憑依拒否   作:茶ゴス

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第8話「それは、まずいことになりそうで」

「ユーノ君、管理局って何?」

 

 

 先程あの黒色の少年が自分のことを管理局の執務官と名乗っていた。

 その時にユーノ君が知っているふうに管理局って呟いていたので、問う。

 

 何かの管理でもしている集団なのかな。管理って聞くと中間管理職って単語を思い浮かべちゃうね。

 

 

「時空管理局と呼ばれる集団で、異なる次元に存在している世界が互いに干渉してしまう出来事を管理しているね。」

 

「みんな魔法使いなのかな?」

 

「全員ってわけじゃあないけど、僕の魔法も彼らが使う魔法と同じ物を使ってるね。」

 

 

 つまり、魔法使いの集団ってことなのか…これってまずいんじゃないの?

 

 

『ああ、まずいぞ優。このままじゃあお前はモルモットだ!』

 

『ちょっと、ルーク!?』

 

 

 じゃあ、逃げないといけないよね。

 

 

「ユーノ君」

 

「どうしたの?」

 

「結界任せたよ。」

 

「え?優!?」

 

 

 地面を思い切り蹴り、空中へ逃げる。

 実験動物(モルモット)なんてゴメンだよ。絶対に捕まりたくないね。

 

 

「逃すか!!」

 

 

 少年が射撃魔法を放ってくる。やっぱり僕を捕まえるつもりなのか!

 ラウンドシールドを30枚張る。これで、防ぎきれるのかな?

 

 

 って、一枚のとこで跳ね返っちゃった。何だ、大したことのない威力でよかった。無傷で確保すべきだと手加減したのだろう。

 まあ、今はその手加減に助かったかな。このまま逃げさせてもらおう。

 

 ラウンドシールドを足場に空中で再度加速して離脱する。

 その際にシールドが割れちゃってたから、僕の脚力はあの攻撃以上はあるのだというのは判明した。

 

 取り敢えず、暫くは裏山に潜伏しようかな。

 

 あそこなら姿も隠せそうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「優、ジュエルシード持って行っちゃった」

 

 

 跳び去る少年を見て悔しがるのは黒衣の執務官。

 呆れるのは小動物の姿をした少年。

 目を輝かせるのは白い魔法少女。

 それに便乗して離脱したのは黒の魔法少女とその使い魔だった。

 

 その様子を見ていた女性、リンディ・ハラオウンは溜息を吐きつつ黒衣の執務官に通信を送る。

 

 

『クロノ、お疲れ様』

 

「すみません、逃してしまいました」

 

 

 及第点とは言えぬ結果だが、最悪ではないため取り敢えず女性は大丈夫だと黒衣の執務官に告げる。

 そして、少し横に視線を移して、小柄な少年が跳び去った方向を見ている少女を見た。

 

 

『クロノ、そちらの方々にちょっと話を聞きたいからアースラに連れてきてくれる?』

 

「了解です。すぐに戻ります」

 

 

 通信を切り息を吐く女性は、今もモニターの前で作業をしている船員に指示を送る。

 

 

「追跡はどう?」

 

「少女と使い魔の方は多重転移で逃走したため、追跡は無理ですね。少年の方は山に入り、穴を掘って隠れたため、見失いました。」

 

 

 逃走方法に随分と差があるものだと感じつつ女性は山の監視を続けるように告げて自室に向かった。

 取り敢えずは現状の確認と、逃走者の情報を聞き出さなければいけないと頭に入れつつ、その歩を速めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「さて、何から話してもらいましょうか。」

 

 

 お茶に砂糖を入れつつ女性は2人の少年少女に目線を向ける。

 先程帰還してきた執務官が連れてきた2人の内少女の方には緊張は見られず、少年の方には若干の緊張が見て取れた女性は内心、女の子のほうが肝っ玉があるのね。と感じつつ聞くべき情報を頭のなかで纏める。

 

 

「では、まずはロストロギアを集めている理由から教えてくれる?」

 

「はい。あのロストロギアを発掘したのですが、それを輸送中に事故であの街に散らばったんです。それを回収するために横のなのはと逃げた優に協力してもらってたのですが」

 

「それは立派だわ。」

 

「でも、同時に無謀でもある。」

 

 

 少し身を小さくさせる少年に女性は少し微笑み、優という協力者についての情報を得るのは問題ないことに内心で安堵する。

 恐らくは何か理由があって逃走したのだろうが、あの障壁から見て相当な実力の持ち主である事は間違いなかったのだ。それが障害として存在していたのならばジュエルシードの捜索に多大な時間がかかってしまう危険があったのだ。

 

 

「では、あの逃亡した少年について教えてくれるかな?」

 

「はいはーい」

 

 

 女性の質問に反応したのは少女だった。

 正座したまま片手を上げて器用にぴょんぴょん跳ねている。その全身から説明したいという意思を見せる少女に横にいる少年は苦笑いを浮かべていた。

 

 

「あのね、優くんは凄いんだよ。頭は良くて運動もすごい。明るくて優しくてかっこよくていい匂いがして、とっても強いの。後ね、すっごい努力家だし魔法もすっごく上手いの!山の神様ともお友達だし、前はおっきな魚を一人で捕まえてる所を見たことあるの!あとね、すっごくかっこよくて、太陽みたいな匂いがして」

 

「なのはストップ、ストップ!それ2回目だから」

 

「え?そうだった?もっともっと優くんは凄いんだけど…」

 

「優の凄さは僕もわかってるから、落ち着いてね」

 

 

 未だに少し不満気な少女に少年は肩を落としつつ、少し驚いている女性に藤崎優という人物について説明しだす。

 

 

「彼、藤崎優の魔力量は僕は底を見たことがありません。僕が魔法を教えているのですが、異常なほどの吸収量と上達への意欲の高さから教える魔法の規模が僕と桁違いになっちゃいます。

 魔法以外に魔力を炎に変えたりと自分で編み出したりもしている程の才能に彼自身の武術を組み合わせる応用力。戦闘能力は一般人とは思えないほどですね。

 ですが、彼自身の思考は子供に近いため、今回逃げたのも変な理由でした」

 

「凄まじいな」

 

「あら、逃げた理由知っているの?」

 

「はい。先程念話で聞いてみたところ。モルモットにされるのは嫌だとしか言っていませんでした。」

 

「モルモット…」

 

 

 一体逃亡した少年は何を勘違いしたのか、女性の組織、時空管理局にモルモットとやらにされてしまうと考え逃亡したのだと理解した女性は、念話で山の監視をしている船員にもう必要はないとだけ指示をし、少年と少女に向き合った。

 

 

「ではこれより、ロストロギアジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます。」

 

「君たちは今回のことは忘れてそれぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい。藤崎優が持ち去ったジュエルシードについては少し協力してもらうが」

 

「そうは問屋がおろさないの!」

 

「なのは!?」

 

 

 少女が突然立ち上がり、胸を張って宣言する。

 まだ、フェイトちゃんと友達になれてないの!と

 それに執務官は頭を抑えて告げた。

 

 

「次元干渉に係る事件だ。民間人に介入してもらうレベルじゃない」

 

「そんなの知ったことじゃないの。人手不足の時空管理局が手に負えるとは到底思えないの!」

 

「どうして時空管理局が人手不足だと?」

 

「それは秘密なの!」

 

 

 一体何の根拠があってかわからないが少女は胸を張って自信満々に協力するという意見が通ると思っている。

 時空管理局が人手不足であるのは事実である事から女性としても強くは言えずに、溜息を吐きつつ少女へと妥協案を告げた。

 

 

「では、民間協力者として、貴方達の身柄を時空管理局の預かりという事でいいかしら?」

 

「艦長!?」

 

「勿論なの!あ、でも一度帰して欲しいの。両親に説明するから」

 

「それは構わないんだけど、いいのかしら?貴方達の協力はこちらとしても願ってもないことだけど」

 

「あ、後は基本的にはいうことは聞くけど、どうしても聞けない命令は聞かないの!」

 

「な!?」

 

 

 執務官は目まぐるしく変化する状況に着いて行けずに混乱する。

 この少女は一体何をしたいのかが理解できないと頭を抱える。そして、視線をずらすと同じように頭を抱える少年の姿が。

 それに少し親近感を覚えつつ艦長の様子を見る。

 

 

「それは許可できないわ」

 

「それなら勝手に集めるだけだからいいの!」

 

 

 そう言われてしまうとどうしようもなくなるという状況に見た目よりも中々に自分たちの状況を理解しているのだと女性は感じる。

 ただ、はっちゃけているだけかもしれないが。

 

 ただ勝手に行動されると困ってしまうのはまぎれもなく時空管理局なので…それならば制限はあるがこちらも制御出来る状況にするという少女の案を飲むほうが懸命だと判断し女性は渋々その案件を了承したのだ。




今回は優くん勘違い回
なのは様はっちゃけ回
優君とクロノ君にフラグが

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