みんな違うバックボーン背負って

誰かのため 幸せ祈ってる

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 都会と言うものは人が集まるから物が集まるのか、物が集まるから人が集まるのか。ともかく、日本の首都東京。ここにも様々な物は集う。美術品などの高級な物から始まりアイデア品などの生活に寄り添おうとするそんな安価品まで、現代日本においてそのほとんどの出発点は東京から始まる。

 最近、チーズケーキが再ブームを起こしているらしい。何故今更、そう思っても流行と歴史は繰り返す者なのだから言っても意味がない。なにより、美味しいスイーツを前にそんな文句が出てくることもない。

 

「ごゆっくりどうぞ~」

 

 少しずつ薄着に切り替えたくなるそんな季節。エイシンフラッシュとそのトレーナーは都心のケーキ屋に出向いていた。その目的は最近流行しているチーズケーキを食べること。彼女の夢のための修行、その一環としてのお出かけであった。

 朝から向かったというのに大行列を超え、午前の分ラスト2組。このギリギリに滑り込んだのだ。最も、イートインをする組は珍しいようで今店内にいるのは彼女らともう一組。蛍光オレンジのパーカーを着た可愛げある現代青年と短い袖の服に腕を通した所謂ギャル、の組み合わせだった。

 

「…召し上がれ、フラッシュ?」

「はい…では」

 

 昼休憩ももうすぐと言うことで今の店内は静かで落ち着いた空気が流れる。

 フラッシュは出されたケーキを眺め、フォークを通す。しっとりとしたクリーム色のケーキはフォークを優しく受け入れ、その底の層へ金属の通り道を作る。

 

「Wow!この生地、柔らかいですね」

 

 底のクッキー生地をフォークで切るのに手こずり、形を損ねてしまうというのはチーズケーキあるあるだろう。しかしながらこのケーキはクッキー生地に適度にクリームを混ぜ込み風味を保ったまま柔らかさを作っていた。

 

「では…」

 

 ごくりと唾を飲み、切り取ったケーキを口に運ぶ。丁寧に咀嚼し味蕾の各所を刺激させればその味は…。

 

「ん~!このチーズケーキ、しっとりとしててそれでも柔らかくて!ちょっぴり酸っぱいけど、その方が普通のケーキより甘いかも!それにフルーツ!砂糖のコーティングだけど、果実自体は酸っぱくて…でも酸っぱさの種類は違くて…色んな甘さも楽しめる!美味しい!」

「それな!このジャムとかめっちゃ美味いし!」

「あっ…こんにちは!よろしくね」

 

 その時だった。もう一組の客の男の方が大きな声で食レポをした。心底美味しそうで楽しそうな声色だから注意しにくいが、味の分析を行っているフラッシュにとっては少々妨げになっていたのではないか。そう思いトレーナーが彼らの方を向こうとする。

 

「フラッシュ…」

「いえ、彼の食レポは正確でしょう。ブルベリーではなくラズベリーを使用しているのも、またジャムを少量にしているのも、チーズとベリーどちらもの風味を丁度良く活かす手腕のはずです」

 

 が、たしなめられてしまった。少し上がった口角で彼女なりにケーキへの賛辞を述べる。トレーナーも彼女の喜びに呼応し、くすりと笑みを浮かべる。

 

「いやはや…嬉しいですね!」

 

 奥から声がし店主が姿を現す。40代に差し掛かる程だろうか。中年の男性が嬉しそうな笑顔を浮かべていた。フラッシュと青年がつい、立ち上がりパティシエに寄っていた。

 

「「あの…!」」

「失礼しました。先にご感想を述べていたのは貴方でしたのに」

「ううん俺こそ。ついはしゃいじゃって…」

「お2人がご満足いただけたようで私も嬉しい限りですよ。でしたら…まず、そちらの方からお話を…」

 

 店主が青年の方を指す。青年が少し照れながら口を開いた。

 

「良かったらこのケーキのコツを教えて欲しくて。この生地とか、ジャムとか!」

「…!私も同じくです。可能な限りで良いので勉強のために教えていただけると幸いです!」

「ぜひぜひ!こうして語らう時間、すごく久しぶりなのでどんどん教えちゃいますよ~」

 

 そんな楽しそうな声を響かせながら、3人が店の奥へと消えていく。そんなあっさり承諾してしまうなんて、余程こういう機会に飢えていたのだろうか。あっという間に進展してしまうことに驚きながらトレーナーはコーヒーを口にする。

 

「なんか、ウチの連れが事を大きくしちゃって…すみませんね」

 

 それは青年の連れも同じだったようで、少し気まずそうにギャルが話しかけてきた。

 

「いやいや。彼女もいい機会ですし、きっかけをくださってむしろ感謝したいくらいですよ」

「でもデートだったんじゃ…」

「それはお互い様なんじゃないんですか?それに…あの子の夢ですから。その為の時間ですし」

 

 本心だった。フラッシュの夢のための時間であることに変わりはないし、むしろただ食べるだけじゃ得られない知識や技術・アイデア。そういったものを吸収できるいい機会だろう。トレーナーとしても、大賛成だったしそのきっかけを作ってくれた彼へ感謝したいくらいだった。

 

「ウチもです。ウマショーの…彼の夢になんか活かせることがあればいいなって」

「似た者同士…って感じですかね。…パティシエかなにかを目指して?」

「そんな感じです。幸せなお菓子屋さんになるって言って、試行錯誤して」

「素敵な夢ですね」

「ウチもそう思います。…彼女さんも似た感じの夢なんですか?」

「まだ恋人じゃないんですけどね」

 

 パティシエは確かにメジャー寄りの夢だろう。しかし、互いにこの年齢までこの夢を抱き続けられるのに確かな情念が存在している。幸せと、誇り。笑顔を産み明日へ頑張るための手助けのお菓子。

 そんな幸せを彼女らは夢見ている。それを支えるのもまた…。

 

「…ご両親にも誇れるような、そんな完璧なマイスターになるってのがあの子の夢で。…幸せですね。夢を応援できるって」

「…!ですね。誰かの幸せを祈れるって、すっごく素敵だと思います。それに、一緒に頑張るっていうか…夢に向かって頑張れる気がして!」

 

 彼の夢を応援して、自分の夢も応援されて。そんな仲間の関係性が彼女に勇気をくれる。どんな状況にも怖気ない、根っからの強さを。

 夢を応援して応援されて、時に助けて助けられて。そうやって日々を送り夢へ日常を積んでいく。楽しく、充実していて、幸せな日々だった。

 

「いいこと言いますね!…そっか、一緒に頑張るか」

「そうそう!!一緒に頑張る方が頼もしいですもん!」

 

 トレーナーという職にいる以上そう知ることはない味。でも確かに…その幸せは何よりも甘美なのだろう。それこそ、今ここにあるケーキよりも何倍も。

 そう思い、フォークでケーキを切り取り口に運ぶ。しっとりどっしりとしたケーキは安定してフォークに乗り口腔内へと…。

 

「ん~うっま!」

「おっ!いい笑顔!」

 

 人生の甘みもその場の甘味も、欲張りで行こう。そうトレーナーは思った。

 それから20分もしない内にフラッシュと青年らは厨房から帰ってきた。2人とも顔に満足の2文字が浮かび上がっており、有意義な時間を送れたのだなとトレーナーは安堵する。

 再び席に着いたフラッシュは教わった知識を確かめるかのようにより一層丁寧に残ったケーキを食していく。気づいた点は時折手帳に事細かに書き込んでいき、ただでさえびっしり書き込まれている手帳の余白をさらにキツキツに詰めていく。

 そんな味の勉強をすること15分程度。ようやく完食をしたフラッシュらが会計をしようと席を立つと、丁度もう一組も同じタイミングで席を立った。青年の手元にはカラフルにデコられたノートがあり、つくづくフラッシュと似た者同士なのだとトレーナーは微笑する。

 

「「ありがとうございました!」」

「これ、お二人にお土産。午後の商品だから、内緒ね。また来てね!」

 

 見計らってか会計前に店主が紙袋をそれぞれ手渡した。底を支えるかのようにして持てばひんやり指先に冷たさが走る。ドライアイスもきっちり入っているようだった。ただ…

 

「すみません。クール便で送ってっていうのは難しいですか…?」

 

 スケジュール無視で一度帰宅を選択しても帰りまでは1時間は優に超す。土曜日の昼、電車も相当には混んでいるであろうし何よりこの天気だ。夏になりかけの今ケーキを長時間持ち歩くのは危険極まりない。

 流石にどうしようもなく、エイシンフラッシュは頼み込む他なかった。

 

「そうだよね。トレセン生だから府中だもんねごめんごめん。それじゃ、郵送で送っておくから…」

「本当にありがとうございます!」

「スマートファルコンへのお土産にする?」

「そうですね。寮でゆっくり食べようと思います」

 

 渡された郵便の配送票を書き込んでいると、そのうちに青年らが会計を済ませていく。紙袋を受け取った彼らもまた、楽しそうに笑いながら店を後にするのであった。

 

「やったねウマショー!」

「そうだ!ハントも誘ったら来るかな?」

「あ~…ウマショーの誘いならなんだかんだ来るっしょ」

「そうだよね!…ありがとうございました!」

 

 程なくして店を後にし、道端でフラッシュらはスケジュール帳をめくる。思わぬ収穫で30分ほど当初のスケジュールからは遅れている現在時刻。次なる目的のお店まではそう離れていないとは言え、どうしても現在の状況にむずがゆくなってしまうのがエイシンフラッシュと言うウマ娘であった。

 

「スケジュールは大丈夫そう?」

「思わぬ収穫ではありますが…そうですね。次のお店までの移動時間を少し詰めていきましょう。少々忙しくなってしまいますが、よろしいでしょうか」

「もちろん!」

「では行きましょう。あまり時間はありませんよ」

 

 急いでいるから仕方がないとはいえ手を繋ごうとする素振りもないのに寂しさを覚えながらも、彼も後に続く。今朝よりも口角がほんのり上がりながら速足をするフラッシュの横顔を見ながら、トレーナーはぽつりと尋ねた。

 

「…ね、フラッシュ」

「どうされましたか?」

「幸せ?」

「はい。こうして真摯に目標に向かって研鑽を積めること。これは紛れもなく、私にとって幸せなことです」

「なら良かった」

「あの…どうして急にそのような質問を?」

 

 トレーナーの脳裏に浮かぶのは先ほどの会話。幸せを祈る。とっても素敵なことだろう。自分だけでなく他の誰かの幸福を心の底から願える。心があるから愛しているからできることだ。もし祈るだけじゃなく、その手助けまでできたらそれはきっと、自分にも幸せをくれる素敵な行為。一緒に幸せになれるなんて、この上なく素晴らしいことだろう。

 幸せになって、共有して、そして誰かにその幸せを分けていく。それがいい。

 

「…君と一緒の時間をこうして過ごせることが幸せだなって。俺も、君と長くいるならお菓子作り勉強してこっかな」

「っ…!もう!行きますよ!」

「りょーかいっ」

 

 きっと長い人生だ。こうした幸せを、何度も噛み締めることになるだろう。この幸せを打ち消してしまうくらいの悲しみを正面からぶつけられることだって両指では足りないくらい来るだろう。

 それでいい。幸せも、悲しみも、忘れて新しい幸せを見つけに行く。それが生きるということだから。でも…でも、彼女()が隣に居てくれるなら必ず心のどこかに幸せを抱いていられるだろう。

 その気持ちを相手も持っていればいいな。そう思いながら、2人は今日も並んで行く。




書くにあたって思い描いてたチーズケーキを食べれなかったから食レポが甘いかも。ケーキだけにってか

気が向いたらこれの続編は書くかもですが、正直ちょいコラボくらいの気持ちで書いてるので多分書かない。希望があったら書くかもな~くらいですね
何とコラボしてるか?

みんなもvシネガヴ見に行こう!
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