オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます   作:モカチップ

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第19話

「……大丈夫?アオイから聞いてたけど気になって…」

 

ゼイユだった。

だ、大丈夫…。…あの時は本当にすいませんでしたァ!

 

「…は?……あぁ…!」

 

一瞬首を傾げるも気づいたみたいだ。これはやらかしましたね、はい。黙っときゃ良かったよ畜生!

 

「アンタは悪くないわ。…姉弟のゴタゴタに巻き込んだこっちの責任よ。気分を悪くして帰っちゃったんでしょ?ごめんなさい」

 

ほんともう悲しげな表情で言わないでくれよ。ゼイユってリアルお姉ちゃんとまで言われたぐらいに再現度が高いんだ。

 

あんたのせいで滅茶苦茶だわ!歯を食いしばりなさい!ぐらい言ってくれていいのに!

 

いや、本当に俺のせいなんですって。

良かれと思っていたことが全て手のひらドリルライナーしたんです。悪気は無いけど原因は全て俺なんですよ…。

 

沈黙が辛すぎる。負のオーラに包まれた空間の中でもグッスリスヤスヤピカチュウを見てると温度差で気が狂いそう狂う!

 

ダメ…だ。まだニヤけるな…!

 

ピカチュウが可愛すぎて口角が上がっていくのを表情筋で対抗する。力むことになるから全身が痛いめうよ!

 

…ふぅ……ふぅ……よし、勝った…!

俺の勝ちだ!!えるァ…!?気を抜いたら全身に馬鹿ほどの痛みがぁ!?

 

涙もでてきた。やだ俺の身体ボロボロ過ぎ?

歯を食いしばり痛みに悶えることしかできんぞ!クッソいてぇ…!!

 

「大丈夫!?…えっと……」

 

慌て出すゼイユ。本当に…大丈夫だから。

ちょっと響いただけ。本当に…本当に大丈夫ですので…良ければピカチュウを預けたい……ヲ?

 

ゼイユ、さん?何故…隣で横になった?

そしてなんで抱きついているの?なんで?

 

「……落ち着いた?」

 

…her?

落ち着ける訳ないが?目の前にオクタンみたいに真っ赤になったゼイユの顔があるのに落ち着ける訳ないが?

 

「…小さい頃は泣いてるスグリをこうやって抱きしめてたの。だから…その…」

 

……やっぱお姉ちゃん遂行してるよなぁ。

ただそれは弟だからであって俺は弟ではないんですが…あれ?弟判定くらってる感じ?

 

弟適正はないと思うけど。どちらかといえば兄適正、もねえな。

 

兄弟がいたら軽蔑されてるかワンチャン絶縁じゃね?

 

あ、震えないで振動で痛みが…!!

ピカチュウさんも挟まれて窒息………。

 

「………ピィ」

 

ん?ン?ン?ン?ン?ン?

なんかピカチュウ……透けてないですか?

 

気のせい。気のせいだよなぁ?

質量を持った残像とでも言うのか?

 

それとも寝ながらこうそくいどうでもしてんの?

 

ガチで頭の病院に行った方が良いかもな。

…先生に相談してみるか。イエッサンとも会いたい。定期検査も入院と留学のコンボを喰らってできてないしね。

 

見えてる可能性も考慮して一応聞いてもみましょう。あの、ゼイユ…さん。

 

「……な、なに…」

 

この部屋にピカチュウがいたんですけど何か知ってますか?なんなら今もいますけど……。

 

「ピカチュウ?それに今もいるって…どこに?」

 

キョロキョロと部屋を見渡す。

 

やっぱ幻ぃー!だったか。

なんでもないでーす。もしかしたらテラリウムドームのポケモンが来てしまっただけだと思います、はい。

 

鍵が開いてたのは締め忘れてただけ!これにて万事解決!!

 

「……テラリウムドームにピカチュウは居ないわよ」

 

はい?

 

「生徒でも持ってる人は少ないし…タロ、知り合いが持ってるのは知っているけど」

 

…?????

あれ?テラリウムドームにピカチュウはいない?

 

……あ、たしかに!

パルデアとキタカミの里に生息していたから勝手にテラリウムドームにもいるだろうと勘違いしていたわ。

 

タロちゃんのクイズでピカチュウが出てきてきたのも記憶に強く残っているから尚更や。

 

スゥー…ハァー…早く病院にいこうそうしよう。脳波検査やCTスキャン辺りは確実にやってもらおう。

 

………………………。

……あの…いつまでこの状態でいます?

 

今も痛いけど…それに話を聞く限りは先にアオイちゃんと会っているんだよね?

 

因みにアオイちゃんは……。

 

「大丈夫ー?」

 

「大丈夫ですか?」

 

入ってきました。はい…追加オーダーでタロちゃんも一緒です、はい。

 

二人がこっちを見て固まっています、はい。

薄暗い部屋の中で男女が同じベッドに入っている状況……逃れられぬ業って奴です。

 

実際はマボロシ産イマジナリーピカチュウがいるので…って言い訳は聞かないですよねえ…?

 

「…………」

 

あ、無理だわ。

アオイちゃんの目のハイライト消えたもん。

 

「こ…こういうのはいけないと思います!」

 

タロちゃんは勘違いしています。当然こんな状況に出くわせば勘違いします。残当。

 

ゼイユさんもなんか言ってくれませんか。

マナーモード並に震えてんよ。全身が悲鳴を上げているんよ?

 

泣きたいくらいには痛いんよ?もう泣いてるよ?別の意味でも泣きたくなってきたよ。

 

「……やっぱり私が介助するね」

 

満面な笑顔でゼイユを引き剥がすアオイちゃんさん。

 

あ、はい。よろしくお願い致しまする。

でもアオイちゃんが居ないときは他の人やイエッサンに…うっすなんでもないっす。

 

今日はもう寝ます。アオイちゃんとタロちゃんがゼイユを引き連れ部屋から出ていくのを黙って見送った。

 

……ヤバいです。謝罪する案件がまた増えた。もうキタカミ姉弟に足向けて寝られねえ…スグリくんのこと聞くの忘れてた。

 

あ、明日聞けばええか。

 

「……チャ…」

 

イマジナリーピカチュウはまだ眠っていますよ。今は透けてないし触ることもできますね。

 

やっぱり感触も重さも感じる。体温も…匂いも…えぇ…。

…まさか幽霊とか?ガチグマ戦後に生死を彷徨ったのがきっかけで幽霊が見えるようになった…ないわー。

 

理由は簡単で、ならゴーストタイプはどう説明すんのってことよ。誰にも見えんだぞ?

 

まだゴーストタイプが俺にピカチュウの幻影を見せている方が信じられる。

 

見せるならピカチュウだけじゃなくて他のポケモンも出して欲しいぞ。

 

……イエッサンを繰り出す。

 

「リンリーン♪」

 

やっぱその声は万病に効くんすよねえ。

笑顔とセットで効果倍増ってね!

 

…イエッサン。ピカチュウ見える?

 

「……ッサン?」

 

ゼイユの時と同じで部屋を見渡している。

うーん…イエッサンこっちに来てくれないかな。

 

招きベッドに座らせる。

イエッサンの手を握りピカチュウが眠る胸まで引き寄せた。

 

……ピカチュウは透けてすり抜けイエッサンの手が胸に触れる。…すり抜ける、と。

 

ありがとうイエッサン。

戸惑うイエッサンにお礼をいい横になる。

 

諦めよう俺の叡智ではどうにもならん。

イエッサンも出したしみんなも出しちゃおうか。

 

みんなのモンスターボールは…ありがとうイエッサン。

 

受け取ってモンスターボールを一個ずつ開閉していく。デカヌチャン、グレイシア、キュウコン。

 

デカヌチャンは相変わらず。デカハンマーを置き壁に背を預けて座り込んだ。

 

…グレイシアとキュウコンは目が合うとパァと目を輝かせ今にも飛びかかりそうな所で立ち止まった。

 

めっちゃウズウズしている。

ごめんよ!怪我が治ったらめっちゃもふもふさせて貰うからな!!

 

……おいで。

一緒に寝るぐらいなら大丈夫だよ。

 

グレイシアとキュウコンはゆっくり慎重な足取りでベッドを上り俺を挟む形で左右に座り込んだ。

 

おお…左半身は温かくて右半身は涼しい。

…中心はなんか…なんだ、これ?

 

ただなんだろう。すっげえ心地よい。

グレイシアはサラサラでキュウコンはもふもふ。……天国か?天国だったわ。

 

ふわぁ…これなら良い夢見れ…そ。

 

気がついたら朝だった。

良い夢以前に夢すら見れんかった。

 

疲れてたんだろうなぁ。

…ははっ。…まぁ、ここが夢みたいなもんだしなぁ。

 

みんなの寝顔を見てニヤける。

 

「リンリーン♪」

 

イエッサンには勝てなかったよ。

……寝顔を写真に収めたいな。

 

なんて思いつつ…みんなと一緒に眠り続けるイマジナリーピカチュウを見て思った。

 

寝て起きても消えない、か。

後で先生に連絡しよーっと。

 

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