「…」

ミサキ「…どういうつもり?」

サオリ「…私はずっと、後悔してた。勝手に飛び出して、そのまま帰れなくなったこと。…みんなを、置いていってしまったこと。謝って許されるだなんて思ってはいない。それでも…」

ミサキ「…うん。私は許すつもりなんてない」

ヒヨリ「ミサキさん…?」

ミサキ「顔をあげろ、錠前サオリ」

 

ミサキのその言葉のとおりに顔を上げたサオリ。ミサキと目が合った瞬間、サオリは胸ぐらを掴まれた。

 

ミサキ「…あの時も言ったけど、ここにあんたの居場所なんて、ないから」

サオリ「わかっているさ。だが、だからこそ…一つ、言わせてくれ」

 

胸ぐらを掴まれながらも、サオリは微笑んだ。

 

サオリ「みんなと、また出会えて、本当によかった。…元気でな」

 

穏やかな声色のその言葉を聞いて、ヒヨリとアツコは少し寂しげな顔をした。ミサキの表情は特に変わりはしなかったが、少ししてから吐いた溜息に、彼女自身の感情が現れていた。

 

ミサキ「…それが言いたかったこと?…もういいよ。じゃあね」

 

手を離したミサキはサオリに背を向けてアツコとヒヨリの元に戻っていく。しかし、少し歩いたところでミサキは立ち止まった。

 

ミサキ「…生きててくれて、ありがとう。…姉さん」

 

背を向けたまま、ミサキは小さく零した。

 

─その言葉を噛み締めるサオリ。

きっと彼女たちにもハッピーエンドは訪れる。そう信じることしか今の私にはできないが、それでも。

 

サオリ「…みんなを、頼む。モモイ」

モモイ「当然だよ。そっちこそ、ミドリを泣かせたら許さないからね」

サオリ「心配するな。ミドリは強いからな。…お前たちの幸運を、心から祈ってるよ」

 

小さくなっていく背中を、2人は何も言わずに見送る。

寂しげに吹く風から血の繋がっていない妹を守るかのように、サオリはミドリを優しく抱きしめるのだった。

 

───────

 

それから少しして、アリウススクワッドはトリニティの郊外までやってきていた。

 

ミサキ「…柄にもないことをした」

ヒヨリ「た、たまにはいいんじゃないでしょうか?」

ミサキ「…それより、リーダーは?一緒に来てたはずだけど」

アツコ「…モモイなら、どこかに行っちゃったよ」

ミサキ「は?どこに?」

アツコ「『自分探し』をしたいんだって。今までベアトリーチェの望むままに生かされてたからだと思う」

 

心底嫌そうな顔をして、ミサキは頭を搔いた。

 

ミサキ「…それ、私に面倒事を押し付けて逃げたとかじゃないよね?」

アツコ「モモイはそんな子じゃないよ。モモイには、時間が必要なの。己を振り返り、自身を知る時間が」

ヒヨリ「…リーダー…。帰ってくるんでしょうか…」

アツコ「帰ってくるよ。だって…」

 

約束、だもんね。




アリス「姫、これでお別れです」

トリニティ自治区へと戻ってきたサオリたち。アリスはそう言いながら跪くような姿勢を取る。

ミカ「そ、そんな畏まらなくていいよ!?」
“姫…かぁ。…本当に無事で良かったよ、私の可愛いお姫様”
ミカ「せ、先生!?」
ミドリ「…」

ミドリが不機嫌そうな顔をしているのを、サオリとユズは見て見ぬふりをした。

サオリ「それじゃあそろそろ帰るぞ」
アリス「どうかお元気で!またお会いしましょう!」

溌剌としたその声と共に、4人はミカと先生と別れる。

サオリ「………げっ…」
ユズ「ど、どうしたの?」
サオリ「………ユウカ、ブチ切れてる」
ユズ「あぁ…」
アリス「アリス知ってます!これはまたサオリが土下座をする流れです!」
サオリ「それはどうかな?」
ミドリ「…思わせぶりなこと言っても未来は変わらないよ」
ユズ「…私たちも怒られるんじゃないかな…?」
サオリ「私だけ怒られるのは癪だから道連れになってほしいのが本音だ」
ミドリ「最低だよお姉ちゃん」

そんな他愛のない話をしながら、4人はミレニアムへの帰路に着くのだった。
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