うろ覚えが雨宮吾郎になったけどさりなちゃんがアクアになってた。   作:邪神ツクヨミ

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なんか続きました、本編と同じところは大体ダイジェストです。


最初の仮面

 

 「……」

 

 何やら慌ただしい病室の外から視線を外し、よくある病室の天井を見ながら今後について考える。

 結論から言えば俺はやっぱり星野アクアマリンではなく星野ルビーになっていた、さっきもう1人(さりなちゃん)の瞳が青色なのを確認したので間違いない。つまり……累計アラフィフは軽く超えている男が唐突に女性になってしまったという異常事態である、これさりなちゃんにバレたら色んな意味で死にそうだな……あーでもどうしよう。

 受動喫煙知識だとさりなちゃんはアクアが雨宮吾郎だと知った瞬間物凄くデレデレになってた筈、ただそれは性別が変わらなかったからの話であって……お互い性別逆転してるこの状況だと逆に色々悪化しかねない、ならどうするか。

 

 プラン1、とりあえず最悪の事態を避けるため最初からカミングアウトしておく。

 もしかしたら……で最初から俺が雨宮吾郎だと話しておくパターン。メリットは成功した場合さりなちゃんのご機嫌取りに困る事がなくなる、デメリットはコミュ失敗時のリカバリーがほぼほぼ不可能である事。最悪は避けられるが最悪を避けられるだけでそもそも拒否られる可能性が高い、だって一般女児の身体にアラフィフ男性の魂が入ってるんだぜ?常識的に考えて気持ち悪いにも程があるだろ。うん、無し。

 

 プラン2、転生者である事すら隠して一般女児を装う。

 そもそも転生者であることすら明かさないパターン。メリットはミヤコさんのタレコミさえ防げば後は流れでゴリ押せる事、デメリットは転生者である以上無垢な子供を演じるのは途轍もなく難しい事。成功さえすれば1番安牌な選択肢だが……色々と難易度が高すぎる、確かミヤコさんのタレコミ未遂は転生者カミングアウトしてたから防げた事態だったよな、猫被ってたら無理じゃね?ダメだこれも無し。

 

 プラン3、転生前を捏造する。

 転生者であることは明かすが男であることは隠し女性であったと捏造するパターン。メリットはバレなければ比較的さりなちゃんと良好な関係を築けそうな事、さりなちゃんも男性の身体になって色々パニクってそうだし頼れる(元)同性(大嘘)が居れば多少マシにはなるだろう。デメリットはバレた場合の反動が前2つの比ではないほど重いこと、ついでに年月が経てば経つほど火力が高くなるおまけ付き。俺が雨宮吾郎である事と同時にバレるなら多少火力は控えめになるだろうけど……それでも扱いに細心の注意を払わなきゃいけない火薬庫を常に抱えて生きていくことになる。ただ……これが1番マシなんだよなぁ……

 

 仕方あるまい、伽藍洞(前前世)の主体性の無さに雨宮吾郎(前世)の女性経験を全てエミュレート。星野ルビー(今世)の演技の才能を最大限利用して生きるための「仮想の人格」を作り上げる、苦労はするだろうけどこれで行くしかない。

 ベースは……研修医時代の先輩でいいか。俺が正式に赴任した頃には転勤しちゃってたけど医者の女性で1番付き合いが長かったのはあの人だ、多分どうにかなる筈。名前は特に考えなくていいだろう、聞かれたらそれとなく理由をでっち上げて誤魔化せばいい。となれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたら天国寄りの地獄に居た。

 

 「いい子でちゅね愛久愛海(アクアマリン)〜っ」

 

 この明らかキラキラネームな名前で私を甘やかしているのは星野アイ(前世の最推し)、最初は夢かと思ったけど現実だった。最初はそれに大歓喜、前世があんまりにもあんまりだった分の揺り戻しが来たのかな!推しに合法的に触れてしかも甘やかされるのサイコー!

 

 ……とか思ってたんだけどそれを帳消しにするレベルであれな事があって。

 それは今の身体が男な事。前世と身体の勝手も違えば出来ることも違う、前世で憧れてたオシャレとかそういうのが何もできないし……何より、アイドルの頂点に立ってせんせと結婚するっていう夢が叶わなくなってしまった。親が最推しなのが100点なら男になってるのが-120点くらいにはマイナスの生殺し状態、正直生き地獄に近いレベル。どうして神様っていうのは良いことと悪いことを同時に運んでくるんだろう……

 

 「大丈夫アクア?うーん……お腹空いたとか……?」

 

 違うんですママ、ちょっと現状に絶望してただけなんです。うぅ……前世と同じ女の子だったらどれだけ最高の天国だった事か……

 

 「私もお姉ちゃんみたいに女の子のままがよかったぁ!」

 「はいはい……何回も言うけどなってしまったものは仕方ないでしょ。それに今の時代はLGBTなんてのが標準的になってるらしいし、アクアも女性らしくしていいんじゃない?」

 「それはそれこれはこれ!なんかこう……生理的に受け付けない!」

 「男の口からそんな言葉聞くことあるんだ……」

 「女だもん!!!!!!……前世は」

 「……やっぱり無理に我慢しない方がいいんじゃない?」

 「それはそれこれはこれ!!!!!」

 

 半ば自暴自棄に近い私の愚痴を聞いてくれてるのは双子であるルビー。私と同じ転生者で前世はせんせと同じお医者さんだったらしい、佇まいから溢れる「大人」オーラが凄まじいし多分本当なんだろう……たまにそれが疲れ果てた社会人のオーラになってる時もあるけど。

 双子だからどっちが姉やら兄やらで色々揉めるかと思ったけど男に生まれてギャン泣きしてたのを慰められてから気づけばお姉ちゃん呼びが自然になってた、そりゃあパニクってばかりの私よりはルビーの方が間違いなく家族として年長者だし当然っちゃ当然だけど。

 

 「ね、お姉ちゃんはママの事どう思ってるの?」

 「不器用で欲張りな子。アイドルと子育ての両立が難しいのなんて分かりきってるのにどうして茨の道を進む事にしたんだろうかなってふと思う」

 「なんでそんな辛辣なの!?」

 

 お姉ちゃんは私みたいなアイ推しじゃない。あくまで「親」で、前世の事もあってか「心配な年下」として見てる節もある。推しの子になって狂喜乱舞してる私とはえらい違いだ。

 

 「……」

 「な、何お姉ちゃん……?」

 「いや、親の裸で興奮するとはその年でお盛んだねーって」

 「違うの!!!!!!そういう意図はないの!!!!!!」

 「分かってる、アクアの中身は女の子だもんね……そういう趣味な可能性もあっただけで」

 「違うの!!!!!??????」

 「お願いだから私にも手を出したりとかは極力しないでね?血の繋がった家族だし」

 「誤解だよぉ!!!!!!!!」

 

 ……ただ、たまにこういう感じで私の事を揶揄ってくる事がある。確かに推しの生まれたままの姿で興奮してた私も悪いけど不可抗力って奴だしそれに私はせんせ一筋だし……!

 

 「……はああ、アクアだけあんな事をしてても悪目立ちするから仕方なく付き合ったけど……2度とやりたくない、視線が集まりすぎて心臓に悪い」

 「ご、ごめんお姉ちゃん……つい本能で」

 「分かってる、アクアがわざとあんなのやる子じゃないのは分かってる……それはそれとしてミヤコさんに負担をかけるのも程々にしてね、アイが忙しくなってきてる以上私達の生命線はあの人なんだから」

 「き、肝に銘じておきます……」

 

 後地味にノリもいい、というか頼めば大体付き合ってくれる節がある。オタ芸やら感想戦やらetcetc……発言は担任教師みたいな感じだけど嫌がってる様子はない、案外お姉ちゃんもこの生活を楽しんでるのかも。

 

 「凄い凄い!お姉ちゃんやっぱ役者の才能あるって!」

 「監督の要望で出ただけだから……あんまり悪目立ちはしたくないし出るにしたって端役止まりにしたい。私はアイみたいな一番星にはなれないよ」

 「なれるよ!絶対なれる!私が保証する!」

 「保証人が身内しか居ないのはなんかやだな……」

 「なんでぇ!?」

 

 アイ()の才能もルビーはしっかり受け継いでた。アイを馬鹿にしたあのクソガキを演技でボコボコにした時は「ざまーみろ!」ってなるより「お姉ちゃん凄い!」が先に来たし……何より演技してる時の「私を見ろ」と言わんばかりの存在感は下手したらママより凄かったかも。将来はママを超える役者……いや、寧ろアイドルに……!

 

 「お姉ちゃん、アイドルなる気とかない?」

 「ないと言えば嘘になるかな。実際に色々やってみてこの身体にはそういう才能が怖いほどあるってのは分かったし……けどアイの娘な訳だよ私は、ただの二番煎じになるかも」

 「ならない、絶対ならない。お姉ちゃんならアイとはまた違う1番星になれる、だから大丈夫。ファン0号が言うんだから間違いないよ」

 「……いつの間に?」

 「将来自慢するんだ、あれは私のお姉ちゃんだって、えへへ」

 「でもアクアの最推しはアイなんでしょ?もしなるとして最初のファンが自分以外最推しなの色々と複雑なんですけど」

 「うぐっ、そ、それは……」

 「冗談、アクアにとっての1番はずっとアイだもんね。それを否定する気はないし……ちょっと挑戦したくなってみた、アクアの最推し塗り替え」

 

 話してみればお姉ちゃんは案外乗り気だったから全力で推しておいた。だって見たいんだもん、お姉ちゃんとママが一緒にステージに立つ姿。あ、この頃になると私も男として生きる事にある程度慣れて感じてたマイナスもなくなってきた。オシャレはお姉ちゃんで色々やればいいって気付いたし。

 

 「いよいよ来週はママのドーム公演……これ夢じゃないよね?」

 「安心しなさい現実よ。ほんと、来るとこまで来ちゃった感じ」

 「相変わらずなんでお姉ちゃんはそんなに他人事なのさ……もっと喜びなよ、ドームだよドーム」

 「だからイマイチそういうの分からないんだって……まあでも、晴れ姿はやっぱり気になるかな。ほんと、立派になっちゃって」

 「喜ぶは喜ぶでもファンじゃなくて親の喜び方……」

 「ファンじゃないからね、あくまで家族」

 

 天国寄りの地獄は時間が経つうち本当の天国になってた。ママがいて、お姉ちゃんがいて、ミヤえもんや社長が居る幸せな時間。それが時間の許す限りずっと続くと思ってた。

 

 

 

 

 「ルビー!ルビー!……先生!」

 「ねえママ……何が……」

 「来ちゃダメ!アクア!」

 「ねえってば!?何が起きてるの!?教えてよママ!?」

 

 ……()()()()()が刺された、あの日までは。




続くかもわからん。

よければお願いします。



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