東方楽酔録 ~ Perfect Sake Bliss.~   作:地軸

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~森の夜に響く宴~

俺は竹林の外れをふらふらと歩いていた。永遠亭でのあの朝から数日経って、ようやく二日酔いの余韻が抜けきった頃だ。人間の俺が、幻想郷の住人たちと酒宴を繰り広げる日々が続いてるけど……絶対また暴走しちまうよな。

そんなことを考えながら森の道を進んでいると、ふと鼻をくすぐるいい匂いがした。焼き魚? いや、焼きウナギみたいな香ばしい匂いだ。見回すと、道端に小さな屋台が立っている。提灯がゆらゆら揺れて、夜雀の焼き八目鰻屋って看板が出てる。店主は小柄な少女で、翼みたいな飾りがついた帽子をかぶっている。妖怪かな? なんか歌を口ずさんでいるみたいだ。

 

「お客さん、いらっしゃい! 夜雀の焼き八目鰻、美味しいよー。暗い夜道にぴったりだよ! 夜盲症も治っちゃうかもね!」

 

彼女が俺に気づいて、元気よく声をかけてきた。俺は自然と笑顔になって、屋台に近づく。

 

「へえ、こんなところで屋台やってるんだ。俺、酒飲楽って言うんだけど、腹減ったなあ。焼き八目鰻、何本かくれよ」

 

彼女は目を輝かせて、串を焼き始める。「私はミスティア・ローレライ! 夜雀の歌姫だよ。お客さん、珍しいね。人間なのに竹林の近くをうろついてるなんて。焼き八目鰻、3本でどう?」

 

俺はカウンター代わりの板に肘をついて、彼女の歌声を聞きながら待つ。なんか、心地いいメロディーだ。焼き八目鰻を受け取ってかじってみると、意外とジューシーで美味い。「うまいな、これ。酒が欲しくなるよ」

 

ミスティアちゃんは串を返しながら、ため息をつく。「酒かあ……実は今、入荷が全然なくて困ってるんだよね。異変のせいで仕入れ先が混乱しちゃってさ。屋台の売り上げも落ち込んでるよ。お客さん、酒屋さん知らない? いいお酒、安く仕入れられるところ」

 

俺は思わずニヤリとする。チャンスだな。「実は俺、魔法の森の入口で『酒呑蔵』って店やってるんだよ。能力で無限に酒が出てくるから、安く仕入れてやるよ。どんな銘柄が欲しい? ビール? 焼酎? それとも日本酒?」

 

ミスティアちゃんは目を丸くして、焼き八目鰻を焼き忘れそうになる。内心では、こんな人間が本当にそんな能力を持っているのか半信半疑だったけど、期待の光が瞳に浮かんでいた。――「あ、この人なら屋台の商売相手として信頼できるかも」――そう思った瞬間、普段の敵対的な感情はどこかに置いてきていた。

 

「え、無限に? それ本当? じゃあ、屋台の定番でビールと日本酒が欲しいよ! でも、そんな能力あるの? 妖怪みたいだね、お客さん」

 

「まあ、人間だけどな。ほら、ちょっと試してみようか」俺は気分を高めて、能力を発動させる。楽しく飲む気分さえあれば、なんでも起きるんだ。カウンターの上に、ぽんっとビールの瓶と日本酒の徳利が現れる。ついでに、焼き八目鰻に合うつまみも——ピリ辛の漬物とか、チーズみたいなのが。

 

ミスティアちゃんは驚いて、瓶を手に取る。彼女の表情は、驚きと喜びが混じったようなもので、歌うような声で叫んだ。「わあ、ほんとに! これ、魔法? すごいよ! じゃあ、仕入れの話、詳しく聞かせて。味見もしないとね!」

 

そこから宴が始まった。俺たちは屋台のカウンターで乾杯し、ミスティアちゃんの歌声がBGMみたいに流れる。彼女の歌は、なんか酔いを加速させるみたいで、能力が暴走し始める。酒がどんどん湧き出て、焼き八目鰻の串が無限に増え、森の虫や小動物まで寄ってきて賑やかだ。

 

「これなら屋台の在庫、心配ないよ! お客さん、毎日来てくれないかなあ」って彼女が笑う。酔いが回るにつれ、歌声がより生き生きとしてきて、俺の能力にすっかり魅了された様子だった。内心では、これからも商売上の信頼関係が続くかも、とワクワクしていたに違いない。

 

途中、萃香さんが分身でふらっと現れて、「楽、飲み比べしようぜ!」って介入してくる。過保護に俺の肩を抱きながら、ミスティアちゃんと競うように酒を飲む。ミスティアちゃんは最初驚いてたけど、すぐにノリノリで歌い出して、親密な空気が加速。俺は陽気に笑うしかない。「みんな楽しそうじゃんか」

 

宴が長引いた結果、ミスティアちゃんは酒の酔いが回って頰を赤らめ、俺の肩に寄りかかる。「お酒の仕入れ、決まりだね。楽さん、ありがとう。また来て、歌聞いてよ」って。俺は頷きながら、心の中で思う。普段なら敵対的な妖怪も、商売相手としてなら笑顔で付き合ってくれる――寿命の差なんて考えちゃうけど、今はラッキーだよな。

 

結局、屋台は朝まで続いた。

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