東方楽酔録 ~ Perfect Sake Bliss.~ 作:地軸
博麗神社の裏手、木漏れ日が差し込む竹林の端っこ。俺、酒飲楽はいつものように酔っぱらって座り込んでいた。足元には小さな池があって、そこにいる亀がのんびり甲羅を干してる。俺の能力が働いてるのか、なんだかこの亀が可愛く見えてきてさ。手元の酒瓶を傾けて、ちょろっと酒を池に注いでやる。
「ほらよ、亀さん。一杯どうだ? 楽しく飲もうぜ」
亀は首を伸ばして、ぺろりと酒を舐める。なんだか満足げに目を細めてる気がする。俺もごくりと一口飲んで、ふうと息を吐く。幻想郷に来てから、こんな平和な時間が好きだ。紅魔館の騒ぎや白玉楼の宴の後遺症で罪悪感が残るけど、酒があれば忘れられる……はず。
そんな時、足音が近づいてきた。見上げると、博麗霊夢ちゃんがこっちに向かって歩いてくる。いつもの巫女服姿で、表情は少し呆れ気味だ。
「楽、またここで飲んでんの? しかも亀に酒飲ませて……不審者すぎるわよ」
霊夢ちゃんはため息をつきながら、俺の隣に腰を下ろす。彼女の視線が池の亀に注がれる。亀は酒の余韻でか、ゆっくりと甲羅を揺らしてる。
「まあ、いいけど。今日は異変もないし、暇なんだよね。あなたも神社で飲む? でも、賽銭箱に何か入れてよね」
俺は笑って首を振る。財布の中身はいつも少ないけど、能力で酒は無限だ。霊夢ちゃんに酒瓶を差し出して、
「賽銭の代わりに、これでどうだ? 外の世界から呼び寄せた山崎の12年ものだぜ。楽しく飲むのにぴったり」
霊夢ちゃんは受け取って、軽く一口飲む。彼女の頰が少し赤らむのを見て、俺はふと疑問を口にする。幻想郷で暮らすようになってから、いつも気になってたことだ。
「なあ、霊夢ちゃん。いつも空飛んで、ばんばん打ち合ってるけど、あれ何してるの? 異変解決って言うけど、具体的にどういうルールなんだ?」
霊夢ちゃんは酒瓶を置いて、目を丸くする。
「え? あんた、まだ知らなかったの? 幻想郷の基本よ。弾幕ごっこ、って言うの。妖怪退治とか異変の解決で、直接戦うんじゃなくて、弾幕で勝負するのよ。綺麗で派手な弾を撃ち合って、相手を倒す方法」
へえ、そういうのなんだ。俺は頷きながら、想像する。空を埋め尽くす弾の嵐、霊夢ちゃんが華麗に避けながら反撃する姿。かっこいいな。
「弾幕ごっこか……面白そうだな。じゃあ、試しに俺もやってみようぜ。これが俺の通常弾だ!」
俺は立ち上がって、ポケットから高級酒の小瓶を取り出す。能力で呼び寄せた、特別な一本。軽くアンダースローで、霊夢ちゃんに向かって投げてやる。ふわっと弧を描いて飛んでいく。
霊夢ちゃんは慌てず、ぱしっと受け止める。彼女の表情が少し得意げだ。
「これでヒットだな、霊夢ちゃん!」
俺が笑って言うと、霊夢ちゃんは瓶を眺めながら首を振る。
「受け止めたから、表面にしか当たってないわよ。これ、グレイズよ。」
「でも……これから飲むんだろ? かっ喰らうとも言うよな?」
彼女の言葉に、俺はにやりとする。確かに、弾幕ごっこでグレイズはかすり、ヒットは直撃。でも、酒をかっ喰らうって事は、通常弾を喰らうって事だつまり、霊夢ちゃんは瓶の栓を開けて、ぐびっと一口飲む。そして、ふざけた調子で、
「ぴちゅん」
って言いながら、残りを飲み干す。まるで被弾したみたいに、わざと体を震わせて。俺は大笑いして、彼女の肩に寄りかかる。
「ははっ、負けたな、霊夢ちゃん。でも、これでまた一杯だぜ。次は俺のスペルカード、能力全開でいくよ」
霊夢ちゃんも笑って、俺の頭を軽く叩く。
「ばか。異変起こさないでよね。でも、悪くないかも。この弾幕なら、毎日やってもいいわ」
池の亀がのんびり見守る中、俺たちは酒を分け合って、幻想郷の平和な午後を過ごした。能力がまた暴走しそうだけど……まあ、楽しく飲めりゃいいさ。
後日、俺の店「酒呑蔵」に霧雨魔理沙ちゃんが飛び込んで来た。いつもの黒い帽子をかぶって、箒を肩に担いで、目がキラキラしてる。
「よお、楽! 聞いたぜ、霊夢に通常弾一発で勝ったらしいな。私とも勝負だ!!」
魔理沙ちゃんはそう言って、カウンターにどかっと座る。どうやら霊夢ちゃんから話が漏れたらしい。
そして全く同じ方法で勝ってしまった。
実は俺は最強かもしれん。