少女型兵器が戦う世界でTSする話【完結】   作:畑渚

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シャワールーム

 LFにシャワーは必要かと言われれば、必要であると返す。

 

 人間のように老廃物が皮膚に出るわけではないが、汚れは付着する。その汚れが故障の原因になりかねないから、定期的なシャワーが必要になるというわけだ。

 

 まあそうべらべらとシャワーの重要性を語っているのには理由がある。

 

「ね~ユーディちゃんもシャワーいこ?」

 

「う、うーん。でも……」

 

 宿舎でくつろいでいたところにやってきたアリスは、そういって俺の腕を掴んでいた。

 

 俺の胸中は、罪悪感で満たされていた。

 見た目はともかく、精神は男であるとまだ自負している。そんな俺が、少女にしか見えないLFたちのシャワーにお邪魔するのは、精神衛生上あまりよろしくなかった。

 

「ね~おねがーい」

 

 アリスは諦めそうになかった。

 

 なので仕方がない。これは仕方がないのだ。

 

「……うわぁ」

 

 脱衣所についた俺が思わず声を漏らしたのは許してほしい。

 見てくれだけでいえば、美少女ともよべるLFたちが、他人を気にする様子もなく堂々と着替えているのだ。

 

 かくいう自分の姿でさえ、裸になるのは初めてだった。

 

「きっとユーディちゃんも気に入るよ」

 

「あはは、そうかもね」

 

 服をカゴに入れて、タオル片手にシャワー室へと入る。一人ひとり仕切られたブースがあるが、通路との間に仕切りはない。見た目は人間用と変わらないシャワー室だが、実はシャワーから出てくる液体が特殊な洗浄液だという違いがある。

 

「あ、はいこれ。ユーディちゃんもってないでしょ」

 

「これは、シャンプー?リンスとボディソープまで」

 

「女の子の必須アイテムだよ」

 

 なるほど周りに目を配ってみれば、たしかにそういったものを持ち込んでいるLFたちがいる。しかし本来老廃物と無縁なLFにこういったものは不要なはずだが……

 

「あ、もしかしてLFには必要ないのにって思ってる?」

 

「え、えぇ。そのはずですよね?」

 

「も~わかってないなぁ。見た目にふさわしい香りを纏うエチケットみたいなものだよ」

 

 なるほど、どおりで甘い匂いがするLFがいるわけだ。香水かなにかかと思っていたが、まさかシャンプーだとは。

 

「でもヴァイスはこういった匂いしませんよね」

 

「あ~、ヴァイスちゃんはねぇ。シャワー苦手だから」

 

 意外だな。見た目には気を使っている方だと思っていたが。

 

「あと、同じ部隊ならシエナちゃんとか匂いに関しては一番敏感かな」

 

「なるほど?」

 

「だからきっと、ユーディちゃんのことも気に入ってくれるよ」

 

「そうですかね」

 

 匂いか。気にしたことがなかった。指揮官時代にシエナに何を思われていたかは考えたくもない。なんというか、その、忙しかったんだ。それに前線にたってると何日もシャワーを浴びれないなんてしょっちゅうだったし。

 

「ほら、ちゃんと隅々まで洗うんだよ!」

 

「ひゃっ!どこさわってるんですか!」

 

 変な声が出てしまって顔が赤くなる。まったく、ただでさえ刺激の強い体をしているのだから、余計な刺激を与えないでほしいものだ。

 

 

+++

 

 

 運命のいたずらとも言うべきか、宿舎への帰り道でばったりとシエナとすれ違う。

 

「シエナさん、おつかれさまです」

 

「ユーディ。おつかれ」

 

 挨拶だけして通り過ぎようとして、肩を掴まれる。

 

「ふん、スンスン」

 

「あの、な、何ですか?」

 

「シャンプー、アリスと同じ」

 

「そ、そうなんですよ。たまたまシャワーを一緒に浴びることになったんで、借りたんです」

 

「ふーん。でもこれは……スンスン」

 

 首筋に顔を埋めてくる。くすぐったいのでやめてほしい。

 

「これは虚偽、欺罔、欺瞞」

 

「な、何ですか突然」

 

「いえ、なんでもない」

 

「は、はぁ」

 

 ひらひらと手を降っていくシエナに、俺は呆然と立ち尽くしてしまった。

 

 

+++

 

 

 私は鼻が効くってよく指揮官に言われてた。

 

 その評価はあながち間違っていないのかもと思ったのは、ある作戦のとき。検知した匂いの種類と方向。そして経験データからなる統計学。それらが結びついたことでドゥエラーの奇襲を事前に察知できたことがある。

 

 それから私は、匂いからなるデータベース構築を自己研究課題とし、任務の裏で密かに研究を進めていた。

 

 指揮官のことは好きだった。

 

 とてもまっすぐでわかりやすく、不安や不満はすぐに匂いに出るような人だった。だから指揮官が私たちドレッド部隊に向けている信頼も感じ取れていた。

 

 そんな指揮官は、死んだ。

 

 私たちに自己犠牲の作戦を悟らせないためだろう。あの日は最後まで指揮官に近づくことを許されなかった。

 

 絶望の縁にあった私たちに告げられた後方行きは、妥当とは感じつつも、その実質戦力外通告と同義の指示は、私たちの死を意味していた。

 

 そんな中、新型LFが部隊に合流した。

 

 新型LFユーディ。私は彼女が嫌いだ。

 

 彼女は常に虚偽の匂いを纏っている。この部隊への配属も、何かしらの意図を感じるし、新型と言われておきながら外装にほとんどアップデートがないのも気にかかる。

 

 私は、なぜユーディのことがこんなにも気に食わないのか自己分析をした。

 するとわかったことがある。

 

 あろうことか、私はユーディを指揮官と重ねて比較していたのだ。

 

 システムのエラーだろうか?私は自己分析を重ねた。

 すべての物事は現在の状態の経験則から導出可能なはずだ。

 

 そしてたどり着いた結論は、

 

 

 ユーディが指揮官であるという、あり得ない仮説だった。

 

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