オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます 作:モカチップ
最後の看板に辿り着く。
はぁ…スグリくん楽しそうな顔をしながら時々無表情になるから怖すぎるっぴよ!
そりゃ大好きな鬼様の事を隠されたから仕方ない。それでも俺は無関係だからとなるべく顔に出さないようにしてるのも分かってる。
ゼイユも弟のスグリくんを思ってのこと。
だとしても正直に話せば尾を引くようなことにはならなかったと思うんだよなぁ。
加えてアオイちゃんの存在。何もかもが偶然引き起こされた。その中ですれ違いが起き雁字搦めになっていく。
不運にも程がありますよ。
俺は毒にも薬にもならないからセーフ。
看板を読み終えるとスグリくんがぽつりぽつりと語り出した。今朝二人に追い出され隠れて聞き耳を立てたら隠し事をされていた…って悔しそうに二人のことをズルい、と。
……ただ最後に俺に話すことができてスッキリできた。ありがとう、と。
む、胸が苦しい…!
実は知ってましたー! なんて口が裂けても言えねえって。爆発寸前のマルマインの目の前で阿波踊りするようなもんやぞ!
当たり障りのない返事をして最後の写真を撮る。…最後はピースしようぜ! ピース! こんな感じにさ!
「…うん! …へへ、こんな感じ…?」
そうそう! しんみりした顔より笑顔よ笑顔!
スグリくんの笑顔カッコイイんだからさ!
「…! ……の方がカッコイイべさ」
はいピクシーっと!
これでオリエンテーリングツアーは終了か。
あっという間だったな。まだ時間あるしちょっくら見て回ろうかね。スグリくんも一緒にどうよ?
……やることがあるから残ってる?
どうし……! 分かったそれじゃまたね!
その場に残るスグリくんを置いて歩き出す。
あーこれアオイちゃんとゼイユを待ち伏せする感じですね。
アオイちゃんに勝負を仕掛ける姿が容易に想像できる。勝敗はどうであれターニングポイントになるよね。
ゼイユ戦でアオイちゃんの手持ちを見てるからスグリくんが有利ではあるんだろうけど。
冗談抜きでアオイちゃん強いからな。手持ちは三体であり一体目は初めてのポケモンニャオハの進化形であるニャローテで、シンプルなスピードアタッカー。
確認できた技はタネばくだん、とんぼがえりにでんこうせっか。素早い動きで翻弄しつつ不利な状況はとんぼがえりで仕切り直す技巧派。
二体目はイーブイ。あの暴走を見たあとだったからギャップ凄かったな。技はでんこうせっかとスピードスターで中距離を意識した戦い方をする。目測だが技の火力が高い気がするからとくせいはてきおうりょくだと思う。
三体目はまさかのゴーストだった。
技はさいみんじゅつとあやしいひかりの妨害技とワンウェポンのたたりめ。上記のどちらかを相手にかけ、たたりめで一気に決める速攻型だがノーマルタイプには害悪自傷しかできない欠点持ち。
進化形であるゲンガーの進化方法が通信交換。一度誰かの手に渡らなければならない。これに関してはオレンジアカデミーやポケモンセンター等で交換の手続きをすればいいだけなんだけど…。
どのポケモンにも言えるけどわざマシンが欲しくなる。……イーブイの為にあるわざマシンを用意したんだけど間違えて三つ買っちゃったんだよね。
通常の三倍の金額が引き落とされてた時は思わず叫びかけた。ムンクも真っ青の顔を晒していただろう。
もしもあの購入画面の前で確認してポチっていれば、わざマシンをダブらすことなく残りのお金で色んなことができたんだろうか…。
まあ複数あっても困らない。使い切りしか買わないから複数持ってて損はない。
折角だしパルデアに戻ったらアオイちゃんにプレゼントしてもいいかも。お金かかるし学生じゃ手を出しづらいしだろうしさ。……一部は学生じゃなくても出しづらいけど。
チャンピオンになる以上は強くならなければならない。その為には技マシンの予算に糸目をつけてはいけない。
ゲームみたいにわざマシンどっかに落ちてないかなぁ。落ちてたら落ちてたで拾わんけどさ。怖過ぎて触れたくもないです。
気になるけど盗み見る趣味はないし結果は翌日になれば分かる。……難儀だよなぁ。
あれ?
ブツブツ独り言吐いてたらスイリョクタウンに戻っていた。結構歩いてたんだな。
今日も終わり、か。
夕暮れを見て思う。
見て回る予定が考え事で時間を潰した挙句に帰巣本能発揮するとか……。
疲れてるのかな…疲れてるわ。
明日からは自由に散策できる。
風呂入って寝よ!! 布団に飛び込もう!! みんなをモフりながら何も考えずにねりゅ!!
──────────ー
……ああ、良い朝だ。
肌にツヤがある気がする。それぐらいにモフった。…イエッサンとイーブイはもちろんデカヌチャンも余すことなく撫でまくった。
今日は元気に散策をしょうかねー。
ご機嫌なスキップで外へ飛び出した。
「…ッ!」
アオイちゃん! おーはよー!
「…………」
ああ…雨降るかもしれない。
涙目のアオイちゃんを見て頭を抱える。
と、取り敢えず場所を変えまして…。
アオイちゃんの話を聞くことに…。
看板でスグリくんが待ち伏せしていましたと、何を話してたか聞かれ隠してしまった。……最後はバトルになって何とか勝つとスグリくんが癇癪を起こしてしまう。
落ち着かせようとするがスグリくんが隠れて話を聞いてたことを知り、嘘つきと言われゼイユが逆上して収拾がつかなくなりました。
ゼイユとも気まずくなりどんな顔して会えばいいのか分からなくなっちゃった…か。
俺にも隠し事をしてごめんなさい、ね。
…へぇ。
すんげえ拗れてません?
なんなら本編以上の事が起きるんすけど?
ちゃうのよ!!
オーガポンのお面まだ修復してないっしょ? 今からテラス池に行くんよね? なのになんでスグリくんの闇落ち加速しちゃってんの?
はえーよホセ!
……泣いてるアオイちゃんには申し訳ないのですが俺って完全に蚊帳の外だと思うのですよ。…スグリくんのケアはした気がしますけどねえ?
この状況でアオイちゃんのケアは不味い。ストーリー通りならゼイユと口論したスグリくんが…。
「! …おは……」
自宅から出てくるんすよねえ!
すげぇよ笑顔が無表情になったわ再放送かよ。
ビクリと震えるアオイちゃん。
……おいおいどうすんだよこれえ。
おかしいな? 関与してないよな?
だって隠し事をされてました、隠し事をしてましたってだけでオーガポンのことは俺に一切話してないやん?
どっちにつくとかの問題じゃないんだよね。
あ、いい事考えた。しかし苦渋の決断だ……!
いや二人には悪いんですがちょっと頭を冷やして貰いましょう。
アフターフォローはゼイユとパルデア組に任せた!
……はぁ聞くんだけどさ?
その隠し事の内容ってなんなんさ? 二人とも険悪な雰囲気になるのは自由だけど俺はなにも知らないんだよね? 分かる?
そんでお互いの話は聞いてるから言うよ。
どうしたいの? この関係を続けたいの? それとも仲直りしたいわけ? なんも分かんないんだよね。
しかも俺を間に入れて何がしたいの? 相談者であるけど部外者だよね? ……はぁ…オリエンテーリングツアーは終わってるしさ。
「先に帰る」
大根役者も腹をかかえるほどのクソ演技!
いっそ二人の敵になってしまえばいいのさ! 俺という共通の敵を作り、追加で退場してしまえばええんや!
ヘイトを稼ぎ逃げる。それは捨て台詞を吐くが如く。
行き場のないムカつきを互いに愚痴りあえば知らぬ間にフレンズになっている。
背を向けて公民館に向かう。
小さな声でなにか言ってるけど聞き取れない。聞き取りたくなーい!
絶対にボロクソ言われてるで!
怖いよーパルデアに戻ってきたアオイちゃんから笑顔で罵倒されるのが想像できる。
スグリくんとゼイユとはこれでお別れかぁ。
……忘れてたけどガチグマ見たかったなぁ。後の祭りデース!
オーガポンやともっこのお姿も拝見したかったわ!! まだマトモに散策だってしてないから道中でポチエナの大群と戯れたり、ノズパスをピカピカに磨いただけなんだぞ!!
吐いた言葉は飲み込めないのでー!
公民館に突撃ですわ!
ブライア先生。…深刻な顔をしてらっしゃいますが…?
「……君の話し声が聞こえてね」
なら話が早いです。パルデアに帰りたいんですが……本音は帰りたくないけど。
「……飛行機のチケットは直ぐに用意できるものじゃなくてね。早くても三日ぐらいはかかってしまうんだ」
スマホロトムを呼び出し操作をする。
あ……飛行機の事を忘れてましたはい。
そりゃそうです。チケット取るのに…早くて三日? 早すぎないかね?
こっちとしては遅すぎるんすよね!
帰る宣言しといて何残ってんのコイツ? みたいな感じになるのは嫌じゃん? ガバガバルート開拓した俺の自己責任ですけどね。RTAなら即リセ案件。
「此処にはいたくないんですよ」
でも帰る詐欺したくないです。
もう居心地以前の問題でキタカミから脱出した方がいいもん。
残ってたらボコボコにされるって…!
「……わかった。ヤマブキシティのホテルに予約を入れよう。チケットが取れたら直ぐに君のスマホに送る。…一時間後にバスがくるからそれまでに準備をしてほしい」
よし! 詐欺ではなくな……ん?
ヤマブキシティに滞在していいんすか?
「こんなことしたくないさ。でもそのまま戻っても勉学に身が入らないだろう。落ち着く時間が必要だと私は思うよ」
確かに(アオイちゃんとスグリくんは)落ち着く時間が必要ですよねえ。寧ろ勉学は捗りそうだけど…ポケモンバトルは特に……。
「と言っても君一人にはできないから助っ人を呼んでおいた」
助っ人?
「正確にはヤマブキシティに留まるように言っておいた。…彼は隠れて来ようとしてもおかしくないからね。予想通り向かってきていたよ」
……ジニア先生っすか。
「ああ。初めは駄々をゴネてたが君の事を聞いたら残ってくれると言ってくれた」
ジニア先生…! もう足向けて寝れないよ!
「私は疎い所があるがジニア先生なら問題ない。悩みや相談事をするなら適任だよ」
…うっす! 多大なるご迷惑をお掛けしてすみません! ……準備、してきます。
「バス停まで同行しよう」
ありがとうございます。…ストーリーだとトラブルメーカーだったけどやっぱり良い先生だ。これもまた表じゃ見ることができない新たな一面。
それよりも! 合法的にヤマブキシティ滞在権を獲得して嬉しさ大爆発してますよぉ!!
ジニア先生には申し訳ないがこれで良かった気がする。……パパっと準備しますかね!
鼻歌混じりに荷物をまとめていった。
だがこの一件でストーリーが螺旋階段のごとく捻れ曲がったのを知ったのはジニア先生とカントー二人旅行(仮)を終えた後だったり…する。
これだけは言わせて欲しい。
どうしてイレギュラーは発生するんだ……!