欠けた連星のサブスティチュート   作:アカネのメガネ

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サオリとミサキの戦いから時は少し遡り…。

ヒヨリ「あ、アズサちゃんと…?」
モモイ「………」
ミドリ「…お姉ちゃん」
アズサ「…ミサキは?」
ヒヨリ「ミサキさんなら…ここにはいません」

そうか。と零したアズサは銃を構え、ミドリも戦闘態勢を取る。

モモイ「…アズサ…!よくも姫を…!」
ミドリ「お姉ちゃん!もうやめて!」
モモイ「うるさい!部外者は出てこないで!!」

姉の怒声に思わず怯みそうになるが、それでもここで引くわけにはいかない。

アズサ「…モモイ。私は必ずお前を止めてみせる。刺し違えてでも…」
モモイ「そんなことできると思ってるの!?私たちの怒りに、恨みに、憎しみに!耐えられると思ってるの!?」
ミドリ「…お姉ちゃんを人殺しには、させない」
アズサ「…そうだ。覚悟はもう決めてる」

友を、姉を、止める。
─たとえもう元の世界に戻れないとしても。


戻れない日々

そして現在。

 

サオリ「…ミサキ」

 

携帯の着信が鳴っている。永遠と流れているように感じるその音を聞きながら、サオリは先程のミサキとのやり取りを思い返す。

 

『何が忘れた日なんてなかったよ!何が忘れられるわけがないよ!』

『だったら!どうして!!』

『…なんで…私たちの前から…いなくなったの…』

 

ミサキがあそこまで感情を爆発させた姿は、友と別れたあの大喧嘩の時ですら見たことがなかった。

 

過去のアリウス自治区─

 

サオリ『やめろミサキ!』

ミサキ『なんで止めるの。こんなところで生き続けてても、苦しいだけなのに』

サオリ『それでも、死んじゃダメだ。みんな悲しむ』

ミサキ『関係ないでしょ。私が死んだところで、何も変わらない』

 

無神経にそう言い放ったミサキの態度に、どうしても我慢ができなかった私は…ミサキを殴り飛ばしていた。

 

ミサキ『…ッ!』

 

声を荒げこそしなかったが、ミサキも殴り返す。そこからは、殴り合いの大喧嘩だった。

ヒヨリとアツコに止められるまで、お互いに自身の感情を拳をぶつけ合う。そして、怒りに飲まれていたサオリは…。

 

サオリ『…もういい。勝手にしろ』

ヒヨリ『ね、姉さん!待ってください!』

アツコ『サッちゃん!』

ミサキ『…』

 

呼び止める声に応えることなく、その場から立ち去った。

 

サオリ『…やりすぎてしまったな…』

 

時間が経って自分の心を落ち着かせたサオリは、戻って謝ろうと考えていた。

ミサキがあまりに無神経なことを言ったのは確かだが、殴った自分が悪いのは自明の理だ。

一つ大きく息を吐き出したサオリは、みんなの元に帰ろうとして─

 

サオリ『え─』

 

内乱の戦火に、飲み込まれてしまった。

その場から逃げ出さざるを得なくなったサオリは、やがて戦火の届かない場所に出たものの、彷徨い歩くうちにカタコンベを通ってトリニティ自治区へ出てきてしまっていた─

 

ミサキ「…クソ、クソ、クソ…!」

 

雨が降る中を、ミサキは駆ける。古聖堂へ向かいつつも、その思考は過去に向けられていた。

 

内乱が終わってからも、サオリは帰ってこなかった。

 

ヒヨリ『サオリ姉さん…今日も帰ってきませんねぇ…』

ミサキ『………』

モモイ『…みんな』

アツコ『…あれ?あなた、確か…』

 

そんな三人の前にやってきたのが、モモイだった。

 

ミサキ『…モモイ…久しぶりだね』

 

モモイとは顔見知りではあった。しかしながら過去に多少交流し合った程度で、しばらく会ってさえいなかった。

久方ぶりの再会だが、モモイには双子の妹がいたはずだ。

 

ヒヨリ『…?…ひ、一人だけですか?』

 

そのヒヨリの疑問に、モモイはきょとんとした顔をする。

 

モモイ『一人だけだよ?…それよりさ、マダムが今日からみんなのこと見てやってほしいって』

ヒヨリ『そ、そうなんですか…』

アツコ『…ねぇ、ミドリちゃんは?』

モモイ『…ミドリ?………ごめん、覚えてないや』

アツコ『えっ…』

 

その答えに思わず声が漏れる。やや朧気な記憶ながら、二人はとても仲の良い姉妹だったはずだ。

モモイが離れている間に、三人は色々と話し合う。

 

ヒヨリ『ミドリちゃんのことを忘れてるだなんて…』

アツコ『…じゃあ、サッちゃんのことも忘れちゃったのかな…』

ヒヨリ『お、恐らく…』

ミサキ『…ミドリも、死んだんじゃないの?』

 

その言葉に二人はハッとする。

 

ヒヨリ『そ、それじゃあまるで…!サオリ姉さんも死んだみたいじゃないですか!?』

ミサキ『だってそうでしょ?もう何日も帰ってきてないんだから』

ヒヨリ『そ、それはそうかもしれませんが…』

アツコ『…サッちゃんはともかく、ミドリがそうだとしたら…』

 

思い出したくない記憶に蓋をしようとしているのかもしれない…。そう思い至った三人は、極力昔のことを思い出させないようにと務めたのだった。

 

────────────

 

サオリ「…アリス」

アリス「あっ!繋がりました!」

ユズ「さ、サオリ!トリニティにいるって聞いたけど…!」

アリス「私たちを仲間外れなんてずるいです!」

サオリ「………」

 

携帯の向こうから二人の心配そうな声が聞こえる。何も言わずにここまで来たのだから無理もないだろう。

 

サオリ「…ごめん。二人とも…心配かけた」

ユズ「えっと…み、ミドリは?」

サオリ「…ここにはいない」

アリス「ミドリはどこに!?」

サオリ「…今、探してる」

 

全部私の責任だ。私があの時ミドリを止めていれば。故郷への情を捨てることができていれば。

 

『裏切り者』

 

…選択をやり直すことはできない。これは私が選んだ道だ。待ち受ける結末がたとえバッドエンドであったとしても、コントローラーを手放すわけにはいかない。

 

サオリ「…ミドリを見つけたら、連れて帰るよ」

 

その選択が正解か否か。

それはまだ、誰にもわからない。

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