現在僕は月村邸にやってきています。
今回で月村邸に来たのは2回目。前に来た時も思ったけどすごく広いなぁ。
なのはちゃんに誘われて来たのはいいんだけど肝心のなのはちゃんが用事ができて来ないという。
今日は他の子と遊ぶ予定もなかったし来たけど、やっぱり来ないほうが良かったかもしれない。
なのはちゃんがいつも向こうから来るから忘れてたけどやっぱり女の子グループに男の僕が入るのっておかしい気がする。
今日はお休みのなのはちゃんには絶対に行くように言われたけど、正直あまり乗り気じゃない。
よし、帰ろう。
「折角ここまで来てるのに何帰ろうとしてるのよ。アンタは」
しかし、それは出来ませんでした。金髪の女の子アリサちゃんによって退路を塞がれていたのだ。
少し遠いところにリムジンが見えるところからアリサちゃんは今来たらしい。
見つかっちゃったか。ここで帰ると2人に気を使わせちゃうかもしれないね。仕方ない。
「そんな事無いよ。少し早く着きすぎちゃったから何処かで時間を潰そうかと思っただけだよ」
我ながら絶妙な言い訳だったね。
これならアリサちゃんも騙されてくれるでしょ。
『うん。いい言い訳だったね』
『何ドヤ顔で言ってんだよ、クレス』
うん。正直無いと思うよクレスさん。
まあ、アリサちゃんも渋々だけど納得してくれたみたい。
そんなこんなで僕達は門の前にまで来たんだけど、ここで問題が発生した。
インターホンに手がとどかないのだ。アリサちゃんは普段は執事の鮫島って人に押して貰っているらしいのだけど、今日はインターホンのことを忘れて先に返してしまったみたい。
アリサちゃんは困ったように腕を組んでるけど、まあ背伸びしてもギリギリ届かないってだけでジャンプしたら普通に届くよね?
スカートだからジャンプしたくないのかな。じゃあ、僕がしてあげよっと。
ジャンプして押す。特に問題もなくインターホンを押した僕は着地してからアリサちゃんへと視線を向ける。
いや、悔しそうにしなくていいでしょ、大したこと無いんだから。
「スカートで来たのは間違いだったようね。」
「いや、普通に似合ってるから僕はいいと思うんだけど。」
「私は良くないの!あとそんな言葉はなのはに言ってやりなさい。」
前に言った時大変な事になったからあまり言いたくないです。
でも言わなかったら言わなかったで元気なくすから言わなきゃいけないんだけどね。
取り敢えずそっぽを向いてしまったアリサちゃんを宥めつつお迎えを待つ。
これから遊ぶのに機嫌悪いのは良くないからね。
2分ほどでメイドさんがやってきました。名前はノエルって言うらしい。初めましてって言うとこちらこそって帰してくれた。うん、いい人そうだ。
まあ、髪の色が薄紫っていう変わった色だけどね。まあ、リンディさんよりは変わってないか。
ノエルさんの後ろについて歩いて行く。前来た時はジュエルシードのせいであまり見てなかったけど綺麗な庭だなぁ。
あ、猫もいる。そう言えばここのジュエルシードは猫が発動させちゃったんだっけ。それで初めてフェイトちゃんとも会ったんだよね。
まだ1ヶ月くらいしか経ってないのに懐かしい気分だなぁ。
感慨深く頷いてる僕に何を思ったのかアリサちゃんは少し誇らしげに言ってきた。
「ここの庭って凄いわよね。綺麗だし広いし。」
「うん、僕もそう思うよ。」
「私の家も結構いい線行ってるのよ?今度なのはと一緒に来なさい。」
「わかったよ。その時はよろしくね。」
予期せぬ事で約束をした僕達は足並みを揃えて舗装された道を歩く。ここだったら伸び伸び修行できそうだなぁ。
まあ、あまり大きな技とかは出来ないけどね。だって綺麗な庭壊しちゃうかもしれないし。
って、何か足元にフワフワした感触が…
視線を向けるとそこには1匹の猫が。随分と人懐っこいね、足に頭を擦り付けてるや。
僕は気をつけながら歩く。まあ、流石にここで猫に構ってすずかちゃんを待たせる訳にはいかないしね。
そんなこんなで、庭に置かれた白い椅子に腰掛けて猫を膝に乗っけて撫でているすずかちゃんの姿があった。
すずかちゃんの目の前には既にお茶とお菓子が置かれたテーブルがある。用意がいいね。
でも、お茶会って初めてだから何したらいいかわからないんだけど…
取り敢えず用意された椅子に座る。そしてすぐさま膝に猫が乗ってきた。本当に人懐っこいなぁ、可愛いし。
集気法を発動させながら猫を撫でる。前にもやったけどこれすると猫気持ちよさそうにするんだよね…って囲まれてる!?
◇
【アリサside】
猫に殺到されて地面に転がってる男の子藤崎優を横目に紅茶を飲む。
全く、お茶を飲む時くらい静かに出来ないのかしらね。
それにしてもいきなり来れなくなるなんてなのはも災難ね。折角勇気を出してコイツを誘ったのに…まあ、私達がいる時点で少しヘタれてるけどね。
まあ、なのはが来れなくなるからってコイツが来るのを拒んだら流石に可哀想だからそのまま遊ぶ事になったけど、あろうことかすずかの家の前に来てから帰ろうとする始末。
なんだかムカついたから声をかけてやった。その時に言い訳されたけど、コイツ嘘だけは下手なようね。
別にコイツが嫌いってわけじゃあない。ただコイツを見ていると自分の弱さが見えてきて悔しいだけだ。
どうしてコイツはそこまで楽しそうに出来るのだろうか。それだけの能力を持っていたら周りからの期待という名の重荷がのしかかって来てるだろうに…コイツは微塵にもそんな事を感じさせない。
だからコイツは強いんだろうな。
私には到底出来ないこと。いつも何かに急かされてるかのように生きているのを隠しきれていない私と隠しきっているコイツ。
対等とは言えないかもしれない。だけど、それでも私はコイツのライバルでいたい。初めて出来たライバルなんだから。
いつかコイツとも会わなくなるだろう。その前に一度でもいいから、コイツに納得の行く勝利をして見返してやるんだから。
まあ、最近なのはがコイツ絡みで何かを企んでいる気がするのは何故かしら。すごく嫌な予感もしてるし…
気にするほどでもないかな。
◇
【すずかside】
あんなに猫に好かれてる人見たこと無いな。しかも初めて来た人なのに…
隣にいるアリサちゃんも少し呆れている様子。
かと思えば何か真剣な顔で見始めた、一体何を考えているのかな?
あ、今度は少し微笑んでる?どうしたのかな。
猫に好かれてる藤崎君を見て和んだのかな?
あ、いい笑顔……え?何で今度は思案顔?
何か今日のアリサちゃん百面相みたいで面白いな。
なのはちゃんも来たらよかったのに…用事って一体何だろうか。
そう言えば昨日お姉ちゃんから聞いたけど、藤崎君がとうとう士郎さんに認められたらしい。何でも試合で勝ったんだとか。
凄いな藤崎君。それにいいな、なのはちゃん。そんなに思ってくれる人がいて。
最近は特に幸せそうだしこのまま二人は結婚するのだろうか。きっとその時のなのはちゃんは綺麗なんだろうな。
私もそんな人出来るかな。今は想像も出来ないけどいつか素敵な人が出来たらいいな。
でも、私引っ込み思案だから難しいかも。今一番話す男の子といえば藤崎君くらいだし、彼はなのはちゃんのだしね。
以前は警戒してたけど、数日前くらいから警戒の必要性を感じなくなってきた。だって、悪い人には見えないし優しいってのは知ってるから。
彼なら私の秘密を教えても気にせず接してくれそう……ダメダメ彼にはなのはちゃんがいるんだから。
それに、なのはちゃんにも言えてないのに彼に言えるわけがない。アリサちゃんは知っても以前と変わりなく接してくれてるけど、もしなのはちゃんに拒絶されたら凄く悲しいし…
まだ言う勇気がない。
いつの日か、私の秘密を知っても平気な男の人に会えるかな。
◇
お茶会も無事?終わり今はリムジンの中。普通に走って帰ろうとしたところアリサちゃんにアホか!って言われて半強制的に乗せられた。
来る時も走ってきたと言ったら呆れたように見られた。何処かおかしかったかな…
それに高級車に乗ったこと無いから何だか落ち着かないよ。走ったほうが速いのに乗る意味もないし…
まあ、折角アリサちゃんが提案してくれたんだし断るのも悪いから大人しく乗ってるんだけどね。
隣に乗るアリサちゃんも何か落ち着いてない様子。どうしたのかな。トイレに行きたいとか?
『絶対に口に出しちゃダメだよ』
わかってるよ。流石にそこまでデリカシーが無いわけじゃないからね?
そんなやりとりをしている僕をアリサちゃんが見てくる。そしてその口を開いた。
「ねえ、一つ聞いてもいい?」
「どうしたの?」
珍しいな、アリサちゃんが質問するなんて。いつもは僕に何か質問させようとするのに。
アリサちゃんは言い辛い事なのか口篭ってる。一体何を聞かれるのかな。若干怖くなってきた。
「アンタはどうしてそこまで強いの?」
どうしてって、あの日に転生者を拒否したからじゃないかな。でもそれを言うわけにもいかないし…
言い訳も思い浮かばないや。
「わからないよ。」
「………はぁ」
ため息吐かれた!?
うーん、どうしてだろ。嘘付いたのバレたのかな。
仕方ない。少しだけ教えてあげようかな。
「まあ、強いていうなら。すごい人たちが僕を助けてくれたからかな」
これなら問題ないでしょ。
実際いつも皆には助けられてるしね。修行は大変だったりするけど。
アリサちゃんは少し納得できてなかったようだけどそれ以降は質問してこなかった。
なのはの用事という名の言い訳
レイジングハートと魔法の修行