気絶した魔女が目を覚ましたのは執務官、白の魔法少女、小動物、黒の魔法少女とその使い魔が到着してすぐの事だった。
黒の魔法少女は戸惑いつつも魔女が起きるのをただ待っていた。
執務官は魔女を捕縛する準備をしつつも黒の魔法少女と魔女を見守っていた。
小動物と使い魔はカプセルに入った少女をカプセルから出し、平らな地面に寝かせつけている。
白の魔法少女は疲労した少年に肩を貸して黒の魔法少女を見守っている。
少年はただ、その場は他の人に任せていた。
自分が介入すべき場合ではないと考えての事だった。
その間、少年に宿る者達は慌ただしく動いていた。
少年がしたこと、他者の死者蘇生をよりにもよって魔法関係の組織、管理局に知られてしまったのだ。このままでは何かしらの接触と最悪の場合少年の懸念である
少年自身の力は絶大だが、数で攻められるといくら少年であっても捕まらないというのは不可能である。
故にある青年は一人の王の元へ赴いた。
騎士を統べる円卓の騎士の長。その王へと青年は懇願する。
「夕飯、一品多く作るから力を貸してくれ」
それに王は、椅子に腰掛けたまま青年を見据え五品だと言い放ち青年の反応を待つ。
青年はすぐに頷く。それに王は満足気に微笑み、立ち上がる。
「モードレッド、こちらに来るのです」
「な、何でしょう。父上」
王によく似た風貌の騎士が一人現れる。
その顔は戸惑いか困惑かはわからないが、王が何を言い出すのかを全くと言っていいほど理解できていなかった。
「その兜の加護をあの少年に」
「な、何でそんなことを…」
騎士がそう零すと王はその眼光を鋭くさせて騎士を睨む。
まるで、言わなくともわかっているだろう?と言っているようだ。
騎士は戸惑う。自身の父親はこんな人物であったのだろうか。と
「いいから言うことを聞いて下さい。でなければ…」
王は椅子に立てかけてあった鞘から聖剣を引き抜く。そして上に掲げると聖剣は光を放ち始めた。
王はにこりと微笑み騎士に告げる。
「わかっていますよね?」
「は、はい!!だから聖剣を閉まって!」
その答えに満足したのか王は聖剣を鞘に戻して椅子に腰掛ける。
「安心してください。お礼に好きな時に手合わせしますから」
それに顔を明るくさせたのは騎士だった。今度こそ倒してみせると王に言い放つと騎士は興奮気味に青年へと告げる。
「後で被せておくから安心しな。なに、私生活に影響しないのが俺の兜のうりだ」
その答えに青年は満足し、ありがとうと騎士に伝える。
騎士は照れくさそうに頭をかくとそのまま青年から離れていった。
騎士が少年へと被せたのは兜
それは被っているものの正体への想起を阻害させる物。既に手遅れに近いかもしれないが何もしないよりはマシであると結論づけた青年は一息を吐く。
◇
自身の中で大変な事になっているとは考えも付いていない少年は身体を起き上がらせた魔女を見つめる。
魔女は視線を自身の両手に向けて身体を確認する。
病に犯されていない健康な身体。先程までの苛つきもどこに言ったのかはわからないほど清々しく感じれていた。
「……母さん。身体は大丈夫?」
黒の魔法少女はただ心配気に魔女へと問う。その姿に魔女は自身がしたことを後悔し、更に何故そこまで自分を慕ってくれるのかがわからずに困惑する。
「母さんの娘。アリシアも生き返ったよ」
少し悲しそうな目でそう告げる少女を見て更に胸を締め付けられる痛みに襲われた。
そして思い出す少年の言葉。
"偽物も本物もどちらもそこに存在している"
確かにそうだ。フェイトはフェイトとして存在していて
アリシアもアリシアとして存在している。フェイトをアリシアとして認識する事事態が間違いであったとようやく魔女は気づいた。
魔女は涙を浮かべて少女を抱きしめる。
それに少女は少し驚き、そしてすぐに彼女を抱きしめ返した。
初めて自分を抱きしめてくれた母に感謝をしつつ少女も涙を浮かべた。
「ごめんなさい。ごめんなさいフェイト。」
「うん。いいんだよ母さん」
その光景に少女の使い魔は涙を流しつつ笑っていた。やっと少女の願いが叶ったと。
白の魔法少女も微笑む。自分ではこの光景は生み出すことは出来なかったと思いつつ、隣にいる少年へと視線を向ける。
この少年は一体何者だろうか。ふと脳裏をそんな疑問がよぎったが、それは不思議とすぐに霧散する。そんなことよりも良かったと思えたのだ。
少年も満足気に笑い、その光景を眺めていた。
「死ね、イレギュラー」
少年の胸を光の槍が貫いた。
◇
それは唐突な襲撃であった。
槍で貫かれた少年は地面へと倒れこむ。
それに白の魔法少女は絶句し、すぐに槍を刺した犯人へと視線を向けた。
金色の髪に白いローブを着た男。
その手には眩しい光を放つ何かを持っている。そして、特筆すべきは…
その背に羽根が生えていたことだった。
「よくも、優君を!!」
少女は憤慨し変身する。
ここで、他の者達も異変に気付き、男と対峙する。
「……」
突如、上からとんでもないほどの圧力を感じ、少女たちは地面にひれ伏した。
それに男はつまらなそうに一瞥すると、その歩を魔女へと向けた。
「一体…何を…」
白の魔法少女は動かない身体に力を入れつつ男を睨みつける。
男は視線を少女へと向けるとその口を開いた。
「神に作られた器が勝手をしだしたのでな。それの粛清と神の定めた歴史の修正だ」
それを理解したのは白の魔法少女だけだった。
いや、実際は前半部分は理解できていないが、後半部分をはっきりと理解したのだ。
歴史の修正、即ち夢での結末。プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサの死。
ふざけるなと少女は激昂する。そんなよくわからない理由で人を殺す事など許してはならないと、少女は重い身体にムチを打ちデバイスを男へと向ける。
「お願い!レイジングハート!!」
デバイスは瞬間的に主人の考えを読み取り周囲に散らばる魔力を収束させる。
先程の戦闘で少年が使用していた魔力が十二分に周囲に散らばっていたため、魔力の収束はすぐに完了した。
「スターライト…ブレイカァァァァァ!!!!」
少女の必殺の一撃。収束された魔力は少女が放つ魔力と共に砲撃を強化され、男へと迫る。
「…無駄だ」
しかし、砲撃は男の前で霧散した。
「そ…んな」
全身にかかる圧力を振りきった一撃はいともたやすく男に防がれ、少女の腕は地に伏せる。
少女の様子を見ていた男は、少女が動かなくなるのを確認し、再度歩を魔女へと進めた。
男は魔女の目の前に辿り着くと手に持つ光を輝かせる。
それは槍の形となり、魔女の命を刈り取るため男は槍を持つ手を振り上げた。
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ーー誰もが目を背けた。男が光り輝く槍をプレシア・テスタロッサに突き立てる光景から。
——本人さえも自身はここで死ぬのだと悟っていた。せめて生き返った娘ともう一人の娘が生きて幸せになる事を願いつつ、死を受け入れた。
——否
——ただ一人はそれを良としなかった。
——少年はただ手を伸ばす。それは神への冒涜だろう。ただの自己満足で終わってしまうのかもしれない。
——ただ、目の前にいる人が殺されることを否定する。神はそれを良としないだろう
——だが、黄金の王はそれを良とした
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いきなり現れた敵は天使
恒例のボスラッシュ。果たして優君は生き残る事が出来るのか!?
:今回の黄金の王が動き出す理由
1.敵がむかつくから
2.面白いから
答えは次の話の後書きで