少女型兵器が戦う世界でTSする話【完結】   作:畑渚

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先んじて挨拶を。
まずは最終話で読んでくださりありがとうございました。
おかげさまで、書き連ねることができました。

では、短いお話でしたが、最後の一幕をお楽しみください


エピローグ

 荒野を駆ける一台の軍用車。それは殿を務めることとなったドレッド部隊の乗る、最後の撤退便でもあった。

 

「指揮官……」

 

 ヴァイスは無駄なあがきと知っていながら、撤退戦を長引かせた。しかし、彼が帰ってくることはなかった。

 

「隊長、地震を検知。どうやら成功したみたいです」

 

 ノエルの淡々とした報告は、ドレッド部隊の任務成功を知らせた。

 爆弾は地下施設の構造を破壊し、巣穴もろとも崩落させたはずだ。

 

 つまり、前回のように彼の亡骸を回収することも不可能である。

 

「そう、よかったわ」

 

 これで良かったのだと、ヴァイスは自分に言い聞かせた。

 少なくとも彼自身の望み、ドレッド部隊LFが欠けることなく撤退するという目的は果たせたのだから。

 

「……指揮官」

 

 胸につけた勲章を手に握る。これは、今回の任務にもしものときがあった場合のために持ってきたものだ。せめて最期だけは彼に浸っていたいから。

 

「隊長、安全ポイントまで撤退完了しました」

 

「ありがとう」

 

 くよくよし続けるわけにはいかない。なぜなら彼に、「後は任せた」と命令されたから。

 彼が意図したかは不明だが、その言葉までが強制命令だとヴァイスは認識していた。 

 

「さあ、部隊を立て直すわ」

 

 彼なら、後方勤務になった部隊を放っては置かないはずだ。

 まずは前線復帰からだろう。

 

 ドレッド部隊の再始動は、これからだ。

 

 

+++

 

 

「はあ、また自己犠牲を選ぶのかい君は」

 

 アザレア博士はコーヒーの香りをかぎながら、顔をしかめた。

 

 しかし、このこと自体は予測できなかったわけではない。どうシミュレーションしても、彼ならこの行動を取ったであろうことはわかっていたのだ。

 

「だから後方勤務してもらいたかったのだがねぇ」

 

 後方勤務であれば、彼は健やかに成長し、その実験成果をゆっくり観察することができただろう。

 

「まあ、だからといって研究に進歩がなかったのかといえば、そうではないのですが」

 

 彼が通信を切るまでの間、裏でデータを取り続けていたのだった。そのデータの密度はすさまじく、後方勤務の数年分に値するものが撮れていた。

 

「さて、次の研究を始めたいところだが、都合よく検体になってくれる人はいないものか」

 

 博士は手元の資料をペラペラとめくり、次の標的を見定め始めた。

 

 

+++

 

 

「軍団長、今回の作戦の報告書です」

 

「ありがとう」

 

 秘書から受け取った資料の束を見て、真っ先に目的のページをめくる。

 

「……っ!」

 

 損失報告書にあったあのLFの個体名を見て、精悍としていた顔に衝撃が走った。

 

「どうかされましたか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 あわてて顔を取り繕うも、心臓は弾けそうなほどに高く鼓動していた。

 

「それと一件」

 

「何だ?改まって」

 

「陳情書が来ています。送り主は……ドレッド部隊隊長、LFヴァイスです」

 

「ドレッド部隊が?」

 

 追加で資料をうけとる。そこには、現状の戦力推定値と前線行きの強い志望、そして指揮官選定の依頼が書かれていた。

 

「前に進むということか」

 

「どうしますか?あの部隊は先日も1体損失を出したばかりですが」

 

「構わん。だが指揮官の選定だけは、私にも口出させて貰おう」

 

「わかりました。そのように指示します」

 

 退出する秘書を見送り、窓の外へと目を向ける。どうやら正門の方が騒がしい。

 そして突如鳴り響く電話の音。

 

 軍団長を休めてくれる時は、存在しなかった。

 

 はぁとため息を一つだけ吐いて、切り替える。

 

 受話器を握りしめ、電話を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

「だから所属不明のLFを入れるわけには」

 

「えっもう不明扱いされてんの俺?」

 

「なんだ気持ち悪いやつだな」

 

 俺は人間の門兵相手に、口論を繰り広げていた。

 

「ユーディって名前で登録ない?嘘だろ仕事が早すぎる」

 

「土まみれの手で触るな!」

 

「あう、すまん」

 

 服で拭おうにも、服も土まみれだから仕方がない。

 俺は大人しく処遇の指示を待った。

 

「軍団長に確認が取れた、入れて良いそうだ」

 

「そうか、ありがとな」

 

 基地のゲートが上がっていく。

 そこには何気ない施設へと続く道が広がっているはずだった。

 

 

 しかし、その道を塞ぐように、LFたちが立っていた。

 

 

「ユーディ……どうして生きて……?」

 

「ヴァイス、耳が早いな」

 

「どういうことなんですか、いったい」

 

「なに、爆発寸前に目の前に冷蔵庫があってさ。もしかしたらこれに入ってれば爆発の影響受けないんじゃと思ってやってみたら、見事に無事でさ」

 

「でも崩落には巻き込まれたはずです!」

 

「ああ、巻き込まれた。だから掘った」

 

「ほ、掘った?」

 

「瓦礫と土をかき分けて地面まで。だからこんな遅くなっちまったけど」

 

 俺の体は土まみれである上にボロボロだ。瓦礫に引っ掛けてところどころ服は破けてるし、指先は人工皮膚が完全に剥がれ、摩耗した金属が丸見えになっている。

 

 ヴァイスがそんな俺の手を、優しく包み込んでくれた。

 

「ははっ、情けない姿でごめん」

 

「情けなくなんかないです」

 

 ヴァイスは一度顔を下げ、そしてなにかを堪えながら再び顔を上げる。

 

「おかえりなさい、指揮官」

 

「ああ、ただいま」

 

 ドレッド部隊の躍進は、これから始まる。

 

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