目の前で強力な魔力反応、これって逃げたほうがいいんじゃないかな?
『どうだろう。今の優じゃあバレる心配はないと思うけれど』
そうは言ってもさルカさん。僕はあの声の持ち主を助けに来たのであってなのはちゃんを助けに来たわけではなかったんだよ?
まあ、襲われてたから助けたんだけど、それでも彼女なら自分でどうにかできそうなんだよね。
『じゃあ、君はどうするつもりなんだい?見捨てるかい?』
…それはないかな。
まあ、ばれないんだしこのままで大丈夫か。あの声の主はどうやらあそこにいる動物みたいだし恐らくはなのはちゃんがあの姿になったのもあの動物のせいなのだろう。
そう考えれば来て損した気分にもなるけれど、過ぎたことをグチグチ言っても仕方ないよね。
右手で掴んでいる怪物が蠢くのが伝わる。動かれるのも厄介なので、左手の木刀を振り下ろしてダメージを与えて動きを止めておく。
なのはちゃんの様子から見てこの怪物の対処方法はわかっているようだ。こちらへ手に持っている棒状の物を向けている。
「リリカル、マジカル」
なのはちゃんが杖を振る度に、更に魔力の反応が上がるのがわかる。
何をするのだろうか。とてつもない攻撃で怪物を消滅させるのだろうか。それだったらなのはちゃんの危険度ランクが跳ね上がるんだけど
「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」
動物が叫ぶ。
今思えば動物が話すのっておかしいんだよね。今の僕も喋らずに看板で意思を伝えるのに
それよりも、あの動物の言うとおりならなのはちゃんがしようとしているのは封印なのかな?
「ジュエルシード、封印!」
なのはちゃんの声で確信する。更にあの怪物がジュエルシードという名称なのだとも理解した。
宝石の種、恐らくはその訳でいいんだと思うんだけど、どういった意味を持ってそう名付けられたのだろうか。少なくともあの怪物に宝石のような要素は無いと思うんだけど。
そうこう考えているとなのはちゃんの杖から翼が生えてこちらに帯状の何かが向かってきた。
すぐさま右手を振り、手に持った怪物を帯状のものへ投げつける。
帯は怪物を絡めとるように縛り付いた。
そして、怪物の額が光、アルファベットが浮かび上がった。X,X,Iの3文字
恐らくは数字の21を示すもの。
「リリカルマジカル、ジュエルシードシリアル21、封印!」
最後になのはちゃんがそう告げると帯状の光が怪物に向かい、その身体を貫いていく。
え?封印じゃないの?普通にダメージ食らってるみたいだけど。
そして、その後怪物は光を放って消滅し、その後には宝石が転がっていた
これがジュエルシードの由来といったわけかな。
目の前に転がる宝石を前に無言で佇んでいると、なのはちゃんと動物がこちらへ歩いてきた。
回収するつもりなんだろう。どういったわけがあるかはわからないけど特に邪魔する理由もないため大人しくしておく。
「これが、ジュエルシードです」
動物が告げる。良かった、僕の仮定論はあっていたんだ。
僕が、両手を組んでうんうんと頷いているとなのはちゃんが手に持った杖、レイジングハートというらしいが、それで宝石に触れ、杖の中に宝石をしまい込んだ。
僕はそれを見届けると、そのまま去ろうとしたのだが、動物が倒れ、なのはちゃんの変身も解け、更に遠くからサイレンの音が聞こえてきたためなのはちゃんを連れてその場を離れることにした。
◇
「すみません」
【
安心のルビ付き看板。これなら小学生でも問題なく読めるでしょ。
まあ、なにはともあれ。動物となのはちゃんを連れた僕は近くの公園に2人?を座らせた。
そのタイミングで気絶していた動物が起きてしまい、なのはちゃんも心配そうにその頭を撫でていた。
お腹に包帯を巻いてる所を見ると怪我でもしているのだろうか?
「怪我は痛くない?」
なのはちゃんも同じことを思っていたみたいでそう尋ねた。
動物は少し身体を起き上げてなのはちゃんの顔を見てから少し笑いつつ言った
「怪我は平気です。もう殆ど治っているから」
そして身体を震わせてその身体に巻かれた包帯を解いていく。
随分器用なんだね。今度猫さんにそんなこと出来るか聞いてみようかな
「本当だ、怪我の跡が殆ど消えてる。すごい」
「助けてくれたお陰で残りの魔力を治療に回せました」
魔力ってそんなふうに使えるんだ。みんなの術だと基本的には魔力は攻撃、回復は気って感じだったからなぁ
「貴方にも感謝しています。ありがとうございました」
動物はくるりとこちらへ身体を向けて頭を下げる。
僕はせっせと看板に文章を書いて、言葉を彼らに伝えた
【
「そうですか。」
それに納得したのか、改めてこちらを向いてきた。
綺麗に整った毛並みに緑色の瞳。どう見てもフェレットのような動物に見える彼が話しているのには少し違和感を感じてしまうね。今僕パンダだけど
「ねえ、自己紹介していい?」
そう話すのはなのはちゃん。その瞳が映すのはなにか。
動物はそれを了承し、僕もそれを頷く事で了承の意思を示した。
「私、高町なのは。小学校3年生。家族とか仲良しの友達はなのはって呼ぶよ。」
最初に咳払いをしてから告げた自己紹介文。そうか、僕は仲の良い友達だったのか。
あまり遊んだ事も無いから仲が良いとは思ってはいなかったんだけど…なのはちゃんにとってはそうなんだね
まあ、嫌じゃないし、寧ろ仲がいい友達が出来るのは嬉しい事なんだけど。なのはちゃんの正体が掴めないんだよね
「僕は、ユーノ・スクライア。スクライアは部族名だからユーノが名前です。」
海外の動物だったのかユーノ君は。
ああ、でもユーノちゃんの可能性もあるのか
【
僕の紹介文を呼んだユーノ君(仮)は少し怒った感じで、「僕は男です!あと雄雌じゃなくて男女!これでも人間なんですから!」と言われた。今は魔力が少ないためこの姿で回復するのを待っているとも言っていた。
そうなのか。魔力って本当に便利なんだね。出来れば色々と教わりたいものなんだけど
と、ここでなのはちゃんが思い出した、というよりも何かに気付いたかの様子で口を開いた
「貴方、優君じゃない?臭いも似てるし」
臭いって何?
って、何でわかったの!?
【
その言葉になのはちゃんはおかしいなぁ、と首を傾げながら納得した。
なんとかごまかせたようだけど、尖すぎる気がする。やっぱりなのはちゃんは警戒しないと…
それから、ユーノ君はなのはの家で預かることになり2人と別れた。
それにしてもジュエルシード、人の願いを間違った方法で叶える物かぁ。
しかも危険物。そんなものがこの町に降ってくるなんて。もしかしたら転生者はこれを解決するために憑依するつもりだったのかな?
まあ、憑依はされたくなかったけれど、それくらいの目的なら僕が代わりにしてあげようかな。
そう考えつつ帰宅し、パンダ師匠なりきりセットを脱いでからお風呂で汗を流す。
今日会ったことを皆と話しながら眠りについた
◇
次の日、学校で相も変わらずの日常を過ごした僕は、放課後に友達と過ごして楽しい時間を過ごした。
優君にはジュエルシードセンサーは備わっておりません。
神社のジュエルシードはなのはさんが問題なく封印致しました。