東方楽酔録 ~ Perfect Sake Bliss.~ 作:地軸
俺、酒飲楽の店「酒呑蔵」は、魔法の森の入口にひっそりとある。
いつものように、二度寝三度寝を楽しんでいる俺。
昨夜の宴の余韻で、頭が少し重い。
能力のおかげでアルコール中毒や肝臓疾患は防げるけど、二日酔いは消せないんだよな。
これもお酒の醍醐味だから、仕方ない。
白玉楼のあの夜、幽々子様と妖夢のことが頭をよぎる。
そんな時、店の扉が静かに開く音がした。
俺は布団の中で目を細めて見る。
そこに立っていたのは、魂魄妖夢。
白玉楼の剣士の少女、純粋で真っ直ぐな彼女。
でも、あの宴以来、彼女の態度は変わった。
今では週に2回くらい、買い出しのついでに店に寄ってくれる。
「旦那様、おはようございます。
まだお休みでしたか……失礼しました。」
妖夢の声は穏やかで、少し照れた感じ。
彼女はいつも通り、剣を携え、白い衣装が清々しい。
買い物の籠をカウンターに置き、俺の布団の近くに座る。
「昨夜も遅くまで宴だったんですね。
少しお世話します。」
俺は慌てて起き上がろうとするけど、妖夢の手が優しく肩を押さえる。
「いいんですよ、旦那様。
私がやりますから。」
彼女はそう言って、店内の片付けを始める。
カウンターを拭き、散らかった酒瓶を整理し、能力で湧いた肴の残りを片付ける。
俺の寝癖のついた髪を軽く直し、温かいお茶を淹れてくれる。
純粋だった妖夢が、こんなに献身的に変わったのは、あの宴の影響だ。
能力の暴走で、彼女の心を巻き込んでしまった罪悪感が、胸に刺さる。
でも、彼女の笑顔を見ると、拒めないんだよな。
「妖夢、いつもありがとう。
買い出しのついでに、わざわざ……。」
俺が言うと、妖夢は頰を赤らめて首を振る。
「いえいえ、旦那様のためです。
白玉楼の主様も、たまに楽さんのことを気にかけておられますよ。
それに、私も……ここに来るのが楽しみなんです。」
彼女の言葉に、俺は苦笑い。
週に2回、こんな風に世話をしてくれる。
買い物の野菜や食材を分けてもらい、時には簡単な昼食まで作ってくれる。
純粋さが崩れた分、彼女の献身は深くなった。
伏線のように、将来の忠誠が心配になるけど、今はただ感謝だ。
一通り世話が終わると、妖夢は立ち上がる。
「それでは、失礼します。
また来ますね、旦那様。」
帰り際、彼女はいつものように俺に近づき、そっと抱擁してくる。
その動作はまだ初々しく、頰を赤らめながら目を伏せて、恥ずかしげに体を寄せてくる。
短い抱擁だけど、彼女の温かさと微かな震えが伝わってきて、俺の胸を締めつける。
あの宴の記憶がよみがえるようで、妖夢の照れが愛おしい。
俺は照れくさくて、軽く背中を叩くだけ。
妖夢は微笑んで、体を離し、店を出ていく。
扉が閉まる音が、静かな店に響く。
俺はため息をつき、布団から起き上がる。
能力がまた暴走しそうだけど……まあ、楽しく飲めりゃいいさ。
妖夢の献身が、幻想郷の日常を少し温かくする。
でも、この関係がどうなるか、誰にもわからないな。