オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます   作:モカチップ

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第4話

いい天気だ……嘘です。

 暗雲が立ち込めておりましなんなら雨がポツポツと降り始めています。

 

 路地裏に入り込み壁に寄りかかる。

 どんどん強くなってるわ。

 

 んー久々の一人なのに運が悪い。

 

 最近はネモちゃかアオイちゃんが隣に居たから新鮮。

 

 ネモちゃは定期的に行われる会議に。

 アオイちゃんはクラベル校長に呼び出され。

 

 コライドンのことだと思われる。

 知っているのはアオイちゃん、ネモちゃとペパーだけ。

 

 宝探しまでは秘匿なんだろう。

 俺も教えて貰っていませんし。

 

 ただ選んだポケモンはニャオハだった。

 見せて貰った時…穴という穴から尊さが噴き出した。

 

 は? 可愛い過ぎなんですけど? 実際脳が融解するかと思ったわボケェ! 顔に出さなかっただけ褒めて欲しいくらいよ。

 

 顔のニヤけだけは止められませんでしたが。

 キョトンと首を傾げた時は燃えるかと思った。

 

 邪心が浄化されました。なんか…もう、さ。

 兎に角ヤバい。他のポケモンにも言えるけどさぁ! 

 

 廊下に出れば生徒たちとポケモンが仲睦まじく歩いてんの! 今の今まで我慢してるけど尊過ぎて死ぬ。

 

 ほら孫子曰く携帯獣と携帯獣使役者の絆は尊みの秀吉とも言いますし。

 

 ああ、愛されてるんだなぁって……良いトレーナーと出会えてよかったなぁって思えるわけ。

 

 同時に俺が如何に終わってるかと理解し自己嫌悪していく…正に無限ループ!! 

 

 クレープを食べた日を境にアオイちゃんとも関わるようになってしまった。

 

 同時にカップルの噂も広まっていった。

 先生すら知ってるんだよなぁ。

 

 クラベル校長に清く正しい男女のお付き合いをするようにと警告を受けたんだものね。

 

 そりゃ……まぁ…こっちとしてはモブらしくクラスメイトくらいの立ち位置に甘んじていたかったんすけどねえ。

 

 なーぜかアオイちゃんの矢印もこっちに向いている気がするんすよ。

 

 最近じゃ2人で買い物なり食べに行ったりと…半ば強引に連れ回されているよな? 

 

 ずっと手を繋いで……お手洗いの際は離して貰っては居るんだけど。

 

 戻れば直ぐにドッキング。

 流れるように手を繋いできて接着剤がついてんのかってくらい離れない。

 

 因みに噂について謝罪したんだけど、寧ろ都合が良いと満面な笑みで返されました。

 

 …男避けになるからと気にした様子はなかったので俺も気にしないことにした。

 

 アオイちゃん可愛いしモテるだろうしなぁ。俺みたいな奴が近くに入れば男も寄って来ないだろうと思ったんやろ。

 

 確かに逆の立場なら絶対に関わりたくはない。ポケモンを見る度に発狂する奴とかろくでもない。

 

 通り魔みたいに撫で回すとかやってることは犯罪者だからな! 流石に確認は取るけどさ! 

 

 友人未満の壁要員やろ。

 宝探しが始まれば自然と関係は消滅することでしょう。

 

 ペパーやボタちゃんとも関わるようになれば名前を知っているクラスメイトみたいな関係に戻れるだろう。

 

 きづいたら土砂降りだわ。

 諦めて帰──

 

 誰か入ってきた? 鳴き声? 

 

 人じゃなくてポケモン。

 

「フィー……フィー……」

 

 ニンフィア…!? 

 あばばばばばば!! 

 

 あの…あの、ニンフィアだって言うのか。

 おお、神よ! …じゃなくてずぶ濡れじゃないか!? 

 

 震えてるし…トレーナーは居ないのか? 

 もしかしてはぐれたとか? 

 

 ニンフィア!? ニンフィアさん!? 

 ここで倒れちゃ不味いですよ!? 

 

 ええと…! タオル持ってねえ!! 

 

 制服でいいか! 

 

 ごめんよ…俺の制服だけど我慢してね。

 

「…フィ…」

 

 小さく頷く。

 よし、了承を得られた。

 

 ありがとう…体は冷たいが額は熱い。

 

 トレーナーさんとはぐれちゃったのかな? 雨の中でもトレーナーさんの所に帰ろうと頑張ったんだね。凄いね。

 

 トレーナーさんのことが大好きなんだね。

 

「…フィー…!」

 

 そっかそっか。

 

 そりゃニンフィアに進化しているんだ。

 ニンフィアのトレーナーは愛情をこれでもかと注いだんだろう。

 

 ニンフィアは懐きを条件に進化する。

 進化だけで愛情は測れないけれど数値化されている点では分かりやすい愛情だろうね。

 

 トレーナーも心配で気が気じゃない筈だ。

 それよりも先にニンフィアをポケモンセンターに連れていかなければならない。

 

 こんな状況じゃなきゃモフり倒したかったんだが……そこまで畜生にはなれないなぁ。

 

 えっと…トレーナーさんの所に帰る前にポケモンセンターに行こうね。この状態じゃトレーナーさんが心配しちゃうから元気になってトレーナーさんと再会しよう。

 

「……フィ」

 

 うん、良い子だね。大丈夫だよ直ぐに良くなる……あ、眠いかな? 今は休んで元気な姿を見せて上げようね。…おやすみニンフィア。

 

 寝息が聞こえる。

 よし…! 

 

 ちゃっちゃとポケモンセンターに行きますか。

 

 ──────────────

 

 ポケモンセンターに駆け込む。

 ジョーイさんに説明する。

 

 事態を把握したジョーイさんはラッキーにニンフィアを預けると直ぐに電話を掛け始めた。

 

 どうやら警察からオレンジアカデミーの生徒のポケモンが行方不明だと報告があったらしい。

 

 トレーナーも必死に探したらしいが見つからずそれでも探し続けていたらジュンサーさんが声をかけたと。

 

 ジュンサーさんがオレンジアカデミー、ポケモンセンターに連絡し小規模ながら捜索がされていたと。

 

 ……テーブルシティって滅茶苦茶広い。

 しかも同じポケモンもいるし路地裏など裏道を含めたらキリがないね。

 

 結構大事になってたんだなあ。

 仕方ないか、トレーナーとはぐれたポケモンを狙う者もいないわけじゃない。

 

 現にニンフィアは路地裏へと入ってきた。

 ……もし遭遇した人が人なら大変なことになっていた。

 

 ジョーイさんは電話を切ると再度電話を掛け始める。

 

 濡れに濡れた服に気持ち悪さを感じつつ…椅子を濡らすのは悪いから入口のマットの上で動向を見守る。

 

 数分の電話をやり取りが終わるとホッと息を吐くジョーイさんは俺を呼びながら手招きをする。

 

 歩く度に張り付く服は相変わらず気持ち悪い。

 

「ニンフィアのトレーナーが来るわ。是非ともお礼がしたいと言っているから待って貰っても良いかしら?」

 

 礼とかいらないんすけど。

 強制なんすねえ……。

 

 え? 感謝状? いらないです。

 大事になりたくないので…。

 

 当然のことをしたと言いますか。

 トレーナーとしてできて当たり前ですから。

 

 ……え゛結構不味かったんですか…? 

 

 良゛か゛っ゛た゛ぁ゛ぁ゛…! 

 笑えないって……遅かったらお互いに探し合っていたのに最後の最後に…て悲しい結末になってたとか。

 

 …疲れた……! 

 帰りたい…けど待たなきゃいけない。

 

 タオルありがとうございます。

 ぶっちゃけ感謝状よりも嬉しいです。

 

「ニンフィア!」

 

 誰か入ってきた。

 焦燥に駆られた表情でジョーイさんに向かい駆ける。

 

 結構濡れてますけど大丈夫? 

 

「ニンフィアは大丈夫なんですか…!」

 

「落ち着いて、もう少しすれば治療が終わるわ」

 

 ショートカットで眼鏡をした女の子。

 アカデミー指定の制服は着ておらず私服。

 

 カラフルな頭やイーブイのリュックは既視感というか…見覚えがあり過ぎるといいますか。

 

 ……ボタちゃんやん!? 

 なんで気づかなかったんだワレェ!? 

 

 ニンフィアじゃん! ブイズやん!! 

 何故気づかなかった!! 

 

 分かっていたら逃げ出してたのに…! 

 しかし宝探し前にこんな事が起きるなんてなぁ。

 

 予測なんてできたもんじゃないな。

 

「……あ」

 

 今気づいたんですね。

 ニンフィアの事でいっぱいいっぱいだったんだ。

 

 しゃーないしゃーない。

 寧ろ一生気づかないままでいて欲しかった。

 

「この子がニンフィアを保護してくれたのよ」

 

 そーっすね。

 ボタちゃんが目を見開く。

 

「……ありがとう…ございます」

 

 ぎこちないお辞儀。

 そんな畏まらなくても…。

 

 ……ふざける雰囲気じゃないや。

 

「どういたしまして」

 

「………えっと…お礼を」

 

 …お礼、ねえ。

 マジなんもないわ。

 

 ないけど…お礼の為に残っといていりませんはボタちゃん的には申し訳なく感じるよな。

 

 ……そうだ。

 

「ならばニンフィアを沢山褒めて上げて欲しいな」

 

「……え?」

 

「君が一生懸命ニンフィアを探していた様にニンフィアも一生懸命君の所へ帰ろうと頑張っていたんだ。だからこそ…沢山褒めて…褒めて褒め倒して欲しい」

 

 クサイ台詞ですわ。

 ちょっとジョーイさんなに顔を隠してるんですか。眩しい…眩しいって外は絶賛土砂降りですよ! 

 

 ボタちゃんなんて固まってるじゃんね。

 こんな事言われても困るか。

 

「…………ニンフィアが」

 

 ってボタちゃん濡れてるから床に雫が落ちて…落ちて……頬から落ちている? 

 

 ちょちょちょ!? なんで泣いてるんでぃすか!? 変なこと言いましたかぁ!? 

 

 ジョーイさん助け…居ないし!? 

 ちょっとサボりはダメですよ!! 

 

 ああ……泣かせるつもりはなかったんだって…! …タオルがある! ボタちゃんの為に用意したタオルだよな! 

 

 ちょっと拝借します! 

 このままじゃ風邪をひきますからね。

 

 ボタちゃんも動く様子はないし…うぅ、捕まりたくないけど! やるしかないじゃない! 

 

 タオルをボタちゃんの頭に被せて、と。

 

「うん、君の事が大好きかって聞いたらさ。元気よく返事をしてくれたよ。…とても大事にされてるんだって直ぐにわかった」

 

 タオル越しで頭だからセーフタオル越しで頭だからセーフ。

 

 くぐもった声。

 小さな泣き声が聞こえる。

 

「とても頑張り屋さんなニンフィアだったよ。ただ俺みたいなのに無警戒なのはよろしくないけどさ」

 

 ホンマにそう。

 俺みたいな奴に身体を預けることはやめた方が良い。

 

 事案になったら洒落にならん。

 

「………自分で言うん…?」

 

 笑った。

 涙声だが……まぁ少しでもリラックスできればいいか。

 

 でもマジで危機感は持って欲しい。ワイトもそう思います。

 

「………ん…ありがと」

 

 タオルの隙間からチラリと顔が見える。

 泣き顔の中にほんの少しだけ笑顔があった。

 

 ガラス越しに日が落ちかけ…分からねえわ。

 天気悪いもん。暗くなってきているのは分かる。

 

 流石に帰るか。

 制服は…まあいいや。

 

 ボタちゃんはニンフィアの治療が終わるまで残るだろうけど…これ以上はなぁ。

 

 元気になったニンフィアを見たら俺が病院送りになるかもしれないからお暇します。

 

「俺はこれで失礼するよ」

 

 ジョーイさんとラッキーにも聞こえるよう声をかけて…ラッキー撫で回しかったなぁ。

 

 走るかぁ。

 と入口へと向かう。

 

「………………待って…!」

 

 ことはできずボタちゃんからの待った。

 

「………ブイズは…好き?」

 

 ブイズ? もちろん……。

 

「大好きだよ」

 

「………わかった。ありがと」

 

「……うん…? それじゃ」

 

 二度目の待ったもなくポケモンセンターを後にした。どうしてブイズの話になったんでしょうか。

 

 俺にはなんにも分かりません。

 ただ…翌日になって嫌でも…嫌じゃないけど知ることになる。

 

 ────────────

 

 今緊急で動画を回して…ませんけど! 

 と、取り敢えず…訳が分からなくて惚けている。

 

 いやね? 寮部屋に帰ってさ? 

 シャワーを浴びて寝た所までは良かったさ。

 

 そんでね朝起きたら机の上にモンスターボールが置いてあったんよ。

 

 デカヌチャンとイエッサンのボールは棚に並べてある。

 

 デカヌチャンはまだ布団の中で寝ているから俺よりも早起きなイエッサンに聞いたら知らないみたいでさ。

 

 どうやらイエッサンが起きた時には置いてあったらしい。

 

 まるで意味が分からんぞ!! 

 悪戯? にしては変わってるし…。

 

 捕獲用のボールが増えるならいっかとモンスターボールを手に取った。

 

 ボタンを押す。

 ほら空のボ────────

 

 不意のフラッシュ。

 一瞬だけ目の前が真っ白になると──

 

 机の上にポケモンが立ってた。

 

「ブイ♪」

 

 マ゜ッ!

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