オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます 作:モカチップ
「バトルしようぜ!」
「うん! バトルコートにいこ!」
鐘の音を皮切りに皆が教室から飛び出していく。ある生徒はバトルを、またある生徒は買い物に……またまたある生徒は────
あーうん、授業が終わった。
授業科目は全部で生物、数学、バトル学、歴史、家庭科、言語学、美術と一部を除けば普通の学校と変わりない。
だが分かっていたつもりだが所々知らない事もあり為になった。
気になることは全て聞いてノートに書き出し寮に戻れば復習。…大人になって子供に戻ったから分かるけど勉強はしっかりした方が良いわ。
将来の為にもなるしポケモンのことをもっと知ることができる。画面の外と中じゃ全然違うってな。
それと青春、も……。
はは……何も無ければ────
「授業終わったね!」
何も、無ければ…。
……隣にネモちゃがいる。
「あ、どうも」
アオイちゃんも。
んん…あのバトルからネモちゃに絡まれるようになった。あれから数日経った。
……ことある事に暴れ回っていたデカヌチャンも最近じゃ大人しくなった。まだイエッサンとの仲は微妙だけど時間が解決してくれるだろう。
イエッサンは相変わらず献身的できゃわいくて俺の理性が死にかけている。寮部屋の家事全般を手伝ってくれてさ。やっぱイエッサンは最高だな!!
「今からテーブルシティ回るんだけど一緒に行こう!」
「……わかった」
もう腕掴んでるやん。
断っても引き摺られるやん。
いつものパターンやん。
アオイちゃんを見ると申し訳なさそうに目を伏せ…若干不機嫌そうな。あー…うん、宝探しの前からネモちゃに振り回されてるんだなこれ。
ゲームでは見れない新たな一面を見れたよ、うん。
これはこれで……青春かね。
「ネモさん! 今日は会議だよ!」
……お? これは…。
廊下から顔を出す他クラスの女子生徒。
「あ…ごめん! 忘れてた! 終わったら来るから先に行ってて!」
「…あ、うん」
腕は解放されネモちゃは教室を去っていく。
残ったのは俺と…アオイちゃん。
おーい? ネモちゃ?
これはまずいですよね?
アオイちゃんと二人きりってマズイですよね? 気まずいレベルじゃないっすよ!
…またアオイちゃんを見る。
どうしたら良いか分からずオロオロしてる。
そりゃ…ねえ?
アオイちゃんとはネモちゃを通じた友達の友達みたいな関係だぞ?
前世の記憶にもある。
帰り道最後の最後で友達の友達と一生分の沈黙を味わったことを……野郎同士だったしなんやかんな仲良くなったけど。
今回は違うやん?
野郎と美少女、モブと主人公なんよ。
それに…ネモちゃは諦めたけど主人公とはお近付きになるつもりはなかった。
宝探しで絆を深めるネモちゃ、ペパー、ボタちゃんとアオイちゃんを含めたグループ パルデア組を影から眺めつつひっそりと学園生活を満喫する。
チャンピオンクラスになるつもりもないし、秘伝スパイスやスター団とも関わるつもりない。
全部アオイちゃんにぶん投げます。
それはそれとして…………。
アオイちゃんは物静かでひかえめな性格。
悪の組織とやり合う歴代主人公と比べると……普通より?
ハルトくんならそんなこともなかったんかねえ。
…うーん。
このままって訳にもいかないですよねえ。
……ネモちゃが来るまでの間なんとかすればいい。
てか人生二周目でなにビビってる。
仮にも人生謳歌した人間やろがい!
……よし。
「アオイ」
「は、はい!」
名前を呼べば背筋をピンと伸ばしぎこちないアオイちゃん。…そ、そんな緊張しなくても…。
「ネモが来るまで適当にぶらつこうか」
「わ、わかり…!」
「敬語は要らないよ。同じ入学生同士仲良くしよう」
……自然と手を差し出してしまった。
目をぱちぱちとさせているアオイちゃんを見ると降ろすに降ろせない。
「…………うん!」
アオイちゃんは顔を綻ばせながら手を握った。それじゃ適当に…スイーツでも食べて。
あ、あれぇ…? アオイちゃん? 手、握ったままなんだけど……えっと?
──────────────
「美味しいね」
「そうだね」
テーブルシティのとあるベンチ。
並んで座りクレープを食べる。
カントークレープはやっぱ美味しいわ。
テーブルシティに5店舗もある屋台。
カントー出身の店主の自慢のひと品。
特にいちごチョコクレープはいちごの甘酸っぱさとチョコの濃厚な風味がマッチして美味しい。
アオイちゃんはバナナチョコクレープを食べている。カットされたバナナが少し大きいのか頬が少し膨れている。
年相応の少女…だよな、うん。
もちろん俺持ちよ。ファイトマネーや駆け回ってた際に拾ったアイテムなどを売ったりでお金に余裕はあるからさ。
しっかしカントーかぁ。
ポケモンリーグの大本営にポケモン界の権威オーキド博士と数ある地方の中でもトップクラスの知名度を誇る。
有名なピカチュウはもちろん! 始まりの御三家ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネなどの名ポケモン。
しかも隣にはジョウト地方もある。
ああーカントーかジョウトで生まれたかった。
あっちじゃ旅はまだまだメジャーだし俺の旅も許されていただろうに…。オーキド博士を見たかったりする。
また今度ダメ元で頼み込むのもありやな。
最悪勝手に飛ぶのも視野に入れても良さそうな……心配かけたくないから無しか。
…はい、えっと…ここまでの間こんなこと考えて気を紛らわせてたんすよね。
いや…その、はい。
クレープを持たない手には熱が篭っている。
先を見る。
指先から手首まで……アオイちゃんの手がしっかりと絡みついていた。
なんなら気付かないうちにお互いの指を絡ませ手のひらを重ねていた。
……これって恋人繋ぎでは?
え? 途中まで普通に手を握ってただけだよな?
は? は? ……落ち着け。
ふぅ…………。
……手を握った教室からここまでずっと手を繋いでいるんですよね。
周りの視線がキツかったので口に出そうと思ったんだけどアオイちゃんは気にしてなさそう、というかなんかご機嫌だったから放っておいたら……。
……アオイちゃん?
どうしたん? 俺の顔をずっと見て…違うなこれクレープを見ていますわ。
考え事をしている間に食べ終わったのか。
ジッと食べかけのクレープを見つめている。
もしかしてお気に召した感じ?
美味しいけど…ひとつ1000円なんだよな。
ラーメンと良い勝負する。
唐突にラーメン食べたくなってきた。
ネモちゃ来たら3人でラーメン食べに行くか?
相変わらずアオイちゃんはクレープに釘付け。……ほんとに好きなんだなぁ。
「食べる?」
「あ、ご…ごめん……食べづらかったよね」
恥ずかしいのか視線が右往左往。
甘いものが好きなのは普通のことよな。
「いいんだよ。はい」
クレープをアオイちゃんの前に差し出す。
あ、食べかけじゃあれだから新しいのを買──
「ッ……あーん」
お、う?
「……うん、こっちも美味しいね」
「でしょ?」
おかしいな。
受け取って貰うつもりだったんだが。
その動作すら我慢できなかったって…こと?
スイーツは別腹っていうし…?
妙に色っぽいアオイちゃんは唇に付いたチョコを舐め取り再度クレープを食べていく。
一体何を見せられているんでしょうか。
押し付けて離れようにも手が離れないし…なんかさっきよりも強く握られてるし…えぇ。
…なんか暖かい視線がチラつくんだよなぁ。
カントークレープの店主に通り過ぎていく生徒や人達。
その特徴的な改造制服とヘルメットはスター団?
「流石にあの空間に入るのはムリっすよ」
「だよな。あの二人って新入生だよな? …え? できてんの?」
できてねえよ!
「見たら分かるじゃないっすかセンパイ。アカデミーからずっと手を繋いでクレープをシェアハピしてるんですよ?」
何を見て言ってんだ……あー…まぁ、うん。
他者から見ればそうなるし言い訳できねぇ。
「マジ?」
「しかも彼氏の方はあのネモと引き分けたって話っす。彼女の方も強いっす」
勝手に恋人にしないでおくれ。
頼むから…お願いします! センセンシャル!
「そうか…」
「嫉妬は見苦しいっすよ」
「うるさい」
「ったく…あたしキリンリキに蹴られたくないんで……あ! あたし達もクレープ食べません?」
寧ろ踏み込んで欲しかった。
バトルでもなんでもするからさぁ。頼むよー。
「そうだな」
「もちろんセンパイの奢りっすよ? あの彼氏を見習っていけば彼女の1人や2人できますよ」
?????
おっとー? …これは……?
「はいはい、わかったよ。今日の勧誘は終わりだ。行くぞ」
「はーい! ゴチになりまーす!」
スター団は去っていった。
……青春してね? 絶対に後輩の子…先輩に対して……はぁ、若いなぁ。
「…ごちそうさま。とても…美味しかった」
食べ終わったん?それは良かった。
ゴミ捨てに……。
「アオイ」
「! …どうしたの?」
「クレープの包装紙を捨てるから──」
「…わかった」
「……」
立ち上がるアオイちゃん。
……立ち上がり2人並んでゴミ箱へ包装紙を捨てる。
そんでまたベンチに戻ってきた。
……手は離れておりません。
ん?????????
これネモちゃが来ないと無理っぽい?
あー…えー………マイッカー(白目)
この後ずっとベンチに座っていた。
気付いたらアオイちゃんとの距離が近づいてたし肩が触れ合いぐらいに近かった。
因みに片手は予想通りネモちゃが来るまでずっと繋ぎっぱなしだった。
後日新入生カップルとかなんとか噂がされてた。