ヒヨリ「さ、サオリ姉さんが…生きてた…!?」
アツコ「………」
拠点の廃校舎に戻ってきていたアツコは、先程の出来事をミサキとヒヨリに伝えていた。
ヒヨリ「それで、サオリ姉さんは今どこに…?」
ミサキ「………別に、そんなの気にしてる余裕なんてないでしょ」
ヒヨリ「え?で、でも…」
ミサキ「今更戻ってきて、説教でもするつもりか知らないけど…私はあいつと会いたくなんてないから」
ヒヨリ「で、ですが…」
反論しようとするヒヨリを、アツコは何も言わずに止める。
アツコ「………」
ヒヨリ「…わ、わかりました…」
直後、銃声が響いた。
恐らくアズサがやってきたのだろうと踏んだ三人は、モモイの元へと向かった。
ヒヨリ「だ、大丈夫ですかリーダー!?」
モモイ「来ないで!」
モモイの声が響いたのとほぼ同時に、ヒヨリの足元のトラップが作動する。
ヒヨリ「ひゃあ!?」
ヒヨリはそのまま至近距離からの爆発を受け、ダウンしてしまった。
ミサキ「…アズサ?」
モモイ「うん。とりあえずヒヨリ先輩を安全な場所に運んで。アズサ先輩はこっちで対処するから」
ミサキ「わかった」
ミサキとアツコはヒヨリをおぶってその場から離れた。
モモイ「…さて、先輩はどう出るかな」
廃校舎の中を、ミドリは駆ける。
先程のやり取りの中でミドリが何よりもショックだったのは、姉に撃たれたことでも自分のことを覚えていなかったことでもない。
姉が、自分を撃つ時のその表情。
まるで経験値稼ぎの為に、弱い敵を倒している時のような、作業感のある目。
それを、姉が人に向けてすることが…ミドリにはどうしても受け入れられなかった。
そのまま廃校舎から脱出し、降りしきる雨に濡れないようにしたミドリは、蹲って昔を思い返す。
モモイ『大丈夫だよ!どんなことがあっても、お姉ちゃんが守ってあげる!』
モモイ『お姉ちゃんがついてるからね!』
モモイ『…ミドリは、いなくならないでね』
その言葉の数々を、今の姉は覚えていないのだろう。
そう考えると、心の中に黒い何かが芽生えてくるように感じた。
ミドリ「お姉ちゃん…」
そうぽつりと呟き、ミドリはそのまま限界を迎え、気絶するかのように眠りに落ちるのだった。
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アズサ「く…!」
モモイ「…終わりだよ、アズサ先輩」
モモイはアズサに銃口を突きつける。終わりというその言葉の通り、アズサは既にボロボロだ。
アズサ「…モモイ…いつからだ?…いつから、私たちは…トリニティを、ゲヘナを憎むようになった?」
モモイ「………」
引き金を引く。
アズサ「かはっ…!」
モモイ「…何も知らないでのうのうと生きてられるような『楽園』のみんなには、私たちの憎しみなんてわからないだろうね。ねぇアズサ先輩。トリニティは楽しかった?」
また引き金を引く。
モモイ「結局、あそこも同じなんだよ。嫌いなものを排斥して、気に入らないものを捨ててしまおうとする。トリニティの平和の裏には、私たちアリウスのように...犠牲になってきたものたちの屍が転がってる」
また引き金を─
モモイ「...そのぬいぐるみ。はじめてのお友達にもらった大切なものなのかな?…ねぇ先輩…いつまでそんなものに縋ってるの?いい加減、受け入れなよ」
また─
モモイ「…虚しい」
何度も何度も何度も─
モモイ「虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい─」
何度も引き金が引かれ、銃弾がアズサに叩き込まれる。
モモイ「…友情、ね。そんなくだらないものに縛り付けられるなんて、弱くなったね。先輩」
銃弾を撃ち終え、モモイは銃を下ろす。
モモイ「だったらそれから壊してあげる。確か名前は『ヒフミ』だったっけ?あの子を殺せば、先輩もわかってくれるよね?」
この世界は、虚しいものなんだって。
アツコ「.........」
モモイ「姫?」
アツコは首を横に振っている。二人のことが心配で戻ってきたのだろう。
モモイ「...これ以上はやめてあげてって?大丈夫だよ。先輩ならこの程度...」
二人の会話の隙をつき、アズサはその場から離れる。追おうとしたモモイだったが、それは去り際に発動した爆弾によって阻まれた。
モモイ「...また逃げられた。...でも、余程焦ってたのかな?先輩」
モモイはアズサが持っていたぬいぐるみを拾い上げる。
モモイ「先輩は、どうせこれを取り返しに戻ってくるよ。それより姫、ミサキ先輩は?ヒヨリ先輩はともかくとして─」
その瞬間、モモイの耳に異音が聞こえた。
モモイ「...ん?」
ぬいぐるみから聞こえるそれに、嫌な予感を感じたモモイは、持っていたナイフでぬいぐるみの布を断ち切る。するとそこには─
モモイ「こ、これって...!?」
ヘイロー破壊爆弾。百合園セイアの始末のために、アズサに渡したものだ。
モモイ「しまっ...姫!!」
アツコ「...!!」
そして、廃校舎に爆発音が響き渡った。