オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます   作:モカチップ

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第2話

入学してそれとなく授業を受け、それとなーく親交を深めていく。ただ一つだけ除くのであれば──

 

「ルガルガン! アクセルロック!」

 

「デカヌチャン! ハンマーで受け止めろ!」

 

 デカヌチャンとルガルガンが激突する。

 パワーはデカヌチャンに軍配があったのか勢いを殺しつつぶっ飛ぶルガルガン。

 

 だが綺麗に受身を取り高速で接近するルガルガンをハンマーで捌いていく。

 

 ……見えた。

 

「そこだ!」

 

「ッ!」

 

 疲弊していくルガルガンの隙を突く強撃。

 

 クレーターを作り中心にはおめめくるくるヤムチャわんこ。

 

 んー……やっぱ可愛いなルガルガン。

 真昼の姿なのはネモちゃが規則正しい生活をしているからこその進化なんだろうなぁ。

 

 抱きしめてもふもふしてぇ…。

 おっとなんでハンマーをこっちに向けるんですデカヌチャン。

 

 あはは……デカヌチャンは可愛いですね。

 しかし…うーん。

 

 今更ながら強くなりすぎたと時に思う。

 満面な笑みで抱っこされていたカヌチャンの面影は微塵もないなこれ。

 

「…あは! あははは! やっぱり君は強いよね!」

 

 狂気を孕んだ笑みを浮かべているよ。

 あー怖いなぁー。

 

 やっぱりネモちゃはネモちゃだったよ。

 自己紹介の時にバレテーラ、授業が終わった途端に話し掛けられバトルさせられそうになった。……強制バトルやんけ。

 

 同じ入学生ってのもありアオイちゃんが止めてくれていたけど無理だったよ。

 

 これには先生や生徒たちもびっくり。

 そりゃそーよーだってネモちゃはバトルが強過ぎるあまり天才と称されつつも恐れられバトルを断られていた。

 

 ネモちゃ自身バトルの勝ち負け関係なく楽しんでいるんだろうが他はそうだとは限らない。まあ負けるとわかっている勝負に乗らないのが普通だろう。

 

 バトルは何が起こるか分からないから礫の勝算にかけてもいい気がするけどさー。

 

 ということもありネモちゃは本気でバトルをしなくなり欲求不満ちゃん。楽しい楽しいバトルがしたくて堪らなかったんだろう。

 

 ……残念かな、地元最強くらいの知名度しかない俺のこともネモちゃは知っていた。なんならジムチャレンジを制覇していたことも知っておられました。

 

 かなり前の話だぜ? 

 よく知ってたなと褒めてやりたいくらい(白目)

 

 しかもわざわざ大声で言ってくれちゃったのよこのスットコドッコイは。驚きと尊敬の眼差し集中砲火は気が狂うかと思ったわ。

 

 平凡な生徒に徹しようとした途端にこれだ。

 俺はただポケモンと触れ合えれるならバトルは二の次なのよ! 

 

 しっかし最強に恥じぬ強さ。

 少なくとも戦ってきたトレーナーの中じゃジム戦含めてダントツよな。

 

 しかもガキの頃からバトってた俺と違いトレーナー歴は2年ちょっとの筈。…才能も含めて成長速度イカれてんだろ。

 

 もしデカヌチャンで手持ちの一人も落とせなかったら才能の差に打ちひしがれてたかも…なんてな! 寧ろネモちゃにバトられなくなって都合がよろしぃ! 

 

 けどバトルはバトルだ。

 本気でやるしぶっ飛ばされたいやつからかかってこい! バッチコーイ精神でハンマーの錆にしてやんよ! 

 

 次に出てきたのはパーモットか。

 ちっこくて可愛ええなもう!! あの身体からは想像できないほどの力を秘めている。

 

 なによりあののほほんとした顔はヨダレが出そうになる。そいやデカヌチャンもそうでしたねちっこい体にバカ重いハンマー片手で振り回してるし……いけね! 今はバトルに集中。

 

 気がつけば観戦客も増えていた。

 ガヤガヤと声も聞こえる。

 

 ネモのポケモンを倒したとか、何者だよとか…もうあっち側(戦闘狂)に左半身踏み込んでますよ。

 

 ……なんとかこっち側(常人)に戻れませんか? 

 てか連戦の為に少しでも楽をしよう。

 

「デカヌチャン! ステルスロック!」

 

 デカヌチャンはハンマーで地面を叩き岩の雨を落とす。

 落ちた岩はカクレオンの如く景色へ同化する。

 

 ステロは正義。特に一対多数に置いて使える以上使わない手は存在しない。使わないとか舐めプのレベルである。

 

 傲慢よくない。

 

「いいね! いいね! あはは! やっぱり…! パーモット! でんこうそうげき!」

 

 充電完了! いっきまーす! の勢いで電気を纏いミサイルの様に飛んでくる。

 

「デカハンマーでぶっ飛ばせ!」

 

 両手で構えたデカハンマーで縦振りに────

 

 チャイムの音が響く。

 刹那……両者の動きが止まる。

 

 デカヌチャンの眼前ギリギリまで迫るパーモット、と…パーモットの頭を掠らせたデカハンマー。

 

 誰かが息を呑んだ。

 デカヌチャンは興味なさげに振り返りとてとてと戻ってくる。

 

 デカハンマーを置くとさも当然か如く両手を広げ俺を見上げる。……そだな。

 

 今も昔もやっぱ変わらんわ。

 デカヌチャンを抱っこして思う。

 

「もう! 良いところだったのに! 今回は引き分けだね!」

 

 パーモットをボールへ戻す。

 ネモちゃは引き分けだと思っているけど違う。

 

「違うな。俺の負けだよ」

 

「なんで? あのまま行けば相打ちだったよ!」

 

「いや僅かにパーモットの方が早かった。あのままならデカヌチャンはデカハンマーを振り下ろせなかった」

 

 腕の中のデカヌチャンもウンウンと頷く。

 デカヌチャンもそう思うか? これでもバトル歴は長いしこれくらい──

 

「……違うよね」

 

 楽しそうなネモちゃの顔は真剣な表情へ。

 

「どうして?」

 

「ステルスロック」

 

 ……ほう…。

 

「パーモットがでんこうそうげきでデカヌチャンに向かう途中ステルスロックのダメージを受けていた。同時に威力とスピードも落ちていた…そんな中ルガルガンの素早さをものともしなかったデカヌチャンなら簡単に対処できたよね?」

 

「…どうだろうね」

 

「それに初手にステルスロックを使わなかったことも不自然だよ。その方が有利だしわざわざパーモットの前でステルスロックを使う必要がない。初めはミスかと思ったけど……もしかして手、抜いてた?」

 

 ……はぁ、勘が良過ぎないか? 

 違うよな。これは努力してきたネモちゃだからたどり着いた答え、なんだろうな。

 

 好きなことをひたすら頑張ってきたネモちゃだからこそ、か。

 

 ズルしている俺とは大違いやなぁ。

 正直俺の矢印を消したかっただけなんやけど……逆効果だったなぁ。

 

 小細工は通用しないか。

 

「手は抜いてない。ネモに手を抜けるほど強くないし……それに──」

 

「それに?」

 

「お互い様だろ?」

 

「ッ…!」

 

 目を見開くネモちゃ。

 

 そう、お互い様なのだ。

 確かに手持ちは最高なんだろうなぁ。

 

 それでもバトルタクティクスが甘過ぎる。

 先ずはルガルガン。アクセルロックを多様していたが火力はない。牽制やフィニッシャーとして活用されることが多い、と思う。

 

 アクセルロックを使っての高火力技を懐にぶっぱなす、相手のペースを崩し隙を作る、なんなら回避をより良くするための加速装置等のでんこうせっかに似た幅広い活用方法が存在する。

 

 そんなことネモちゃが知らないはずが無い。

 初めから違和感バリバリだった。

 

 しまいにはパーモット。ステルスロックがされたフィールドでバカ正直にでんこうそうげきで突っ込んできたのもそうだ。

 

 脳筋ゴリ押しも良いところである。

 そんな重戦車型のポケモンがする立ち回りをパーモットにさせていることも手を抜いている証拠。

 

 パーモットは小柄で素早くパワーがあり小回りもきく。初心者がゴリ押してくるのは分からなくもないがネモちゃである。

 

 そう! ネモちゃであるんだ。

 知らないはずがない。もしかしたら新たな立ち回りのテストプレイでもしてたとかなら話は変わってくるんだけどさ。

 

 ネモちゃは勝ち負け関係なくバトルを楽しんでいるが遊んでるわけじゃない。常に全力で自分にも、相手にも答えているだけ。

 

 だからこそこんなバトルは望んじゃないんだけどさ。さしずめ他の生徒の二の舞になるかと思い躊躇っていたんだろう。

 

 流石に舐めてもらっちゃ困る。

 これでもジムチャレンジ制覇してるんだ。

 

 はぁ…ネモちゃも苦労してるんだろう。

 他の地方に行けば嫌という程戦えるんだろうけど……ね。

 

 俺もカントーとかホウエンに行ってポケモンと触れ合いたかったなぁ……。

 

 とネモちゃが固まったままや。

 ネモちゃはもちろんデカヌチャンも不完全燃焼だろうしもう1回ぐらいはバトルしてあげようか。

 

 

「もう一度だけバトルするからさ。その代わり……殺す気できなよ」

 

「…え?」

 

「相手の心をへし折るぐらい。圧倒的な蹂躙を見せつけるぐらいにさ。……それでも……最後は楽しかったと思えるほどのバトルをしよう」

 

 本気の本気でね。

 やっぱりパルデア最強にどれだけ戦えるか試してみたいしさ。デカヌチャンがどれだけ戦えるのかも気になる。

 

 てか、なんでそんな顔してんのネモちゃ? 

 肩を震わせてふるふると泣きそうな…!? 

 

 衝撃を食らう。

 正体はネモちゃ。デカヌチャンを抱っこした俺を両手を広げて抱きしめてきた。

 

「…うん……うん! 次は…次こそは本気でバトルしようね! 約束だよ!!」

 

 そ、そんな泣くほどすっか? 

 デカヌチャンもぽかんと口を開けてるよ可愛いなおい。

 

 アドレス交換? お断り……あー! はいはい! 泣かないでくれません!? わかった! わかりました! 

 

 ライバル? いやそれは俺じゃなくてアオイちゃ……おっけいでーす。だから泣き落としはやめなされ……やめなされ……! 

 

 ネモちゃを焚き付けてしまったがこれはこれでありだろう。うん、それでいい……。

 

 少しでもアオイちゃんの負担が軽減されりゃいい……そう思っておく。

 

 流石にデカヌチャンだけじゃ無理よな。

 何とかフルパになるようポケモンを集めなければ……。

 

 はぁ……とんだ入学式だ。

 この後のお楽しみがなきゃ野生のポケモンをモフり倒してたぜ。

 

 ────────────────ー

 

 イエッサーン! 会いたかったよ! 

 

 場所は代わり病院。

 あれから結構経つんだよなぁ。

 

 患者は当たり前として人事も変わり過ぎた。

 唯一の救いはイエッサンと担当医だった先生がまだ残っていることだろうなぁ。

 

 あーん! もうモフモフだし良い匂いがするし可愛いなー! イエッサンは! 

 

「リンリーン♪」

 

 よ゙い゙ごえ゙だ゙ね゙ぇ゙!!! 

 

「……相変わらずだね」

 

 呆れにも似た微笑み。

 これが俺なんでねえ! 

 

 と、モフモフタイムは終了。

 今日は医者から話があると言われたんだ。

 

 椅子に座り向かい合う。

 イエッサンがなんだかソワソワしている。

 

「単刀直入に言うね。イエッサンを君のポケモンにしてくれないかい」

 

 ???? ゑ?????? 

 イエッサンを……手持ちに? 

 

 絶賛宇宙猫でございます。

 ……ふぅ…。

 

 冷静に考えたんですけどなんでですか? 

 イエッサンは貴方のポケモンではないんですか? 

 

 当然の疑問をぶつける。

 見る限りは常に医者の隣に立っている。

 

 あの時じゃ少なかったポケモンも今じゃタブンネやスリーパーなど医療を支えとなるポケモンが増えている。

 

 俺に渡す理由が分からない。

 なによりイエッサンの気持ちもあるし。

 

「意外……でもないか。しっかりとイエッサンのことを考えてくれている。尚更君にはイエッサンを引き取って欲しい」

 

 いや、だからイエッサンの……。

 

「……イエッサンは君が来る日は必ずおめかしをする」

 

「フィル!?」

 

 ……はい? 

 

「君が来ない日は窓から外を寂しそうに見つめている」

 

「ィ……!」

 

 イエッサンが真っ赤な顔で医者をポコポコと叩く。

 

「君に会った日はいつも上機嫌だ。要するにこの子は君の事が好きらしい」

 

 ……は? 

 イエッサンを見る。

 

 恥ずかしそうに顔を隠していた。

 手から溢れた顔は熱帯びていた。

 

 お、おう…………。

 な、なんというか……意外だな。

 

 てっきりウザがられているのかと。

 イエッサンは感謝の気持ちを集めるために仕方なくなすがままされていたとばかり。

 

 感謝はしているよ。

 野生のポケモンだと怪我をするし人のポケモンにやれば犯罪だし。

 

 なんならセクハラに近い。

 イエッサンはメスだし……。

 

 びっくりしてる。

 そ、それで……イエッサンは本当にいいの? 

 

 俺は嬉しいよ。ずっとイエッサンと居られるなんて幸せ以外の何者でもないからね。

 

「……ッサン!」

 

 おっとと…よろしく。

 

「良かったじゃないかイエッサン。これがイエッサンのモンスターボールだ」

 

 モンスターボールを受け取る。

 ……あの貴方のポケモンは。

 

「ああ、イエッサンは僕のポケモンじゃなくて病院で管理しているポケモンなんだ。だから大丈夫だよ。これは病院の総意であり感謝しているんだ」

 

 感謝…? 

 自分で言うのもなんですけどポケモン相手に暴走する変態、または狂人が妥当だと思うんですけど。

 

「……ほんとに君が言うのかい? …君はどんなポケモンでも隔てなく接してくれるだろう? 例えばスリーパーとか今じゃ医療に準ずるイメージがある。けれど過去に誘拐などをしたポケモンとして世間の風当たりが強い。それでも君は関係なくモフり倒してくれたね」

 

 え? ああ…スリーパー可愛いじゃないっすか。毛がふかふかでモフりがいがありましたよ。

 

「初めてスリーパーが来た時は患者は愚か看護師や医者すら当たりが強かったんだ。その中で君とスリーパーが触れ合う姿を見て考えが変わった者もいる。……因みにあのスリーパーはメスだよ」

 

 え…? あ、あー……スリーパーって偏見でオスだと思ってました。…あ、あー……。

 

「驚いたよ。まさか初対面のスリーパーに抱き着くし頬擦りをするし…胸に顔を埋めてさ。…全く君は面白いよ」

 

 あは、あはは……。

 ……セクハラで訴えられません? 

 

「……ぷっ…! はっははは! いやいやそれは無いだろうね。もしかしたら…もしかしたらだよ。スリーパーが君の所で世話になる可能性はあるかもしれないけれどね。……君はポケモン誑しだね」

 

 はは…その時は喜んで引き取らせていただきますよ。どんなポケモンでもバッチコイなんで! 

 

「…全ての人間が君みたいな…それはそれで世界が終わるか」

 

 先生? 

 

「冗談……冗談ではないね。君みたいな子は1人いれば十分さ。イエッサンのことよろしく頼むよ」

 

 はい! それじゃイエッサン……帰ろっか! 

 

「リン♪」

 

「因みに経過観察は……」

 

 了解です! ちゃんと来ますよ! 

 イエッサンの次はどんなポケモンだろうか。

 

 ワクワクが止まらねえぞ! 

 

「……ああ、待ってるよ」

 

 うっす! それじゃ失礼しました! 

 …帰りにスリーパーと会ってこよっかな! 

 

「君に出会えて良かったよ」

 

 イエッサンも一緒に歩こ! 

 ボールに入ってもつまらないだろ? 

 

 そうだデカヌチャンも……デカヌチャン? 

 なんでデカハンマーを俺に向けているんです?

 

 ほらイエッサンも怯えているし…そうだ! 

 この子はイエッサン。今日から仲間にな……ミッ゚…!? 

 

 ストップ! ここ病院だから! 

 怒られるから! ……デカヌチャン! やめて! お願いさ! …デカヌチャンッッ!!!!

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