オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます   作:モカチップ

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第17話

 とこしえの森の奥の更に奥。

 

「…ワギィァァァ!!!」

 

 荒ぶった赫月ガチグマ。傍には黒ずくめの男が腰を抜かしながら後ずさっていた。見たことがあるような…その服に描かれたRのイニシャル……ロケット団…? 

 

 …ロケット団!? なんで!? 

 とっくの昔に解散してるはず……。

 

 木はなぎ倒され地面は抉れている。

 ……倒れた木の近くには女性が腕に何かを抱きかかえてながら倒れ…ボロボロのリーフィアがサザレさんを庇うように立ち塞がっている。

 

 サザレさん!? …ど、どうなってるんだよ!? …やることは一つ…!! ゴルバットをジニア先生に押し付ける。

 

「なにを…!? 動かないでください!」

 

 そうはいかんのですよジニア先生!! 

 デカヌチャンはガチグマを頼む。…自由に暴れろ!!! 

 

 イエッサンを繰り出しながらサザレさんに向けて駆け出す。…地面に違和感を覚える。これ…はっ!? 

 

「サ!?」

 

 突然に足元が爆発する。だいちのちから…!! イエッサンを抱きしめ回避を試みるが失敗し吹き飛ばされる。…やべっ…! モンスターボールとバッグが……! 

 

 ベルトから外れたモンスターボールと紐が切れたバッグが飛んでいく。地面に叩きつけられた衝撃でアイテムが乱雑に飛び散っていく。

 

 ……大丈夫だよ、な。…気にしてられないか。

 ごめんな! 後で拾うから…! 

 

「ウインディ! しんそく」

 

 ……デカヌチャン!! 

 

「…チャ!」

 

 指示するまでもなく赫月ガチグマに向かって飛びかかりデカハンマーを振り下ろす。…咄嗟に庇う赫月ガチグマだが…不可視の一撃。ウインディのしんそくに怯み隙ができた所にデカハンマーが入る。

 

「ギャッ!?」

 

 よろめくが…全然効いてなさそうだよなぁ。

 …んだばっ!? …いってぇ…イエッサンは大丈夫? …大丈夫そうで良かった。

 

 着地点は偶然にもサザレさんの近く…運が良いのか悪いのか。赫月ガチグマのだいちのちからをマトモに食らってる時点で……。

 

 ……胸が痛い。…これ、骨まで逝ってるかもしれない。……アドレナリンでなんとかなってる気がする。赫月ガチグマを見て興奮しないはずがないよなぁ!? 

 

 よっとと……先ずは…リーフィアの治療を。

 

「…フィ」

 

 大丈夫だよリーフィア。…イエッサン、いやしのはどうを頼む。ジニア先生のウインディとデカヌチャンが足止めしている間に…。

 

 イエッサン? …俺よりも先にリーフィアだよ。ボロボロになるまで頑張っていたんだ。

 ……大丈夫、こんな事は前にも何回もあったから。

 

 イエッサンのいやしのはどう。…少しずつだがリーフィアの傷が癒えていくのが分かる。

 

「フィア!」

 

 …感謝ならイエッサンにしてあげて。それよりも…サザレさん! 大丈夫ですか……! 

 

 安否の確認。…えげつない戦闘音で声を張り上げないといけなくて胸がバチ痛いけど我慢…! 

 

「……うっ…キミは…あ、赫月ガチグマを…」

 

 腕の中に抱かれているのはやっぱりヒスイガーディだった。…怪我はしてなさそうだ。…うわっ!? なんだ……! 

 

 轟音に地響きが起きる。…音の先は隕石が直撃したのかってぐらいのクレーター。…ブラッドムーン…? え? こんなにやべぇの? 

 

 …リキャスト云々込みでも凶悪過ぎないか? …これがアオイちゃんならタイマンで倒せたって…ことぉ? …強過ぎんだろぉ。ネモちゃでもいけそうな気がするわ。

 

「ウインディありがとうございます。不味いですね。…みんなを連れてこなかったのが悔やまれます」

 

 白衣が汚れ…眼鏡にヒビが入ってる。

 直撃は免れたんだろう…ウインディが庇ったから。…今にも倒れそうなウインディを優しく撫でてモンスターボールに戻すジニア先生。

 

 デカヌチャンは……大丈夫そうだけど肩で息をしている。…なんとか避けているみたいだけど時間の問題だろうね。

 

 赫月ガチグマも疲弊はしているがまだまだ戦えそうだ。…流石は一般ポケモン最強の一角。

 

 …不味いな。イエッサンを戦わせるのは難しい。…イーブイとロコンもそう。…アイテムもぶっ飛んで何も無い。

 

 赫月ガチグマはジニア先生に興味を無くしたようで標的がこちらに変わる。…ウインディを倒したことで無力化したと解釈したみたいだね。

 

 まさかジニア先生もここまで強いと思わなかったと思う。俺もそうだよ…強過ぎて普通にビビってますからね。

 

「…逃げた方が良いよ。…赫月ガチグマは危険過ぎるから」

 

 起き上がろうとするサザレさんに肩を貸す。

 と言っても…逃げられる気がしないし逃げたら逃げたでとこしえの森が消えて無くなりそうなんですよね。

 

 それに赫月ガチグマは危険ではない。…人間が何もしなければこんな事にはならなかった。…赫月ガチグマも被害者なんだ。

 

 だがこうなった以上は戦わなければならないよね。……うん、やってみるか!! 

 

「ちょ、ちょっとキミ!?」

 

「なにをしてるんですか!?」

 

 なにって…戦うだけですけど? 

 ジニア先生とサザレさんの叫びを無視し赫月ガチグマの前に立つ。

 

 ……威圧感は凄いけど…ハルクジラよりは小さいんだよなぁ。これはこれで抱き締めてみたいなぁ。

 

 なんて言ってられないんですけど…ね! 

 あぶねっ!! …幾ら攻撃力ヒメグマ以下でもその剛腕で切り裂かれたら細切れになる。

 

 赫月ガチグマの懐に入り込み避ける。

 ……殴る蹴るはしたくない。…どうやって無力化すればいいんだろうなぁ。

 

 無策で突っ込んで…詰んでない? 

 …こ……こうなったら持久戦だぁ!! 

 

 へばるまで永遠にまとわりついてやるからなぁ? …赫月ガチグマって手触りいいよなぁ。フサフサの毛とゴツゴツの泥がベストマッチ!! 

 

 足元でウロチョロし時折感触を堪能する。

 …どれぐらい経っただろうか。…あ、足がががが…。

 

 赫月ガチグマも少し息が上がっている。これでも少しなのか…足が棒になる。お…? 

 

 赫月ガチグマの動きが止まる。…目を閉じて…深呼吸をしている、というか……これって…。

 

 思い出せ…赫月ガチグマの技は…ブラッドムーンとムーンフォース、きりさくで…最後はめいそう…めいそう!? 

 

 なんで今になってめいそうをし…赤い月の様な額が光を放……! 

 

 イエッサン!! ひかりのかべ!! 

 

 喉が張り裂けんばかりに叫ぶ…。イエッサンはひかりのかべを張る、がそれと同時に…ブラッドムーンが発射された。

 

 ……なんで逃げるように言わなかった? 

 めいそうで特殊攻撃が積まれて火力が盛られているブラッドムーンをひかりのかべでどうにかできると思ったのか? 

 

 無理だろ!! 何やってんだよ俺はァ!! 

 お、落ち着…ける訳がない。…黙って見ていることしかできないのだから…。

 

 ひかりのかべが割れ、イエッサン…やサザレさん達がブラッドムーンによって……? …空気が冷たくなった? …と思ったら熱い…ッ!? 

 

 どこからかこごえるかぜ……と、だいもんじが飛んでくる。ブラッドムーンに直撃した。

 

 …が、ブラッドムーンは止まらない。2つの技を消し飛ばしひかりのかべに当たる。ピキッ、とヒビが入る音。

 

 息を飲む。

 

 ……ひかりのかべは割れなかった。…さっきの技が威力を落としたんだろう。……よ、よかったぁぁぁあ!! 

 

 イエッサン! 大丈夫!? 

 震える足でイエッサンに駆け、抱き締めた。

 

「…ッサン!」

 

 頬を染めつつにこやかに微笑んだ。…額に汗をかいている。…ごめんなぁ! …馬鹿な指示をしちまって……! 後で俺をしこたま殴り倒して構わないからなぁ!! 

 

 ……というかさっきの技は誰がやったん? 

 

 正体は直ぐにわかった。…木の影から飛び出す二つの影。……グレイシア…と……キュウコン?なんでこんな所にぃっ!? 

 

「フィ!」

 

「コンッ!」

 

 イエッサン共々飛びかかられ押し倒される。……もしかして…イーブイとロコン…?

 

 グレイシアとキュウコンは頷いた。

 ……進化したの!? なんで!? どうや…あの時か! …でも…良かったのか…? 

 

 イーブイは進化先に悩んでいただろう? それにロコンも……進化はしたくなさそうだった。

 

 ……そっか。…二人が決めたなら何も言わない。改めてよろしく…グレイシア、キュウコン。

 

 さて、と…仕切り直しだな! デカヌチャンは…まだ大丈夫そう?

 赫月ガチグマは……ん? …どうしたんだ? 

 

 黙って見つめている。…数秒の見つめ合い。

 ……ゆっくりと振り返り…森の更なる奥へと歩き出し…消えていった。

 

 ????? 

 ……え? 終わり…? これから第2ラウンド開始じゃなくて…終わり? 

 

 シーンと静まり返る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 ジニア先生が駆け寄る。…腕の中のゴルバットも意識は回復したみたいだね。……あれ? ロケット団がいない……。

 

「ありがとう。おかげで助かっ…顔色が……」

 

 サザレさんも無事…みたいだ。

 顔色? …終わったと思ったら全身の力が抜けて…胸が凄く痛いけど…眠……。

 

 みんな大丈夫…少し眠れば元気に……。

 

「しっかりしてください!」

 

 大丈夫ですよジニア先……。

 

 ……気がついたら病室にいた。

 しかも知らない病院なのよね。

 

 あれ? キタカミの里は? …と思い…アオイちゃん? …ネモちゃ、ペパーにボタちゃんまで…ちょちょちょ!? なんで泣いてるん? 

 

 アオイちゃん…痛い。…ガチで痛い。

 

 ……全身骨折に内臓破裂寸前? …二週間は生死を彷徨ってた…? うっそー! そんなドッキリ…じゃないよなぁ。

 

 そんな折れてたの? …肋の数本だけだと思ってたんですが…だいちのちからやべぇ…あ、ジニア先生は…。

 

 …監督責任で停職…!? いやいやいや! これは俺が勝手にやったこと…! 今すぐジニア先生に土下座して抗議を入れなきゃ…あ、これは冗談? ……やめてくれよ(絶望)

 

 ジニア先生に何かあったらなんでもよ!ガチでなんでも!

 

 ふむふむスイリョクタウンじゃ治療不可能で…ドクターヘリを呼びヤマブキシティの病院まで運ばれたのね。

 

 …四人はジニア先生の引率でヤマブキシティまでやってきた、と。……アオイちゃんは…チャンピオンクラスになったの!? いつの間に…!? …あ、俺が現世と冥府を反復横跳びしてる間に、ね。

 

 スパイス集めも終わってマフィティフも完全復活を遂げて…スター団は終わってるんだよね。え? カシオペアの正体はボタちゃんだったの? 

 

 へーソウダッタノカー。

 

 ……ん? パラドックスポケモン? …エリアゼロ…!? …AIのオーリム博士にタイムマシン!? …ザ・ホームウェイも終わってるのか!? 

 

 目を覚ましたらなにもかも終わってた件について。……アオイちゃんは…交換留学でブルーベリー学園に行くのかぁ…。

 

 ゼイユからの推薦があったんすねえ。

 ん? …もう一人推薦があった……の? 

 

 そ、それは……俺? …いやいやいや!! 

 それは違うよ! …え? ブルーベリー学園の学園長がOKした? 

 

 嘘でしょ…いや、あの人ならやりかねない。

 …アオイちゃんも後押しをしたんですねえ。

 

 へへ……でも! 俺は当分入院だし…。

 …退院するまで待つ? …それはブルーベリー学園に申し訳…もう許可はとってるの? 

 

 ペパーとボタちゃんが目で諦めろと言っている。……ネモちゃは羨ましそうにしてる。

 

 あ、これ……アオイちゃんから逃げられないやつ? …あー…そだね。…隠し事はしないんだよねえ。

 

 ……はは…もうどうにでもなれ…。

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