そんな騒動から数日後─
聴聞会の議長「─以上とする。聖園ミカ、意義があれば申し出るよう」
ミカ「ううん。ないよ」
アリウスへ加担した罪を問われたミカだったが、聴聞会の決定としては退学処分にはならないことが決定された。少なくとも、最悪の判決だけは免れたかたちである。…一部生徒は納得していない様子だったが。
ミカ「…ねぇナギちゃん。RPGってやったことある?」
ナギサ「…はい?」
そんなある日の昼下がり、ミカはナギサにそう問いかけた。
ナギサ「RPG…ですか?」
ミカ「うん、ゲームの話だよ」
ナギサ「ゲーム…ミカさんがそういったものをするとは…」
ミカ「私もよくわかってないんだけどね。でもプレゼントとして貰っちゃったからさ」
ナギサ「プレゼント…ですか?」
ミカ「ミレニアムのゲーム開発部の子たちが作った『TSC2』っていうゲームだよ。知らないよね?」
ナギサ「…そうですね。存じ上げません」
やや困惑しつつもナギサはそう答える。
ミカ「私もよくわからないけど…でもね、なんだかこのゲーム…温かいんだ」
ナギサ「温かい…ですか?」
ミカ「本当にゲームが好きな人たちが作ったんだなっていうのが、わかるんだ。ゲーム、そんなにやったことないのにね」
無邪気に笑いながらミカは言う。ナギサはそんな幼なじみの様子に安堵の感情を覚えた。
───────
所変わってミレニアムサイエンススクール。ゲーム開発部にもいつも通りの日々が戻り始めていた。
サオリ「…ユウカ様、部費を上げてほしいなどと二度と申しません…どうか慈悲を…」
ユウカ「あーもう!仰々しい謝り方はしなくていいから!!とにかく期日までにゲームを仕上げないと、部費は大幅カット!最悪廃部も有り得るからね!」
…掛け値なしにいつも通りの日々である。
ミドリ「お姉ちゃんがシナリオ浮かばないのが悪いんだよ?」
サオリ「そうは言っても思い浮かばないものは浮かばないんだ…。くっ、これがばにたすというものか…!」
ミドリ「違うよ?」
アリス「はい!アリスに新作ゲームのアイデアがあります!」
アリスは元気いっぱいにそう言った。
アリス「お姫様と一緒に宝物を守るタワーディフェンスゲームはどうでしょうか!」
ミドリ「アリスちゃん、ナイスアイデア!」
サオリ「あぁ、それでいこう。…よしらじゃあユズ。部長らしくビシッと決めてくれ」
ユズ「えっ!?えぇ〜………と…。…頑張ろう…!」
弱々しいが力強さも感じられるその一言を合図に、私たちは次なるゲーム開発に取り組み始めた。
ミドリ「ねぇお姉ちゃん。…お姉ちゃんはどうしてるかな?」
サオリ「モモイなら大丈夫だろう。あいつは強いやつだ」
休憩室にてコーラを飲みながら、サオリは考える。
もしも自分たちが逆だったなら…。即ち、モモイがミドリと一緒にゲーム開発部に来ていて、私がアリウスに残ったままだったなら…。
何かが大きく変わるわけではないのかもしれない。それでも、今ここに私がいるからこそ、なしえたこともあるんだろう。
ミドリ「そういえば今度アズサさんと一緒に遊びに行く予定なんだけど、お姉ちゃんも来る?」
サオリ「…そうだな。折角だし、ご一緒させてもらおうか」
ゲーム開発部の私だからこその幸せを噛み締めるように、サオリはコーラを飲み干すのだった。
モモイ「ちょっと!どういうこと!?」
とあるビルの一室。とあるブラックマーケット幹部に吠えるモモイの声が響いた。
モモイ「いくらなんでも給料0円なんておかしいよね!?差し引き額が多くなったとしてもこの金額は有り得ないよ!」
幹部「何もおかしくはありませんよ。あなた、どうやら学校を中退されているようではないですか」
モモイ「う…。そ、それは…」
幹部「その場合は時給500円となります。更にあなたは指名手配されているようですので、口止め料として15%差し引き…諸々の計算を行った結果がこの給料です。何か文句でもありますか?」
何も言わなかった。ここで反抗してヴァルキューレに突き出されでもしたら何もかもおしまいだ。
モモイ「…ありません」
幹部「さぁ、お出口はあちらですよ」
これも教訓だと思おう。そう考えていると、部屋の扉が開けられた。
ハルカ「し、失礼します…」
幹部「あなたは、この前依頼をした…。精算は済ませたはずですが」
ハルカ「…は、はい…。そうです…。だ、だから…」
頭に疑問符を浮かべる2人。しかし次の瞬間─
ハルカ「許せません!!!!!」
ハルカはそう言うとショットガンを乱射し始めた。
幹部「ヒイィィィ!!?た、助けて!?!?」
ハルカ「アル様のお金を踏み倒すなんて、絶対許せません!!!」
その攻撃を受けて幹部は吹き飛ばされ、気絶してしまった。
モモイ「………」
ハルカ「あぁっ!?ほ、他の方がいらっしゃっていたなんて!?お、お騒がせして、た、大変失礼しました!!」
モモイ「い、いや…大丈夫だよ…?」
ハルカ「で、では私はこれで…爆弾を設置しにいかなければいけないので…」
モモイはそう言い残して去っていくハルカの背と荒らされた部屋を交互に見やる。
モモイ「………これが裏世界のやり方…なのかなぁ…?」
非常に困惑した様子で、モモイはそう呟くのだった。