オレンジアカデミーのモブ生徒になったので影を薄くしていきます   作:モカチップ

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第5話

やっぱりないなーこおりのいし。

 この辺にあると思ったんだけどなー。

 

 鳴き雪が響く。

 立ち止まり振り返れば足音が永遠と続いている。

 

 銀世界が埋め尽くしている。

 

 学園生活も慣れていき宝探しも開始直前。

 色々とあった。まだ本編前なのにイベントが多過ぎた。

 

 アオイちゃんとネモちゃはいつも通り。2人とも正反対な性格をしているのに距離感が近過ぎるのだ。最近は特に近いのだ普通に心臓に悪いのだ。

 

 真人間ならとっくに堕とされている。

 ポケモン好きで良かった(?)

 

 ボタちゃんとは顔を合わせれば軽い会話をしたり、たまーに連絡がありますね。

 

 連絡先を教えた記憶…ないんすけどね。

 ポケモンリーグ相手にハッキングをかけるぐらいよ。

 

 俺のデータを抜き取るくらいティータイムをキメながらこなせるでしょう。

 

 …うぅ…寒っ。

 相変わらずナッペ山は防寒着がないと生きていけないわ。

 

 夏仕様の制服なんて着て行けば霜焼けに悩まされるだろう。主人公も寒そうなモーションがありましたし。

 

 雪降ってるし道理で寒いと……1人の時に限って天気が悪いんだよな。入学する前はそんなことなかったんに。

 

 何故こおりのいしを探しているのかというとマイスイートエンジェルイーブイたんの為。

 

 男の子だった……はい。

 何故知っているのか理由は聞かんといてください。不可抗力なん…です…っ!! 許してください! 

 

 突然舞い降りたきゃわいいの権化。

 微笑むだけで俺1000人は瞬殺できる。

 

 イーブイはボタちゃんからの贈り物。

 ニンフィアを助けてくれたお礼。

 

 ポケモンを贈られるとは思わないよ。

 ラブカスやカジッチュじゃあるまいし。

 

 初めは返そうと思ったよ。

 贈り物として俺みたいな輩のポケモンになりたいかって話。

 

 ボタちゃん曰くイーブイの気持ちを汲み取ったとは言っていた、けど。……ただイーブイを譲り受けると今後の関係がなぁ…。

 

 イーブイがボタちゃんとの繋がりになる。

 そりゃもう強固な鎖に等しいと思う。

 

 …本音は滅茶苦茶嬉しいよ。

 

 パルデアを数年駆け回っているけど出会ったことがない。進化先すら相見えることはなかった。

 

 モブに扱うことは許されないんだろう。

 主人公でも出現率は低いし残当。

 

 遠目や写真越しでも嬉しい。

 そんなイーブイが手持ちになる。

 

 嬉しいに決まってんだろこんにゃろ! 

 ただ運命の収束が怖過ぎる。

 

 …と、いうかもうイーブイが手持ちとして登録されてたんすよね。オレンジアカデミーでは生徒の情報が学籍番号別に管理されている。

 

 様々な地方からやってくる生徒が集っている。だからこその寮制度である。ボタちゃんとかガラル出身だしね。…ネモちゃも別の地方出身だったよなぁ。

 

 学籍番号と登録したパスワードでの閲覧が可能。名前、年齢、クラス、出身、トレーナー経歴や先ほど申したように手持ちなど。

 

 勿論閲覧のみで情報の更新は申請しなければならない。

 

 自分の情報ってどうなってんやろと思い見てみたら手持ちにイーブイが登録されていた。

 

 ?????? 

 初めから返す選択肢がなかった。

 

 送り返される前提で対策していたのか流石ボタちゃんや……はは…。

 

 手持ちが増えることは良い事なので。

 デカヌチャンとイエッサンとの仲も良好。

 

 可愛い弟みたいなものだろう。

 ボタちゃんのニンフィアと同じく頑張り屋さん。

 

 トレーナーとして目一杯可愛がり愛そう。

 あとイーブイに萌え殺されないように気をつけていこう。

 

 慣れていけばいい…無理に決まってんだろぉ!! 破壊力がパネェんだよぉ!! バーカ!! 

 

 は? なんだこの天使は? 生まれたばかりなのかヨチヨチ歩きが可愛いし大人しくだっこされてくれるし色々と無防備だし!! 

 

 窓際で日向ぼっことかしてんやぞ!? 

 頭を撫でればふにゃっ…て! ふにゃっ……!! 

 クソ…! 頭がおかしくなりそうだった。

 

 思い出しただけで頭が沸騰しそうだ。

 

 寝る時なんて自分から腕の中に入ってくるし! スッポリと収まるし毛がふかふかだし顔を埋めても嫌がりも抵抗もしないしデカヌチャンやイエッサンとは違う良い匂いがするし。

 

 朝起きたら目の前に天使の寝顔があるんやぞ? 二度寝して遅刻ギリギリとかザラにあんやぞ!! 

 

 仕舞いにはお風呂が大好きで入浴中に突撃もしてくる。…一緒に入るようになってからヤバい…何もかもがヤバい。

 

 イーブイの身体を洗うとき…は特に、ね。

 素数と円周率を数えたり、限界に達した時には壁に頭を打ち付ける。じゃなきゃダメだって……だからダメなんだって…! 獣になってしまう…!! 

 

 擽ったそうな顔を見る度に鉄格子にぶち込まれるビジョンが見える。モナドの力が発動してるから! 

 

 ……はぁ……はぁ…。

 

 仰向けに倒れ込む。

 冷てえ…頭を冷やすには持ってこいだ。

 

 しかし見つからない。

 ……売るんじゃなかったな。

 

 こおりのいしは店に売っていない。

 

 品揃えは初代ポケモンのタマムシデパートと同じでほのおのいし、みずのいし、かみなりのいし、リーフのいしの4種類のみ。

 

 専門店や掘り出し物などあるが偽物を掴まされる可能性がある。

 

 買うにしても高い。

 売るつもりないだろって値段を引っ提げてたりする。

 

 湯水の様にポンポン出てくることはない。

 イーブイの進化先候補を少しでも増やしておこうと思ったらなぁ。

 

 こおりのいし以外は持ってるんだ。

 ほんま痛いところを突かれたわ。

 

 雪を握り締める。

 進化先はイーブイに委ねるつもりだ。

 

 なりたい自分になるのもよし、イーブイのままでいるのもよし。進化しようがしなかろうが愛し続けることは変わらない。

 

 できることは見守り手助けをすること。

 ブイズ専門の雑誌を買って見せてみよう。

 

 ……ふぅ…探します……か? 

 揺れてる? …地震? 

 

 一定のリズム。

 足音にしては大き過ぎるよな。

 

 起き上がり下を見下ろす。

 ……あれは……()()()()()!! 

 

 うお…デカすぎ。

 全身で抱き着いても溢れんばかりのムチムチボディ。

 

 こりゃたまんない。

 直ぐにでも飛びつきたい、が冷静に考えて4m越えのポケモンの前に飛び出すとか自殺行為です。

 

 流石に命は惜しい。

 

 雪の中を駆ける姿は荒々しくも絵になるカッコ良さを秘めている。

 

 記念に写真でも撮……。

 あれぇ……? 気のせいだろうか? 

 

 ハルクジラの前に誰かいるんすけど…。

 ……ペパーじゃね? 

 

 ハルクジラに見とれて気づかなかったが叫び声も聞こえてくるし、結構不味い感じ? 

 

 ペパーが転んだ!? 

 ハルクジラがペパーの前で足を止める。

 

 ゆっくりと近づいていく。

 なんで…なんで宝探し前からこんなことが起きてんだよ!! 

 

 なに? 俺なんか悪いことした…? 

 デカヌチャンのほっぺで遊んだことか!? 日頃の感謝を込めてとか抜かしてイエッサンにマッサージをしたことか!? それとも何も知らないことを良い事にイーブイ吸いをしたことか!? 

 

 クソ!! 罪状があり過ぎる……っ! 

 悪いことしかしてないじゃないかっ!! 

 

 そうだ! デカヌチャンを突撃させればいい。

 デカハンマーでぶっ飛ばして貰おう。

 

 ……ペパーが居なくなった後にハルクジラに…ありだな! 

 

 ベルトに手をかける。

 デカヌチャン頼むわ。

 

 モンスターボールを──

 

 何も掴めず空を切った。

 ??????? 

 

 モンスターボールは…? 

 ……置いてきたの忘れてたァ!! 

 

 こおりのいしを拾いにいくだけで戦うつもりなかったから全員置いてきたんだった! 

 

「マフィティフ! やめろ!」

 

 気づいた時には駆け出していた。

 ハルクジラからペパーを守るようにマフィティフが座っている。

 

 目をまともに開けず動くことすらままならないのに、だ。

 過去にパルデアの大穴でパラドックスポケモンに襲われたことで重傷を負っている。

 

 それでも…ペパーの相棒として、家族として守ろうと身を顧みない姿は美しく誇らしい。

 

 ペパーは幼い頃から天涯孤独。マフィティフが唯一の拠り所。

 

 宝探しが始まればアオイちゃんとスパイス巡りの果てにマフィティフが復活を遂げハッピーエンド。最後は辛い過去と決別する。

 

 救われるんだ。

 

 ……このままだと物語が終わる。

 偶然居合わせただけに過ぎない。

 

 本当は関わらない方が良い…けど手遅れじゃんね? アオイちゃんもネモちゃもボタちゃんも。……もう無理くない? 

 

 絡まれることが日常化してる時点で詰んでるのよ。今更何をしたところで関係ない。

 

 縁ができるだけだ! 

 するりと間に割り込む。

 

 突然乱入に驚くハルクジラ。

 後退ってますが逃げないでくださいな。

 

「……オマエは」

 

 知ってるんだ。

 あれだけ噂になりゃ知ってて当然だわ。

 

 うっひょー! 間近で見るとやっぱデケェな。

 両腕でこう…ガッ! ギュッ! で抱きしめたい。

 

 どんな感触なんだろうか。

 硬いのか…柔らかいのか…気になります! 

 

 あのーハルクジラさん? 

 すこしだけ……すこーしだけお身体にお触れしても大丈夫でしょうか…? 

 

 すげー嫌そーな顔。

 

 ね? ね? ね? 良いでしょ? 大丈夫! 

 ほんの少しだけでいいんですよ! 

 

 なんか…怖がってる? 

 

 あ! 待ってUターンしないでぇ! 

 逃げないで! こうなりゃ捕まえ……ボールすらねえや。

 

 ああ……行かないでぇ…。

 心の叫びが届かず逃げる様に去っていくハルクジラを見送る。

 

 写真だけでも撮っとけば良かった。

 肩を落として振り返る。

 

 ポカーンとした顔が見上げていた。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ああ……助かったぜ」

 

 我に返ったペパーはマフィティフを撫でる。

 んっ……撫でたい欲を抑えて…目を逸らす。

 

 あれ…雪の中に…いしが……ある。

 ……こおりのいしだ! これ! 

 

 良かった…! マジで良かった! 

 

「なぁ」

 

「なにかな?」

 

 落とさないようにバッグにしまっちゃおうねー。

 

「ポケモン持ってないのか?」

 

 当然の疑問が飛んできた。

 

「アカデミーにいるよ」

 

「……そう、か。オマエ……いやなんでもない。オレはペパー。助けてくれてありがとな!」

 

「どういたしまして。…君のマフィティフとても格好良かったよ。こんな状態なのに君を守ろうとしていた…そうできるものじゃない」

 

「…マフィティフとは小さい時から一緒だからな! それと…分かるのか?」

 

「ああ、だから本当に凄いよ。……ボールに戻してあげた方が良いんじゃない?」

 

 お身体にさわりますよホント。

 

「だな。マフィティフ」

 

「……バウ」

 

 モンスターボールに吸い込まれていく。

 懐にしまい込み…震えている。

 

 ハルクジラに追いかけられたんだ。

 野生のポケモンは怖い生き物です。

 

 個人的には獲…ゲフンゲフン。

 ……違いますねぇ。

 

 寒くて震えているだけです。

 雪も酷くなりかけてます。

 

 なんで防寒着も着ずに雪山登ってん? 

 ネモちゃやボタちゃんに比べるとマシな服装やけどさ。

 

 吹雪いてたら遭難するよ? 

 酷けりゃイキリンコタクシーも飛ばせない。

 

 フリッジタウンに行くか誰かに助けて貰うぐらいしか生存できないぞ? 

 

 体調不良になられて宝探しで支障が出たら困る。こおりのいしは手に入ったし問題ない。

 

 ……普通に寒くて笑えない。

 上着をペパーに羽織らせる。

 

「……オマエ」

 

「フリッジタウンまで送るよ。その後はイキリンコタクシーを使って帰ってね。…マフィティフが治ることを願ってるよ」

 

口だけになりますけど。

絶対に治るんだけど言えないし…。

 

「……ああ。悪いな…洗って返すわ」

 

 別に洗わなくてもいい、なんて言えば薔薇が咲くのでNGです。

 

「わかった。これ部屋番とアドレス。何時でも歓迎するよ……よろしくペパー」

 

 手を差し出し。

 

「っ! ……おう! よろしくちゃんだ!」

 

 握り返された手を引っ張り上げペパーを立たせる。俺より少し背が高いぐらいか。少し裾がはみ出てるけどセーフ。

 

 ……こんなものだよな? 

 絡み相手が女性ばかりだから感覚が分からない。

 

 同性だから言いやすいだろう。これは世界共通よ。アオイちゃんは主人公だから大丈夫なんだろうなぁ。

 

 ペパーと横並びでフリッジタウンに向う。初めて会ったけど話して見ればやっぱり気さくで良い性格。

 

 料理の話題になると活き活きしていた。

 ……ペパーはガチだ。エンジョイの俺には未知の領域。

 

 ただ料理から調味料から何故か秘伝スパイスの連想ゲーム。

 

 ペパー? そんな簡単に教えちゃっていいの? 

 丁寧にスカーレットブックまで見せていただきましたが……距離感もやっぱバグってね? 

 

 まぁ同性だから…問題ない、か? 

 

 うむ最終的に頼まれてしまった。

 噂の新入生の片割れにも頼んでいるが人手は多い方が良いとのこと。アオイちゃんのことですね。ただ片割れとは? なに? 他に新入生いたっけ? 

 

 ………俺か!? 

 忘れてたわ。

 

 ネモちゃと引き分けたのも知ってるし…! 

 アオイちゃんと同じくネモちゃ絡んでいるし噂にもなっているから…。

 

 まあ断らせていただきました。

 アオイちゃんで事足りるし成長する機会を奪うつもりはありません。

 

 緊急事態の時は……うん、やむ無し! 

 

 フリッジタウンへ着くとイキリンコタクシーを呼びペパーを乗せる。

 

 飛んで行くタクシーを見送って俺も帰る……これって一緒に帰れば良かったのでは? 

 

 ───────────

 

 少しだけ早く起きた。

 目の前には天使の寝顔。

 

 一瞬息が詰まる。

 ……幸せだなぁ。

 

 ただいま顔面崩壊しています。

 

「リーン」

 

「おはようイエッサン」

 

 イエッサンはもう起きていた。

 どれだけ早起きしてもイエッサンには勝てなかった。

 

 寝てるのか不安になってきますよ。

 だから沢山の感謝を贈っていきましょう。

 

 制服に着替え、バッグを背負う。

 

「ブイ」

 

「おはようイーブイ」

 

 まだ眠たそうだ。

 昨日は雑誌をずっと見ていたからね。

 

 なりたい自分は見つかったかな? 

 時間は幾らでもあるから焦らないでいいからね。本当になりたい自分になろう。

 

 デカヌチャンも起きたんだ。

 デカハンマーを担いで気合十分。

 

 デカヌチャンは当分バトルすることはないんだろうなぁ。イエッサンとイーブイを重点に育成したいから。

 

 相手が指名をしてきたらその時は…止めるね。しつこい様だと諦めるけどさ。

 

 申し訳ないがモンスターボールに入っててね。……よし、と。皆が入ったモンスターボールをベルトに固定して準備完了。

 

 今日は待ちに待った宝探し。

 アオイちゃんの物語が始まる。

 

 どんな道筋を辿るのか楽しみだ。

 俺は少しでも授業を受けてポケモンをモフり倒す。

 

 おっと通知。

 ネモちゃからだ。

 

 アオイちゃんの部屋に凸ったんですね。

 はいはい、準備できてるから向かうよ。

 

 待ち合わせはエントランスでね。

 ……うん。

 

「いってきます」

 

 ドアを開け外に飛び出した。

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