序章
少女は疲弊した顔で授業を受ける。その様子に彼女の親友たちは心配そうに彼女を見つめる。
少女が時折視線を向けるのは一つの席。その席の主の身を案じている少女は、今も少年の帰りを待っていた。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り少女は教科書を鞄に仕舞う。それから少年の席を見つめてため息をこぼしていた。
「なのは、しっかりしなさいよ。」
「そうだよ、確かに藤崎君の事は心配だけど、なのはちゃんが元気ないと藤崎君も悲しむと思うよ」
「アリサちゃん…すずかちゃん…」
そう、学校を休んでいるのは藤崎優という少年。彼が学校に来なくなったのは丁度1週間前。担任の教師に急遽入院したとクラスメイトたちに伝えられたのだ。
勿論少女たちや少年の親友達は彼の見舞いに行った。しかし、そこに居たのは眠っている少年だった。
クラスメイト達は少年を起こそうとするが、少年は起きない。それを不思議に思い少女が看護婦に少年はどうして目を覚まさないのかを問うた。
看護婦は答えた。「わからない」と。
ある朝少年の母は何時になっても起きない少年が気になり少年の部屋へと足を踏み入れた。
そしてベッドで眠る少年を揺さぶったり大声で呼んでみたのだが目を覚まさなかったという。流石にこれは異常だと感じた母親は自身が勤める病院に少年を連れて行った。
医者は少年に気付け薬を嗅がしたりしたが少年の目は一向に覚めることは無かった。
原因不明の昏睡。脈拍や健康状態に異常はなく、ただ眠り続ける少年。
ただ、母親に出来る事は少年の身の回りを世話し目を覚ますのを待つだけ…
少女はこれを聞かされた時酷く困惑した。何故彼がこうなってしまったのか。どうして彼なのか。幸せを感じていた生活がいきなり灰色に包まれた。
少女の家族や親友たちはそんな少女を気遣い慰めていたのだがその耳に届くことはなかった。少女はただ、毎日のように少年の病室に足を運んで少年が目を覚ますのを待つ。
一体どうしてこうなってしまったのだろうかと少女は神に問うたが答えるはずもなく、ただ無情にも時が過ぎるだけであった。
既に11月も終わりに近づき少女は考える。
このまま少年が眼を覚まさなかったらどうしようと。
すぐさまそんな考えを払うかのように頭を振る。少女は少年を信じているのだ。直ぐにでも自分の元へ帰ってきてくれると。ただ、今は休んでいるだけなのだと。
そして更に考える。もう少しである事件が起きてしまう。だが、前回のように少年に頼ることは出来ない。だからこそ、少年のためにも少女はその事件を自分の手で解決することを決意した。
少年はまだ眼を覚まさない。
まさかの優君A’s編不参加
だけど大体優君視点で物語は進んでいきます