欠けた連星のサブスティチュート   作:アカネのメガネ

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─遠くから古聖堂に向かってくるその影を見て、サオリは目を丸くした。

ミサキ、ヒヨリ、そしてモモイ。かつての友人たちだ。このタイミングでここに来るということは、彼女たちが今回の事件の首謀者なのだろう。

サオリ「…ままならないものだな」

アサルトライフルに弾を込め、覚悟を決める。

かつての友人たちと、戦う覚悟を。


どうして

ヒヨリ「さ、サオリ姉さん…!」

サオリ「久しぶりだな、ヒヨリ。…ミサキ。それにモモイ」

モモイ「…誰?」

 

その発言にサオリは一瞬驚いたが…

 

サオリ「…そうか。私のことは、覚えていないか」

 

しかし、すぐに受け入れた。

あれだけ過酷な環境で生きてきたのだから、記憶を失ったとしてもなんら不思議ではない。

 

モモイ「…よくわからないけど、私たちの邪魔をする気?」

サオリ「そうだ」

モモイ「…だったら」

 

ショットガンを構えようとするモモイを、ミサキが制する。

 

ミサキ「…こいつとは私がやる」

モモイ「ミサキ?」

ヒヨリ「ミ、ミサキさん…?」

 

あまり感情を顕にしないミサキが、明らかに怒りの感情を前面に出してそう言い放ったことに、二人は驚きを隠せなかった。

 

サオリ「…本気か?」

ミサキ「本気に決まってるでしょ」

サオリ「…そうか。だったら…」

 

ジャケットを脱いだサオリは、一拍深呼吸をすると、目を見開いた。

 

サオリ「全力で叩きのめしてやる…!」

 

─古聖堂前から戦いの場所を移し、ミサキとサオリの戦いはなおも続いていた。アサルトライフルの銃声が響き、ロケットランチャーの爆音が轟く。

 

ミサキ「はぁ…はぁ…!」

サオリ「…ミサキ」

 

戦況としてはサオリが優勢だった。ミサキも訓練を積んできた強者といえど、サオリの力はそれを上回っていた。

 

サオリ「…教えてくれ。モモイは、いつからああなった?」

ミサキ「…裏切り者に教える義理なんてない」

サオリ「…裏切り者か…」

 

サオリがぽつりと呟くと、ミサキは更に感情を剥き出しにし始める。

 

ミサキ「私たちを捨てて、のうのうと幸せそうに生きてきたくせに…。今更帰ってきたところで、ここにはあんたの居場所なんてない…!」

サオリ「…そうだな。確かにアリウスは、もう私のいるべき場所じゃない。今の私には、私を待ってる居場所がある」

 

しかしそれでも、サオリはなおも冷静だった。

 

サオリ「…でも、アリウスのみんなのことを…忘れた日なんてなかったよ」

ミサキ「…どの口が…!」

サオリ「…忘れられるわけがない。モモイだって、そうだった」

 

頭に疑問符を浮かべるミサキを他所に、サオリは話を続ける。

 

サオリ「忘れてしまっても、失われないものもある」

ミサキ「………」

 

ムカつく。ムカつく。ムカつく。

知ったような口を利くんじゃない。どうせ私たちのことなんて忘れて、今まで幸せそうにしてたくせに…!

 

ミサキ「ふざけるな!」

 

湧き上がる怒りの感情のままに、ミサキは叫んだ。ロケットランチャーを投げ捨て、真っ直ぐサオリに突っ込む。

サオリはそれを避けようとせず、結果としてサオリはミサキに押し倒された。

 

ミサキ「何が忘れた日なんてなかったよ!何が忘れられるわけがないよ!」

 

サオリの胸ぐらを掴んで、ミサキは吠える。

周りには誰もいない。モモイもヒヨリも、トリニティやゲヘナやアリウスの生徒も…誰一人としていない。

サオリだけが、その剥き出しの激情を身を受けていた。

 

ミサキ「だったら!どうして!!」

 

やがてその怒りの声を静かに塗り潰すように、サオリの顔に雫が滴り落ちる。

 

ミサキ「…なんで…私たちの前から…いなくなったの…」

 

それは、サオリにとってもミサキにとっても…後悔しかない出来事だった。

 

あの大喧嘩からずっと、ミサキはずっと後悔し続けていた。自分のせいで友達と離れ離れになり、挙句その友達が死んだとなれば、当たり前のことだろう。

そんなサオリが生きていた。ヒヨリは勿論アツコもその事実を喜んではいた。しかし、それを知ったミサキの中にあったのは、喜びよりも深い悲しみだった。

 

─どうして、帰ってきてくれなかったの。

 

その疑問が、頭の中で巡る。

無論、サオリにも帰れなかった理由はある。そんなことはわかっていた。頭ではわかっている。

それでも、心はそれを受け入れなかった。

 

ミサキ「…姉さん…」

サオリ「ミサキ…」

 

しばしの沈黙。それを破ったのは自分たちのものとは異なる銃声。アリウスと正義実現委員会の戦闘の余波がここにまで及んできたことを察知したミサキはサオリから、その場から離脱した。

 

サオリ「待てミサキ!」

 

口ではそう言えど、追うことはできなかった。

 

追ったところで、今の私に何ができるのか。

そう考えると、足を動かすことはできなかった。

 

降りしきる雨の中で、サオリはただ立ち尽くしていた。

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